異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第四十二話 ガラスの戦女神(アテナ)

 角を叩き折られ派手に転がった一角クジラ、いや無角クジラが止まる。

 

『・・・』

『・・・』

『・・・』

 

 一瞬、俺も幻刻たちも動きが止まった。

 互いに敵か味方か判別しかねている。

 一角クジラの角を折った事を考えると俺の味方なのだろうが、まるで見覚えがない。

 

 身長はデモゴディとほぼ同じ、20m弱。

 どことなくギリシャ風の甲冑と槍に大盾、美しきガラスの戦女神像と言ったたたずまい。

 幻刻のような水獣ではない。かといって巨大ロボのたぐいかと言われると違和感がある。

 ゴーレム、あるいは何らかの生体ロボのような雰囲気が・・・あれ、この顔立ちどこかで見たような・・・

 

『ハヤトさま、何を呆然としておられます!』

 

 その時、女神像の口が動いて声を発した。

 ちょっと合成音声くさいけど、これお姫様の声だ!?

 

『れ、レヴィータさんなの!?』

『助太刀に参りました! 説明はこれらを倒した後で!』

 

 っ、了解!

 そうだな、ぼうっとしてる場合じゃない!

 こいつらの進行を止めなきゃ、王都がひどいことになる!

 

『行くよレヴィータ!』

『はい、ハヤトさま!』

 

 ヴィラン・コアは今この時も全開で回転し続けている。

 今の僅かな時間だけでも多少魔力は回復したし、何より助けに来てくれた水晶の戦女神!

 このシチュエーションに昂ぶる心が更なる魔力を生み出す!

 本当の意味での浪漫回路って奴だ!

 

『ギエエエエエエエエエ!』

 

 咆哮。

 この鋼鉄の腹にすらビリビリと響くそれ。

 真の龍には及ばなくてもさすがに亜竜、100m越えの大怪物だ。

 

『なんとっ!』

 

 姫様が目を丸くしてる(多分)。

 この巨体でスルスルと動くのが何とも厄介だ。

 こいつが退路を塞ぐ壁になり、俺の行動を阻害する。

 その隙に大怪魚とクジラがハンマーとなって金床に振り下ろされる。

 そのコンボで俺は残り少ない魔力をすり減らしたのだ。

 だが今なら!

 

『レヴィータさん、水竜を牽制して!』

『かしこまりました!』

『ギッ!』

 

 赤い血がパッと散る。

 ガラスの女神(アテナ)が突き込んだ槍が、水竜の胸を浅く削いだのだ。

 本来なら深く突き刺さっていたそれだが、素早い回避がそれを防いだ。

 直線の速度ならともかく、機動性は間違いなく俺やレヴィータさんのガラス・アテナに勝る。

 だが倒せなくてもいいんだ。

 俺がフリーハンドになるんだからな!

 

『豪子力ビイィィィイィムッ!』

 

 竜巻鮫を貫く光の槍。

 大怪魚が踏み込んでくるのと、竜巻が消えて戻ってきた腕が合体するのが同時。

 

『Gb!』

 

 襲いかかる大怪魚を正面から受け止め、がっぷり四つに組み付く。

 前回とは位置関係が逆だが、同じ展開!

 

『ブレストインフェルノォ!』

 

 断末魔の叫びを上げる暇もなく、大怪魚は首から下を吹き飛ばされた。

 

『ギャオッ!』

 

 後ろから上がるのは濁った鳴き声。

 クジラやイルカが喧嘩の時に上げる威嚇音。

 振り返ると同時にドラゴニック・スクランダーを出力全開にする。

 

 一瞬にしてトップスピードに乗る鋼の巨体。

 魔力をまとってロケットのように突貫してくる無角クジラ。

 次の瞬間、血しぶきが爆発した。

 

 ロケットのように突進した巨大クジラと、高速で突貫した俺が交差し、真紅の翼がクジラの体を上下の「ひらき」にしたのだ。

 周囲に血しぶきをまき散らしつつ、スライスされたクジラの体が地面に転がった。

 

 その時になって、ようやく大怪魚の頭がゆらめき始める。

 すぐに消滅するんじゃないのか?

 常設展示で丁寧に作ってあるから、促成の他の幻刻に比べて消滅までに時間がかかるのかもしれない。

 まあそんなことはどうでもいい。

 残るは水竜ただ一匹!

 

 

 

 振り向くと、幻刻水竜とガラス・アテナがめまぐるしい機動戦を繰り広げているところだった。

 100m超の巨体で前後左右に素早く移動する水竜とひらひらと宙を舞うガラスの女神が入り乱れ、思わず見とれてしまいそうなほどに華麗な舞踏を演じている。

 あれだけ高速かつ高機動で動き回られると、誤射が怖くて飛び道具は使えないところだが・・・そこは既にデモゴディが三千分前に通った地点だっ!

 レヴィータさん、合図したら上昇して!

 

『! わかりましたわ! 例のあれですね!』

 

 一発でこちらの意図を理解してくれるお姫様。頭のいい人が相方だとありがたい!

 

『おおおおおおおおおっ!』

 

 俺の体が、豪子力ではない、明鏡止水の境地の光を放つ!

 

『炸裂! ガイアスマッシャーッ!』

 

 大地の隆起が水竜に走る。ふはははは、ホバー特性持ちとは言え、地上と水中適応のみで空中適応を持っていないおのれを恨むがいい!

 

『え?』

『ええっ!?』

 

 だが次の瞬間、俺達は思わず驚愕の声を上げていた。

 

『ギエエエッ!』

『『と、飛んでるーっ?!』』

 

 そう、前後のヒレから炎を吐き出し、水竜は空中に浮いていた。

 すげえなマジ這い回りマンかよ!?

 終盤飛行マンになったのまんまだよ!

 

 だが超進化したあれと違い、さすがに空中移動は限界がある。

 ホバーで素早く動けるのは、地面に密着してその分強い揚力が得られるから!

 空中では機動力もスピードも大幅に落ちる!

 

『レヴィータ! 合わせて!』

『お任せを!』

 

 スロットチェンジ!

 同じ長井業原作で、デモゴディとの親和性も高いそれをセット!

 鋼鉄の巨体を磁力の稲妻が走る!

 空中の水竜はそれでもかわそうとするが、君には情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さそして何よりも――速さが足りないッ!

 

『マグネティック・フォース・オンッ!』

 

 稲妻のような光が巨体を捉え、水竜はもがきながらもこちらに引き寄せられていく。

 100mの水竜と18mのデモゴディ。だが質量の差も体格の差も関係なく、磁力のあぎとは逃しはしない――!

 

『ギエエエエッ!』

 

 体格をまるで無視して決まる鯖折り。軋む背骨、食い込む腕。

 それでも体内に眠る龍の血を呼び起こし、抵抗しようとする水竜。

 もがき、暴れて、力ずくで脱出しようとするその動きが止まる。

 その背筋、首の付け根。

 人間で言えば、ぼんのくぼに当たる部位を、ガラス・アテナの大剣槍が貫いていた。

 

『ジークフリートブリーカーッ! 死ねえっ!』

 

 あらゆる物理法則を無視して、水竜の胴体がへし折られた。

 

 

 

 幻刻水竜の骸が消え始める。

 俺はディバイディング・コアを解除して海に空いた穴を閉じた。

 

『ゾンクの屋敷でも見ましたが、不思議なものですわね』

 

 俺にも理屈はわかってないので質問はご遠慮下さい。

 

『了解しました』

 

 コロコロと笑うお姫様。

 ところでそれ(ガラス・アテナ)どうなってるんです?

 

『まあ。いいですわね、その名前。ニホンの女神の一柱でしたかしら?』

 

 まあそんなもんです。

 厳密には違うのだがこちらの人にとっては向こうの世界=ニホンだし、日本は八百万の神の国だから、知名度の高いギリシャ神話の神様なんて楽勝で日本の神よ(危険発言)。

 

『あの水竜に匹敵するような強力な幻刻を生み出そうと、エネルギーを溜めていたらしく。

 それと、私の持っていたアーティファクトを組み合わせてこれを作ったのですわ。

 なんでしたか、「流氷の天使」みたいなあだ名の動物を元にしたようで』

 

 女神ロボ(それ)クリオネですかーっ!?

 いや確かに透明だったり胸に赤い玉があったりしたけど、まさかになあ!

 

『今連絡が参りました。どうやら「王に叛くもの(アンティゴネー)」も概ね制圧されたようですね』

 

 警邏の皆さんお疲れさまです。これで一件落着ですね。

 そう言うとお姫様はくすくすと笑った。

 ・・・なんだろう? 何か凄くいやな予感。

 

『終わりではないのです。まだ貴方の倒すべき敵は残っておりますわ』

 

 それは、まさか。

 

『はい。ゼンティル第一王位継承者、マリアンヌ・レヴィス・アルティス・ペドロン――わたくしが、貴方の敵ですわ』

 

 にっこり笑ったガラスの女神。

 その背中で王城の塔が一つ、爆発で粉々に吹き飛んだ。




>這い回りマン
前にも名前の出た「ヒーローアカデミア ヴィジランテ」の主人公灰廻航一。
ホバー移動する特殊能力だったが、終盤大幅にパワーアップして超一流ヒーロー並みの能力になった。

>速さが足りないッ!
スクライドのクーガー兄貴の名セリフ。
執筆速度こそはこの世の理、サルでも二十年あればなろう系でヒット作が書ける(たぶん)。
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