異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第五話 ハヤト最後の十二時間

「いるんだろ、出といで」

 

 俺の尾行はあっさりばれた。

 出ていったシルヴィアさんの後を、光学迷彩をまとってつけていくと裏路地に入った。

 続けて裏路地に入ったらこのセリフだ。

 

 諦めて光学迷彩を解除する俺。

 そんなにわかりやすいですかねえ?

 スレイザックさんに貰った魔法のブーツ(忍び足効果もある)も履いてきてるのに。

 

「視線に力が入りすぎなんだよ。そのうちアーベルにでも教えて貰いな」

 

 うーん奥が深い。師匠の追跡術に気付くのもそれか?

 そして緑等級の人には単なる透明化ではばれる可能性がある。ちぃ覚えた。

 

「で、ばれててもついて来る気かい?」

 

 そりゃあもちろん。

 シルヴィアさんだって頼まれもしないのに勝手にリーヴィルについて行ってるんでしょ?

 俺も勝手についていきますよ。

 

「口が達者になったもんだ」

 

 誰かさんたちに鍛えられましたので。

 そう言うとシルヴィアさんは苦笑して、ついてこいと身振りしてから歩き出した。

 

 しばらく無言で繁華街を歩く俺達。夕闇の中、店や屋台がランプやロウソクで照らされて独特の味わいがある。台湾の夜市ってこんな雰囲気かな。

 で、もう日没ですけどあいつこんなとこで何やってるんです。

 

「闘鶏さ。知ってるかい?」

 

 まあ映画とかで見たことはあります。

 軍鶏(シャモ)を戦わせるんですよね。

 んで、負けたシャモはシャモ鍋屋で火盗改めの長官や密偵の腹を満たすんだ。

 

「ああ、『オーガ・パトロール』の話かい? ヘイゾーみたいなのがいればそりゃ凶悪犯もビビって出てこなくなるだろうさ」

 

 からからと笑うシルヴィアさん。

 有名な時代小説の話なのだが、普通に通じてしまった。

 俺の先輩方は本当に節操がない――!

 閑話休題(それはさておき)

 

「なんだったかな、変な名前のシャモを持っててさ、それが滅法強いらしい。

 連戦連勝でチャンピオン間近じゃないかって」

 

 へー。

 犯罪なんかせずにそっちで食っていけば・・・いや、闘鶏って犯罪か?

 

「犯罪だね。大概目こぼしされてるけど」

 

 まあ実際犯罪組織が仕切ってるんだろうしなあ。

 

「そう言う事さね。賭け事にヤクザが絡んでこないわけがない・・・ほれ、あそこだ」

 

 シルヴィアさんが指さした方には、歓声の上がる人だかりがあった。

 

 

 

 寒空の下、そこだけは熱気が充満している。

 目を血走らせて声を上げる数百人の男たちから立ち上る湯気。

 その中心にいるのがリーヴィルだった。

 

「~~~~~~!」

「いっけぇ、フリーマン!」

 

 もはや聞き取ることも出来ない大歓声の中、リーヴィルの声は良く通った。

 恐らくは彼のシャモらしい、赤い大柄な鶏が大きくジャンプして相手の顔面を蹴る。

 綺麗に決まった蹴爪がぱっと赤い血を散らせた。

 

「そこまで! そこまでだ!」

 

 相手の黒いシャモが闘技場に倒れ、もがく。

 審判役のヤクザが割って入り、リーヴィルが素早く自分のシャモを抱き上げた。

 とどめを刺すべく躍り掛かろうとしていたフリーマンは不満そうにもがく。

 リーヴィルが愛鶏を抱え上げて頭上に持ち上げると、罵声と怒声と歓声が一度に響いた。

 

 

 

「うーむ・・・これ、面白いんですか?」

「さあね。賭け事になるなら何でも面白いんじゃないかい?」

 

 肩をすくめるシルヴィアさん。まあそりゃそうだ。

 俺だってロボット同士が殴り合ってるの見て楽しんでるわけだからな。

 あ、リーヴィルが高いところに座ってる兄さんの方に走っていってる。

 いかにも切れそうな、知的な感じの人だ。

 上品そうな服着ててヤクザ特有の柄の悪さもなく、一見真っ当な仕事してる人に見えなくもないが、どこかそっち方面の人の匂いがする。

 グレーター・ヤクザってやつかな? もしくはヤクザの顧問弁護士。

 

「あんたも鋭くなったねえ。ま、多分あいつがここの元締めだろうさ」

 

 鋭くなんてなりたくありませんでした!

 そんなことの分からない、平和な生活をしていたかった!

 

「あちこちの厄介ごとに片っ端から首を突っ込んでおいて何を今更」

 

 自分から突っ込んでるんじゃありませんよ! あっちから来るんだ!(悲鳴)

 

「そんなら運命って奴さ。諦めな」

 

 チクショーメー! ダイキライダ! オッパイプルンプルーン!

 ・・・・・・・・・・・。

 む? ひょっとしたらと思ったが、あいつがリーヴィル(大)か。

 

「聞こえるのかい?」

 

 ミストヴォルグセンサーなら楽勝ですよ。まあ大した事は話してないです。

 いいシャモだとか、よくやったもうすぐチャンピオンとの試合だとか、まあそんなあたりさわりのないことで。

 お、こっちに走ってくる。

 

「行くよ」

 

 うす。

 

 

 

「なんだよ、またあんたかよ。しつけーな」

「別にいいじゃん。応援してやってるんだからさ」

 

 ケラケラ笑うシルヴィアさん。

 リーヴィルの方も口ほどに嫌がっている様子はない。

 頭をわしゃわしゃかき混ぜられても振り払ったりはしないしな。

 

 屋台で飲み物を買って、適当に座る。

 シャモのフリーマンはご褒美のエサをつついてご満悦だ。

 

「今日は腰巾着の兄ちゃんの方もか。

 下っ端は大変だな」

 

 うるせえな! 下っ端なのは否定しないが!

 ん、シルヴィアさんがニヤニヤしてる。

 

「アンタも見る目がないねえ。こいつは下っ端なんかじゃないよ」

 

 む、まさか俺の《加護》の事をばらすつもり・・・

 

「アタシの愛人さ」

 

 ブフォッ!?

 そのまま俺を引き寄せて顔を抱くシルヴィアさん。

 あの、当たってるんですが。

 

「当ててんのよぉ?」

 

 いやそういうことではなくて!

 

「こいつはねえ、凄いんだよぉ? こーんなかわいい顔してさあ、うぶなくせに毎晩毎晩アタシの体を隅から隅までなめ回してさあ、やめてって言っても離してくれなくて一晩中あえぎっぱなしなんだよ?」

 

 こ、このひとは・・・小学生相手に何を言ってるんだ!?

 まあ万が一、億が一、兆が一、何か考えがあった時のために何も口にはしないが・・・

 

「昨日もね、アタシをひっくり返して・・・」

「ねーちゃん処女だろ」

 

 ぴきっ、と幻聴がしてシルヴィアさんが硬直した。

 

「男で寝床自慢をするヤツは大体ヤリチンだけど、娼婦でもないのに寝床自慢をする女は大体見栄張ってるだけの耳年増だって、娼館のババァが言ってたぞ」

「・・・」

 

 完全に硬直して何も言い返せないシルヴィアさん。

 思わず俺は吹き出した。

 

 

 

「いってぇ・・・!」

 

 痛む頬をさすってうめく。

 この女、本気で殴りやがった・・・!

 

「人のこと笑ったバチが当たったんだよ!」

 

 殴るならこのガキンチョの方でしょ!

 俺は悪くぬぇ!

 

「ふぁふぁふぁ、仲がいいのう」

 

 ん? 歯の抜けた爺さんが話しかけてきた。首から野球場の売り子さんが下げてるような箱を下げてる。中身は紙の束とか現金。

 あれか、ダフ屋さんみたいなもんか?

 

「あ、ポルク爺さん」

「おめでとうよ、リーヴィル坊。もうすぐチャンピオン戦かの?」

 

 どうやらリーヴィルの知り合いらしい。

 ハイタッチしてフリーマンの勝利を祝っている。

 

「リーヴィルさんは後2回勝てばチャンピオン戦だって」

「ほう、そりゃすごい! 最速記録じゃの!」

「そりゃフリーマンは最強だからな! 新しいチャンピオンはこいつで決まりだって、客にも言っとけよ!」

「ふぁふぁふぁ、そうしよう」

 

 歯抜けの口で笑うポルク爺さん。いかにも好々爺って感じの福々しいお顔である。

 こう言うところにもこう言う人はいるんだなあ。

 

 それからしばらく四人であたりさわりのない話をして、俺達はおいとました。

 いいんですか、ここで行っちゃっても?

 

「まあ信用を得ないとね。人を口説くなら踏まなきゃならない手順ってものもあるさ」

 

 うまくいけばいいなあ。

 俺は心底そう願った。

 




>オーガパトロール
鬼平犯科帳。
池波正太郎の最大のヒット作で中村吉右衞門。

>女の床自慢は見栄張った耳年増
嘘かほんとか知らないが、作者はこう主張する人を生で見たことがあるw

> チクショーメー! ダイキライダ! オッパイプルンプルーン!
映画「ヒトラー~最期の12日間~」を元にした空耳ネタ。
もう古いなあw
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