異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三話 「善き」人々

「はいそこまで」

「!?」

 

 雑踏の中、シルヴィアさんが少年の腕を掴む。

 昨日の焼き直しだなー。

 

「ほれ、あのおっさんに返しといで」

 

 少年の懐から膨らんだ革袋を抜き取って俺に放り投げるシルヴィアさん。

 

「さて、どうしようかねえ・・・昨日の今日でこれだもんねえ・・・」

 

 にたりと笑うシルヴィアさん、硬直する少年。

 成仏しろよー。

 泥棒小僧の冥福を雑に祈りつつ、俺は財布をすられた事にも気付いてない、のんきな中年の後を追いかけた。

 

 

 

 お礼を言われて戻ってくると(お礼と言って銀貨一枚までくれた。お金持ちでいい人だ)、シルヴィアさんはまだ泥棒小僧の腕を掴んでいた。

 今回は逃がさないんですか。

 

「まあ昨日の今日でこれじゃね。なんか体に分からせてやらないとねえ」

 

 にたり、と不二鷹ジュビ□キャラばりに笑うシルヴィアさん。

 わざとやってるんだろうが、見慣れてる俺からしても怖い。

 何気にこの人演技力も高いんだよなあ。

 

「は、放せよ! 放しやがれよ!」

 

 そしてビビリまくりながらも、もがいてその手から逃げ出そうとする泥棒小僧。

 ガッツあるなあ。

 

「しょうがないねえ、ハヤト。

 あんた、例の手品でいっぺん体バラバラにしておやりな」

「ひっ・・・」

 

 泥棒小僧が顔を引きつらせる。まあしょうがないかなあ。

 しばらく放っておいて野犬の餌にでもするかぁ。

 

「ガキの頃から悪い癖ついちまってると、叩き直すのに苦労するもんさ。

 荒療治だがしかたないねえ」

 

 悪い顔で笑ってるが、目も笑ってる。

 まあ泥棒小僧にはサディスティックな変質者の笑みにしか見えないだろうが・・・

 

「放せつってんだろ年増ババァ! 化粧で若作りしてんじゃねえ!」

 

 あっ。

 

「 」

 

 シルヴィアさんの顔から表情が消える。わしづかみにされる少年の顔面。

 

「あんだと、このガキィ! あんたよほど命が要らないようだねぇぇぇっ?!」

 

 ステイッ! シルヴィアさんステイッ!

 あなたの握力だとマジで人間の頭蓋骨くらい砕けるからっ!

 ちなみに人間の頭蓋骨の固さは大体カボチャと同程度だそうである!

 うん、あんま知りたくなかったなそう言う知識!

 閑話休題(それはさておき)

 

 

 

「ふん」

 

 シルヴィアさんが不機嫌そうにエールをあおる。

 あれから場所を移して適当な酒場。

 俺はミルク。テーブルに突っ伏して動かないガキンチョもミルク。

 ちなみに種銭はさっき貰った銀貨である。

 シルヴィアさん、お代わりは一杯までですからねー。それ以降は自腹ですからねー。

 

「うぐぐぐ・・・ちくしょう、怪力ババァめ・・・むぐっ!?」

 

 何とか頭を振り振り起き上がった泥棒小僧の顔を、またしてもシルヴィアさんがわしづかみにする。学習能力のない奴め。

 取りあえずシルヴィアさんステイ!

 

 

 

「いってぇえ・・・」

 

 しばし後。こちらは学習能力の高いシルヴィアさんが、失神寸前で手を離した。

 うめいて再びテーブルに突っ伏す泥棒小僧。

 あんま逆らうなよ、こちら緑等級冒険者様なんだからな。

 

「マジ!?」

 

 おう、マジよ。その気になりゃ素手でライオン殺せるんだ。

 そう言うと泥棒小僧の表情がちょっとキラキラしはじめた。

 シルヴィアさんを見る目に、畏敬というか尊敬の感情が混ざってる。

 

 まあこの年頃の男の子からしたら、緑等級冒険者なんて物語の中のヒーローだろうしな。

 ラファエルさんの話だと、有名な英雄譚でも緑等級冒険者をネタにした物は多いらしい。

 事実上のトップである黒等級はもちろん派手な大活躍をしたから黒等級になるのだが、とにかく数が少ない。大国でもなければ一世代に一人出るかどうか、ってレベルだそうだ。

 その上の伝説クラスである金等級に至っては何をか言わんやである。

 なので新たなネタを求める吟遊詩人たちは、手垢の付いた黒等級や金等級ではなく、むしろ緑等級の冒険譚を発掘して新作を作る。

 「茨城中納言」や「バーサーク・タイクーン」は時代劇のヒット作だけど、定番のヒット作だけあっても業界は衰退するからね!

 中堅どころの良作佳作はどうしても必要になるからね!

 

 なお俺も緑等級でイレマーレを救った英雄様だけど、それは口に出さない! だって威厳がなくて信じて貰えないから! 今までの数ヶ月で嫌と言うほど思い知ったよ! なのでこの話はおしまい! 解散! 君もう帰っていいよ!

 閑話休題(それはさておき)

 

 

 

「実は親父がいなくて、母ちゃんと妹たちだけなんだ・・・俺が金を稼いでこないと、妹たちが身売りをすることに・・・」

「嘘だね」

 

 きっぱりと断言されて固まるクソガキ。

 涙まで浮かべての名演技だったが、残念。俺相手なら通用したかもしれないが相手が悪い。

 

「な、なんで嘘って分かるんだよ!?」

「勘」

 

 これまたさらっと言われて口をパクパクさせるガキ。

 ちなみに名前はリーヴィル、11才だそうだ。

 

 まあ俺から見てもさすがに今の言い分は怪しかった。

 食うや食わずのギリギリの生活してる奴が、そんな小綺麗な服着てるもんかい。

 古着だけどちゃんと手入れされてるし、靴も履いてる。

 下層だけど貧民層ではない。

 本物の食うや食わずってのはそんなもんやないんやで・・・(遠い目)

 

 ちなみにシルヴィアさんが嘘を見抜けるのは歳のこ・・・げふんげふん、人生経験のおかげもあるが、《声の加護》の持ち主だけあって、人の声には敏感だからなのだそうだ。

 例の嘘つきの卵ほどではないにしろ、嘘をついていたり隠し事があったりすると、声のイントネーションで大体わかるのだとか。

 こええなこの人。

 

 え、どうせお前は顔に出るからシルヴィアさんでなくても内心ダダ漏れだって?

 うるせえな、わかってんよ、そんなこと!(逆ギレ)

 

 さて、そんな風に脳内の一人ツッコミに逆ギレしてたりする間、シルヴィアさんはリーヴィルをおどしすかし、イレマーレでの冒険譚をちょろっと語ったりもして、ようやっとたらし込んで話を聞き出したのだが・・・

 

 なんですか? オヤジさんがまじめな肉体労働者で? オフクロさんもお元気で?

 姉が二人と弟が四人いて全員元気で?

 でも貧しい暮らしなのに嫌気が差して?

 寺子屋も行かずにヤクザの使いっ走りを始めて、スリや置き引きも教わって?

 近所の子供も誘って、色々教え込んで荒稼ぎして? 最近は闘鶏賭博にハマって?

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 こまった。(このまま見捨てて警邏に突き出そうという衝動に)ちょっと勝てない。

 

「言わないでおくれよ・・・アタシも今必死に衝動と戦ってるんだから・・・」

 

 こちらも頭を抱えて突っ伏すシルヴィアさん。

 もう、ゴールしていいんじゃないかな・・・




タイトルは映画「グッドフェローズ」から。
マフィアは自分たちの事を「グッドフェロー(善き人)」と呼ぶそうです。

>不二鷹ジュビ□
吼えろペンの富士鷹ジュビロ。本人以外誰がどう見ても藤田和日郎。
俺はこんな事言ってないって? 心から漏れていたんだよ。ダダ漏れだったよ。

>「水戸中納言」や「バーサーク・タイクーン」
水戸黄門と暴れん坊将軍。黄門は中納言の別名。
時代劇がどんどん衰退していってこの二つだけが残り、これらもやがて消えた。
そのあたりの時代を描いた「侍タイムスリッパー」は見ていて切ない。

>こまった ちょっと勝てない
ドラゴンボールの魔神ブウのセリフ。
某所だとハイター薄めた液を飲んでスク水の味、というネタとの相乗作用が強すぎる。

>もうゴールしていいよね
機動戦士ガンダムジークアクスのララァのセリフ(嘘)
後何度繰り返せば少佐の死なない世界が生まれるのか・・・!
元ネタは知らなかったが、ググったらどうもAirらしいw
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