異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十六話 名犬ハヤト

 下水道を移動する俺達。

 慣れたせいか、今回は余りあれこれ付かなくて済んだ。

 慣れたくはないんだけど。

 しかし向こうもそろそろ・・・!

 

「いかがしました?」

「しっ」

 

 口元に指をやると、お姫様が口をつぐむ。

 ミストヴォルグの聴覚センサーに集中すると、人の話し声と足音が遠くに聞こえて来た。

 やっぱり下水道に下っ端警邏を投入してきたか・・・!

 

「どういうことですの?」

 

 経緯説明(かくかくしかじか)

 すいませんが腹の中に入って下さい。相手に気取られないように、高速移動します。

 

「はい、わかりましたわ!」

 

 目をキラキラさせながら頷くレヴィータさん。

 この人オブライアンさんの同類でもあるっぽいな・・・!

 

 

 

「まあ、すごいすごい!」

 

 腹の中で大喜びのお姫様。

 まあ腹の中でなら多少騒いで貰ってもかまわんけど。

 

 今俺は下水道の中を、音も立てず高速で移動している。

 特に何かギミックを発動させているわけではなく、単純に忍び足しながら走ってるだけだ。

 ミストヴォルグは忍者ロボ。隠密行動にも高速移動にも長けている。

 狭くぬるぬるした下水道の中でも、レーザーサーチャーである程度先の道はわかるし、方角を間違うこともない。

 数百メートルほども移動してから、俺達は地上に出た。

 

「あれこれがあると思いますので、このまま腹の中にいて下さい」

「わかりましたわ」

 

 お姫様が頷くのを確認して俺は光学迷彩を発動。

 エッソ医院の周囲をぐるりと回るように移動を始める。

 

 よし、臭跡を見つけた!

 このまま追いかけるぞ!

 

「はい!」

 

 勢いよく返事するレヴィータさん。

 俺は地面にしゃがみ込み、臭跡を辿り始めた。

 

 

 

「ええい、また!」

「本当に何をこんなに大がかりに捜査しているのでしょうね・・・これだけの警邏を投入すれば、随分と犯罪が抑えられることでしょうに」

 

 思わず(小声で)叫ぶ俺、呆れたように溜息をつくお姫様。

 ほんとにな!

 

 臭跡を追跡している最中にも、わらわらと警邏たちが寄ってくる。

 光学迷彩やら忍び足やらで何とかやり過ごしてはいるが、さすがにファンタジー世界のお巡りさん。時々妙にカンの鋭い人や、探知系の《加護》使えるっぽい人がいて、ひやりとしたことは一度や二度ではない。

 

 殺人未遂の犯人ひとりにこれだけマンパワー割けるほど、人材豊富なわけでもなかろうに。

 ・・・まさかとは思うけど、あの決めつけ警邏が犯人たちとグルとか、ないよな?

 

「・・・」

「・・・」

 

 降りる沈黙。

 お願いだから否定して下さい!

 

「・・・実際、怪しくはありますわ。

 スー・ティグは名の通った腕利きではありますが、それでも一介の警邏隊長に過ぎません。

 警邏本部の、相当上の方で無ければあれだけの人数を動員することはできないはず」

 

 少なくともそのレベルの人が関わってるって事か・・・弱みを握られてたりするのかもしれないが。

 

「そこのところはクロエたちに頼んで調べて貰っていたのですが、何分警邏というのも閉鎖的な組織でして・・・組織の外には中々情報を漏らさないのです」

 

 お巡りさんはどこも同じやなあ。

 ハリウッド映画で良くある腐敗警察みたいな事になってないといいが。

 

「組織はどうしても腐敗していくものですからね・・・隅から隅まで清廉潔白とは中々参りませんようで」

 

 二人して溜息。

 お父さんの後を継いで女王様になる身としては、本当に他人事じゃないんだろうなあ。

 そのまま俺達は警邏たちをやり過ごし、時には下水道に降りて追跡魔術を誤魔化しつつ、臭跡を辿っていった。

 

 

 

「ここですか?」

「少なくとも匂いはこの中に続いてます」

 

 地球で言うエビ煎餅みたいなものを売っている店。

 臭跡はその奥に続いていた。

 店頭に商品は並んでいるが、店番の人がいない。

 嫌な予感がする・・・と思ったら、奥の方から悲鳴が!

 

「ハヤトさま! 私を外に!」

 

 わかりました!

 腹からレヴィータさんを出し、店の奥に駆け込む。

 意外なほどの速度でレヴィータさんも俺についてきた。

 

「やめろぉ! やめてくれ!」

「!」

 

 奥の扉から響く悲鳴。

 扉を蹴破って飛び込んだ俺達が見たのは、血のにじむ肩を抑えてうずくまるおばさんと、両腕を掴まれてもがく被害者のおっさんだった。

 被害者の両脇を固めてるのが二人、ナイフを持っておばさんの前に立ってるのが一人、壁際で棍棒を構えてるのが二人。

 

「マジカルリング!」

 

 咄嗟に発射した光の輪が、ナイフと棍棒の、合わせて三人を縛り上げる。

 後二人――!

 

 被害者のおっさんを捕らえる二人に視線を向けた瞬間、お姫様が踏み込んでいた。

 いつの間に抜かれたのか、その手には刃渡り50センチほどのショートソード。

 

「のっ!」

 

 被害者おっさんを放して殴りかかろうとするチンピラAの腕を斬り、そのまま左拳でみぞおちを打ち抜く。

 

「がっ・・・ぐっ!」

 

 胃液を吐きだして体を折り、無防備になったうなじに肘を落とす。

 チンピラAはそのまま、ものも言わずに昏倒した。

 すげえなこのお姫様!? えらく実戦慣れしてるぞ!

 

 などと感心しているバヤイではない。

 こちらも慌ててナイフを抜こうとするラスト・チンピラを・・・

 

「うわっ!?」

 

 って、被害者の人をこっちに突き飛ばしやがった!

 思わず受け止める俺。

 その隙にナイフを抜くラストチンピラ。

 レヴィータさんに斬りかかろうとして。

 

「マジカルリング!」

「ぐわっ!」

 

 人質から離れたらこっちのもんだ!

 密着してたから使えなかっただけなんだよ!

 使ってたら被害者のおじさんとまとめて縛り上げることになってただろうからな!

 

「お見事ですわ」

 

 レヴィータさんが微笑んで、ショートソードを鞘に収めた。

 その足元、芋虫状態で怒声を上げるラストチンピラ。

 

「くそっ! 舐めやがって! てめえが変な魔法使わなかったら、こんな小娘・・・!」

 

 いや、無理じゃないかなあ。

 あんたがナイフ抜いたとき、お姫様完全に迎撃態勢整えてたもん。

 良くて腕、悪ければ胴体をズバッと一撃されて死んでたよ?

 むしろ俺に感謝して欲しいくらいだ。

 閑話休題(それはさておき)

 

「あ・・・あんたは!?」

 

 ようやく気付いたか。

 そーだよ、アンタが殺されかけたのを助けてやった男だよ。

 アンタが逃げたのもあって、犯人扱いされたんだぞ。

 

「す、すまない・・・だが娘の命がかかっているんだ・・・」

 

 うわあい、また話がややこしくなりそうな予感。

 溜息をついて、おばさんの治療はお姫様に任せつつ、俺はおっさんに事情を話すよう促した。

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