異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十二話 イモの皮むきだけはうまい女

「は、ハヤト・・・大丈夫?」

「お兄ちゃん!?」

「二人とも、今はそっとしておこう・・・」

 

 へんじがない。ただのしかばねのようだ。

 いやしかばねになってるの俺だけど。

 

 頭クチュクチュされるのは三回目、物語の中を入れれば四回目だが、未だに慣れん。

 頭の中かき回されて記憶を洗いざらい吸い出されることに慣れたくもないが!

 

「それでどうだい?」

「ううむ、それっぽいものは見つからなかったのう。小僧本人が重要と思っていない記憶に紛れておるのか、それとも小僧の勘違いか・・・時間をかけて施術すればわからんが、現状ではもう無理じゃな」

 

 ぼんやりした意識の中でシルヴィアさんと師匠の会話が聞こえる。

 あれだけやられて無駄骨かよ・・・がくっ。

 

「ハヤトー!?」

「ハヤトくん!?」

「お兄ちゃん!?」

 

 落胆がかろうじて繋がっていた意識の糸を切る。

 アルテ達の悲鳴を聞きながら、俺は真っ暗な闇の中に沈んでいった。

 

 

 

「知ってる天井だ・・・」

 

 テントの天井を見て俺は呟いた。

 ワンパターンと言わば言え。

 パターンというのは有効だからこそ使い古されるのだ。

 ちょっと違うか。

 

「あ、お兄ちゃん! 大丈夫? まだ頭痛い?」

 

 笑顔で俺の顔を覗き込んでくるリタ。

 ああ、君こそ俺の天使だ・・・

 

「やだ、天使なんて・・・!」

 

 顔を赤くして照れるリタ。

 うーん、眼福だがまだ頭がうまく働いてないな。

 脳の中身がグチャグチャにされて、まだ片付いてない感じがする。

 

「取りあえずお水いる?」

 

 お願いします。

 ハムリスどもがチューチュー騒いでるがうるせえよだまれ。

 

 

 

「ういーっす」

「おはよーさん。・・・大丈夫かい?」

 

 結局起き上がれたのは昼飯時。

 シルヴィアさんにはしみじみと心配されてしまった。

 アンタがノリノリで頭クチュクチュ提案したのは忘れてないからな?

 

「わ、悪かったって・・・手掛かりが手に入るかも知れないと思ったんだよ」

 

 ばつの悪そうな顔で謝るシルヴィアさん。

 いやまあ、確かにそうだから、それ自体は怒ってないけどさあ!

 

「そうそう、あの時点では必要な事だったんだよ」

「試行錯誤は人生において避けられないことなのですぞ」

 

 煽ったそこのダメ人間二人(アーベル・ラファエル)は座りなさい。ちょっとお話があります。

 

「それで師匠、本当に収穫はなかったんですか?」

 

 今朝港に上がったばかりのイカとサバっぽい魚のマリネをほおばりながら師匠に質問。

 うまいっ! こらうまいっ!

 

「はいはいどんどん食べてねー。ハヤトには栄養が必要なんだから」

 

 うーんありがたい。アルテはいい奥さんになれるやで。

 

「えへへへ・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 笑み崩れるアルテ。それを複雑な顔で見るカオルくんとリタ。

 まあカオルくん、あれだけ何でもできる天才ッぷりなのに、料理だけは何故か全然上達しないからなあ・・・いわゆる×(ペケ)技能と言う奴だろうか。

 

「上達しなくて悪かったね!」

「そうよ! 芋の皮むき『だけ』はちゃんと上手になってるんだから!」

「うぐっ!?」

「アルテちゃん、それフォローじゃなくて追い打ちになってるから!

 お兄ちゃんもそう言う事はっきり言うのはひどいんじゃないかな・・・」

 

 涙目でこちらを睨んだあと、背中から撃たれて更に涙目になるカオルくん。

 だから何も言うてへん!

 それで師匠、どうなんです。

 

「うむ、残念じゃがさっぱりじゃ」

 

 ホントに? 何も? ヒントも何も無いんですか?

 

「重ねて言われても無理じゃのう。

 記憶を覗く術はあくまで覗くだけで、膨大なそれらの中から、てがかりもなしに望む記憶を探すことはできん」

 

 マスクドライダーの星の本棚ですねわかります。

 さあ、検索を始めよう! キーワードわからんけど!

 

「言ってることはわからんが、まあそんな感じじゃの。

 記憶を見る事はできるが、記憶同士の繋がりはお主だけが知っておることじゃ。

 何がお主の記憶を揺り動かして刺激したのか、それがわからんことにはな」

 

 そんな、じゃあ俺は何のために脳みそをいじられたんだ・・・

 

「大げさなことを言うでない。まあ何か強烈なイメージが残ってるかと思ったんじゃがのう」

 

 ひょっとしたらで脳みそクチュクチュされる方の身にもなってくださいよ!

 まあとにかく現状だと、師匠でもわからんと(もぐもぐ)。

 

「お兄ちゃん、ものを口に入れながら喋るのはお行儀悪いよ」

 

 はーい(ごっくん)。

 俺は口の中のものを飲み込むと、更にイカのマリネにフォークを伸ばす。

 

「あ、こちらをどうぞ。取り分けておきました」

 

 ありがとうございます・・・ところで。

 

「はい、なんでしょう?」

 

 何でお姫様がここにいるんです?

 今まで意識的に無視してたけど!

 

「それはまあ、目の前でばったりと倒れてしまわれて・・・しかも事件の手掛かりを探す為でしたから、私がご無理をさせてしまったのではないかと・・・」

 

 う、それはそうか。

 手掛かりが見つからないのでって話して、手掛かり見つけるために俺が気絶しちゃったらそりゃ心配するよな。

 心配かけちゃって申し訳ない。

 

「いえ、謝らなくてはいけないのはこちらですわ。でも無事で良かった」

 

 ちょっと顔を赤らめながら俺に笑いかけるレヴィータさん。

 その笑顔に一瞬心臓が跳ねる。

 だって忘れがちだけど、ものっそいハイソオーラの持ち主なんだよ!?

 それが目の前でちょっと恥ずかしげに微笑んでくれるとか、これで心が動かない男はいるだろうか? いや、いないね!

 

「ハヤト?」

「ハヤトくん?」

「お兄ちゃん?」

「ちょいと、アンタ?」

 

 シルヴィアさんの加わった四重奏。

 追撃のように発せられるガイガーさんの鍔鳴り。

 俺何かしましたか!(無言の悲鳴)

 

「・・・やっぱこいつ、外に出す時はずだ袋頭にかぶせないといけねぇんじゃねえか?」

「真剣に考えてみるべきですかですぞ」

「魔性の魅力ってやつなのかなあ。全然そんな顔じゃないんだけど」

 

 そこのダメ妖精三人、後で覚えてろよ!

 

 

 

「ところでハヤトさまの出番はトリ前で、ある程度余裕はおありになるんですのよね?」

 

 食事を終えて午後の公演の準備にかかるか、と言うところでお姫様がそんなことを言い出した。

 何か猛烈に嫌な予感がしてきたのぉ~~~~~っ!

 

「そうですが、何か?」

 

 戸惑ったようにシルヴィアさん。

 

「それではしばらくハヤトさまをお貸し願えませんか? 少し考えていることがあるのです」

「そりゃまあ・・・お姫様にお願いされると嫌とは言えませんけどねえ」

 

 頭をボリボリとかく。

 そのお姫様を前に堂々と口に出すのも、割と図太いよなこのひと。

 

「もちろん芸人の方に出張して頂くならば、それ相応の報酬はお支払いしますわ。

 これこれこれだけと、城のワイン蔵から持ち出して来たこれではどうでしょう?」

 

 と、お姫様が持ち出したのは保温用の筒に入れられたワイン。多分ヴィンテージ。

 

「それなら全く問題はありませんよ! 煮るなと焼くなと、どうぞお好きに!」

 

 喜色満面のシルヴィアさん。

 あんたって人はぁぁぁぁ! まあ読めてたけどさ!

 つかヴィンテージワイン用意してるって、レヴィータさん、最初から狙ってたな?!

 

「てへっ☆」

 

 小さく舌を出すお姫様。

 こうして俺は銀貨三十枚とヴィンテージワイン一本で売り飛ばされたのであった。

 シルヴィア、このユダめ!




>ペケ技能
バツ技能。ギャグTRPG「ドラゴンハーフRPG」より。
本人は得意と思ってるけど使うと必ず致命的な失敗を起こす、ギャグマンガの殺人料理とかでよくあるやつ。

>星の本棚
仮面ライダーWの地球の本棚(読み方は「ほしのほんだな」)。
大体アカシックレコード。

>銀貨三十枚
ユダがキリストを売り渡した時の金額。
そうか、ハヤトくんは全人類の罪を背負って十字架に登るのか(ぉ
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