異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第八話 勝利者たちの挽歌

 大怪魚が投げ捨てられた後、鉄の巨人も海に引きずり込まれて姿を消した。

 

「鉄人形の足に何か絡みつくのが見えたぞ!」

「あの魚野郎の尻尾か?」

「わからん・・・見ろ、海が渦を巻いている!」

 

 余程鍛え上げたのか、それとも視覚関係の《加護》があるのか、何人かの言葉に応じて人々が目を凝らすが、さすがに夜の海を見通せる者はいない。

 僅かに波が渦を巻くのを捉えたのみ。

 そして。

 

「うわっ!?」

 

 突然、海が爆発した。

 大怪魚や鉄巨人が引きずり込まれたときのそれすら比較にならない、この島ほどもある巨大な水柱。

 海水のしぶきが雨となって降り注ぐ。

 濡れるのも構わず、海面を注視する人々。

 

「あっ、あそこ!」

「!」

 

 月明かりの中でもわかるほどに、海面が大きく盛上がる。

 

「っ!」

 

 直後に上がる悲鳴。

 海面に出て来たのは大怪魚の頭。

 

「っ・・・!」

 

 首が傾いてこちらを見る。

 恐怖の悲鳴が漏れ・・・次の瞬間、それは歓声にとって代わる。

 

 大量の水が滝のように流れ落ちる。

 大怪魚・・・首だけになったそれを左手で掲げ、水面上に現れたのは鋼鉄の巨人。

 ハヤトの変じたデモゴディΣだった。

 

 

 

 水中ロケットを吹かして水面上に立つ。

 大怪魚の首(体は吹っ飛んだ)をトロフィーのように掲げると、島のギャラリーから歓声。

 

「うおおおおお!」

「やったっ!」

「フフ・・・やるじゃないか。少々甘めだが、ガイガー先生の邪魔をした事はチャラにしてやろう」

 

 だから最後の奴、なんで上から目線なんだよ。

 ガイガーさんがこちらを見て頷くのを確認すると、俺は首を波打ち際に放り投げて水中に没した。

 

 

 

 ハヤトの変じたデモゴディが海中に没する。

 彼が放り投げた怪魚の首(それだけで10m近くある)を一瞥すると、ガイガーは身を翻した。

 

「・・・?」

 

 振り向いたガイガーに拍手。そして称賛の声。

 

「よくやった! 感動した!」

「ガイガーさまー!」

「アンタの剣を見たかったぜぇぇぇぇ!」

 

 困惑に眉をひそめる。

 とは言え50mの大怪魚に単身立ち向かい、僅かな時間とは言えその歩みを止めても見せた。

 それだけでも並の人間には成し得ぬ事。

 

 武芸の覚えがある人間から見れば更にだ。

 達人という言葉が服を着て歩いているような男。

 それが大海獣の前に単身立ちはだかったのだ。

 これで心が躍らない武芸者はいない。

 ガイガー本人がどう思おうと、実際に大怪魚を倒したのがデモゴディだろうと、傍から見ればそう言う事だった。

 

「あの鉄錆人形がな・・・」

「ホント邪魔してくれやがって」

 

 そんな会話が耳に入ってくる。

 ガイガーは僅かに口をへの字に歪めて歩き続ける。

 群衆が尊敬の眼差しと共に、再び二つに分かれて彼を通した。

 

 

 

 船着き場へ向けて歩くガイガー。

 群衆がゾロゾロと彼についてきた。

 

「いよっ、旦那。まるで聖者か神の使徒みてぇじゃねえか。

 どうだい、いっちょ教団とか作ってみねえか? ガイガー教団とかよ」

 

 どこからともなく合流してきたのはアーベル。

 恐らくは群衆の中にいたのだろう。

 軽く顔をしかめ、ガイガーは彼の言葉を無視した。

 

「まあ、少なくともあの人達は熱心な信者になりましたよね」

 

 そこで俺も合流した。

 道の横の林からさりげなく・・・少なくともそのつもり。

 

「・・・」

 

 あ、仏頂面になった。

 まあこの人からすると迷惑でしかないだろうな。

 

「お見事でした」

 

 そこで後ろから声がかかる。

 鈴を振るような、というのはこういうのを言うんだろう。

 ちらりと振り向くと、口元を隠したフードの小柄な人影。

 お姫様だ。

 

「レヴィータとお呼びくださいと申し上げておりますのに」

 

 僅かに首を傾けて、お姫様・・・レヴィータさんがにっこり笑った。

 

 とてとてと少し小走りになって、俺達に並ぶ。

 

「まずはお疲れさまでした」

 

 歩きながら俺達に向けて一礼する。

 

「お言葉ですが私は何もしていません。倒したのはあの巨人です」

 

 礼儀正しく否定するガイガーさん。

 レヴィータさんは僅かに微笑むと、ちらりと俺を見た。

 ・・・え? まさかなあ。

 

「それでもあの大怪魚を止めたのはガイガーさまですわ。

 あれがなければ、あの鉄巨人が現れる前に怪魚が上陸して、かなりの被害が出ていたのではないでしょうか?」

「それはまあ、そうかもしれません」

 

 あくまでもガイガーさんのことだったのか? うーん。

 それからしばらく、俺達は船着き場まで話をしながら歩いた。

 話は先ほどの怪魚から武術、お城でのゴシップに至るまであちこちに飛んだが、一つだけ気になることがあった。

 もし俺が間に合わなかったとして、ガイガーさんお一人でもあの大怪魚は倒せたんでしょうか。

 私とっても気になります!

 

 

 

 島の反対側、王都の見える陸側の船着き場。

 船に乗り込んでもやい綱を解く。

 岸辺や桟橋には人々がぎっしり詰めかけて、こちらに・・・というかガイガーさんに熱烈な視線を向けている。

 王女様に遠慮しているのか、俺達のいる桟橋に乗り込んできてないのがせめてもの幸いだ。

 

「それでは、今宵はこれまでということで。またお会いしましょう」

 

 レヴィータさんが優雅に一礼する。

 うーむ。

 

「あら、私嫌われてしまいましたかしら?」

 

 くすくすと笑うレヴィータさん。

 いやこの人嫌いな訳じゃないんだけどちょっと怖いし、何かやな予感がするんだよなあ・・・。

 

「ハヤト」

 

 さすがにお姫様の前で鍔を鳴らすのははばかられたのか、ガイガーさんが俺に釘を刺す。

 ちゃうねん! 顔に出るのは止められないねん!

 

「今度からお前を外に出すときは、頭にずだ袋でもかぶせた方がいいかもしらんなあ・・・」

 

 マジ顔で言わんで下さいアーベルさん。冗談ですよね?ね?

 

「あら、私は気にしてませんよ。

 ハヤトさまは優しい方ですから、そう思うのもしょうがないと思いますし・・・わたくし、ハヤトさまには好意を持っておりましてよ?」

 

 えっ。

 

「おいハヤト!」

 

 アーベルさんが俺を睨みつける。だから俺何か悪いことしましたか!

 ガイガーさんも鍔鳴らさないで!

 

 

 

「ガイガーさまー!」

「アリガトォォォッ! アリガトォォォォォッ!」

「俺今日のことは一生忘れません!」

 

 プロレスファンというか、アイドルの追っかけというか、そんな感じの声に見送られて船は岸を離れた。ガイガーさんはまさにこの場の主役である。

 ちなみに漕いでるの俺。

 なのでますますアクション映画のモブっぽさが増してる気がする。

 まあどうでもいいが。

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