異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
それからどれだけ切り結んだろう。
永遠とも思える剣戟が続く。
上段斬り下ろし。袈裟切り。逆袈裟。胴。逆胴。
突き。払い。
巻き上げ。流し斬り。パリィ。
もう何も考えられない。無心に相手の攻撃を防ぎ、相手に打ち込む。
毎日五千回もやらされた素振り。
体に染みついたそれをなぞって剣を振る、ただそれだけの機械と化す。
体が勝手に動き、姫様の突きをそらす。突いてきた剣槍の刀身にムラマサを滑らせ、カウンターの打ち込みを狙うが、これも姫様が身をひねってかわす。
剣槍をくるりと回転させた、石突きによる更なるカウンターを身を逸らしてこちらも回避。
姫様ほどうまく回避出来なかったが、超合金Σの装甲が体を守ってくれた。
稽古は裏切らないってこう言う事だな・・・そんなことを考えていると、僅かな違和感。
なんだ? 何に違和感を感じているんだ、俺は?
その間にも体は勝手に動き、攻防を演じる。
このまま千日手では勝負の行方は
思えば必殺剣で勝負に出る前から違和感は
下からの巻き上げ
魔力を消耗しすぎた
全力での振り下ろし
お慕い申し上げております
もっと、もっと前から違和感
極度の疲労で鈍った脳内に、複数の思考が交錯する。
その瞬間、脳裏に浮かんだのは、武神の島で見た素人同士の殴り合い。
闘志に満ちてこそあれ、憎しみでもなく、怒りでもなく、ただ相手を打ち倒そうとする、正々堂々の試合。
――そうか!
大きく跳び下がって距離をとる。
同時に右手のムラマサも消した。
『・・・何のつもりですの?』
『チャンバラは堪能したろう? なら次は、これだろ』
剣を捨てた両拳で、ぐっ、とボクシングのファイティングポーズっぽいものを取る俺。
いぶかしげだったガラス・アテナの口元に笑みが浮かんだ。
『ええ、ええ! 望むところでしてよ!』
大剣槍が地面に転がる。
ガラスの戦女神が空手のような、柔道のような構えを取った。
ラファエルさんやゲティさんの構えにどこか似ていなくもない。
『行くぞっ!』
『よくってよ!』
走り出す直前、あるロボットアニメの力を最低限の力でスロットに入れる。
ロボットの武装やスペックを再現するほどの魔力は残っていない。
ただ「ある能力」を再現出来ればいい。
どのみち俺も姫様も余力は残っていない。
姫様も、普段は見せないだろうのろのろとした動き。
互いに振りかざした右拳は、互いにガードが間に合わず、両者の顔面にまともに炸裂した。
『ははは! あはははははは!』
先ほどまでは打って変わり、ノーガードで殴り合う俺達。
技も何もない、まるで素人同士のステゴロ。
女神像の顔面にはひび割れが入り、生身だったら青あざだらけで鼻血が出ている。
恐らくだがフィードバックの苦痛も感じているはずだ。
『あはははははは!』
だがそれでもレヴィータさんは笑う。
楽しそうに。心底嬉しそうに。
『それはそうでしょう! 楽しいですもの! 嬉しいですもの!
今私は一対一で、全身全霊を賭けてハヤトさまと向き合っています!
これほどの喜びが他にあるでしょうか!』
ああ、それはわかるぜ。
相手を打つ拳から、そして打たれた顔面や体中の打撃痕から伝わってくる。
そして、俺も楽しいと思っている事を否定出来ない。
決闘クラブの人達の気持ちがほんのちょっとだけわかった。
『っ!』
綺麗なクロスカウンター・・・いや、相打ちが決まった。
『っ・・・』
『ぐっ・・・まだ・・・まだこんなものでは・・・ハヤトさまとの・・・っ!』
互いに倒れ込み、必死に立ち上がろうとする。
テンカウントの響かないダブルノックダウン。
胸のヴィラン・コアは既に全力で回転しっぱなし。
だがガラスの戦女神にそんなものはない。
アーティファクトの鎧も、神の力の欠片であるヴィラン・コアには遠く及ばない出力でしかない。
それを精神力で補い、彼女は立ち上がる。
俺と戦いたい、その一念だけで。
そんなものを見せられたら、俺だって応えない訳にはいかない。
『なあ、レヴィータさん』
『何でしょう?』
互いに立ち上がる。
もうどちらも限界。それはわかっている。
『次の一撃でおしまいにしないか。どうせなら派手に行きたい』
『いいですわね。受けましょう』
ひび割れ、ところどころ欠け落ちた女神の
こんな時だが、とても美しい。
それでだけどあなたの鎧、
『はい、そうですが?』
じゃあ、今から言う言葉を俺に続いて言ってみてくれる?
『? はい、わかりました』
俺のこの手がまばゆく光る!
『俺のこの手がまばゆく光る!』
勝利を掴めと輝き叫ぶ!
『勝利を掴めと輝き叫ぶ!』
俺が前半、あなたが後半。この後に必殺技の名前を叫びつつ、互いに全力の一撃を叩き付ける。どう?
『必殺技・・・ええ、ええ、いいですわね! それで参りましょう!』
この王女様ノリノリである。
まあ乗ってくれるならそれでいい。
『あなたが
握った拳に、一瞬トランプのハートのキングの紋章が現れる。
「機甲武侠伝Gガンボイ」の主人公が持つ、最強の五つの紋章の一つ。
そしてそれと並び立つ紋章の一つがスペードのクイーン。
この場で、これ以上に決着に似つかわしい手段はあるまい。
『・・・!』
レヴィータさんが無言で、だが最高に嬉しそうな笑顔を浮かべた。
『行くぞレヴィータ!』
『ええ、ハヤトさま!』
デモゴディのボディが黄金に輝く。
残り少ない魔力を全てつぎ込む、本当に最後の一撃。
ガラスの女神も、魔力を高めて右拳に集中させているのがわかる。
『俺のこの手がまばゆく光る!』
俺が吼える。
『勝利を掴めと輝き叫ぶ!』
レヴィータさんもまた高らかに宣言する。
勝利を掴むのは自分だと。自分は勝利のために勝利を掴むのだと。
真っ赤に燃える俺の拳。
黒く輝く女神の拳。
『爆裂! バーニングフィンガー!』
『
俺の燃える掌底と黒い拳がぶつかり合い、一瞬拮抗するかに見えた。
だが次の瞬間女神の拳は砕け散り、俺の貫手が胸の赤い宝玉を貫く。
『か・・・は・・・さすがは・・・ハヤト・・・さま・・・』
突き刺した貫手をそのまま、ガラス・アテナを片腕で持ち上げる。
貫手から伝わるエネルギーで灼熱化していく女神の巨体。
『バァァァァン・エンドォッ!』
俺の叫びと共に、ガラスの女神は破片一つ残さずに爆散消滅した。