異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
それから数日、俺達は闘鶏場に通ってリーヴィル(小)と仲良くなることに努めた。
ついでにダフ屋(正確には賭け札売りらしいが似たようなもんだ)のポルク爺さんとも結構仲良くなった。
あれから二回、シャモのフリーマンは危なげなく勝利。
いよいよ今日はチャンピオン戦だ。
「ほい、また来たのかね」
「まあね。今日は絶対王者相手に戦うんだろ? 見過ごせないさね」
「そうかそうか、それじゃ坊のフリーマンの勝ちにいくらか賭けてみないか?」
「そうだね・・・」
ダメですよ。シルヴィアさんが賭けたら間違いなくフリーマンが負けますから。
「あんたねえ!?」
シルヴィアさんがギャンブルすると負ける。これは神々の作りたもうた絶対の法則です。なのでフリーマンの勝ちに賭けたらヤツが負けます。
「ぐぎぎぎぎ・・・!」
怒ってはいるが手は出してこないシルヴィアさん。弱い自覚はあるんだなー。
「ふぁっふぁっふぁ、そう言う事なら無理には勧めんでおこう。坊には勝ってほしいからの」
「だからっ!」
「爺さん! フリーマンに五枚だ!」
「はい、ただいま!」
そう言って、爺さんは笑いながら行ってしまった。
まあ賭け札売りにとっては稼ぎ時だろうな。
それからしばらく、前座の試合がいくつか終わっていよいよメインイベント。
フリーマンを抱えて入場するリーヴィル。あちらのドジョウ髭の陰気なおっさんが抱えてるのがチャンピオンか。全身真っ黒でこっちも強そう。
・・・うん?
「どうしたい・・・っ!」
そこでシルヴィアさんも気がついたらしい。
怒号。僅かに遅れて観客の悲鳴。逃げ出す人の波。その向こうに刃物や棍棒を振りかざしたならず者の群れ。
「殴り込みだぁっ!」
誰かが叫んだ。
その後のことは余り覚えてない。
とにかく大騒ぎになったところを走り回り、気がつくとリーヴィル(小)を抱えて走っていた。
お姫様抱っこである。男なのに。嬉しくねえ。
リーヴィルの両腕はシャモのフリーマンをしっかり抱えており、シルヴィアさんは俺の右側を走っていた。
後ろをちらりと振り返ると闘鶏場は燃え上がり、剣を打ち合わせる音や刃物が肉に食い込む音、断末魔の悲鳴などが聞こえてくる。
しかもハイレゾ音源、高サンプリングレートのドルビーアトモス・プレミアム音質でだ。
こんな時には高性能なミストヴォルグセンサーがうらめしい!
ともかく俺達はしばらく駆け続け、いつの間にかスラム街に迷い込んでいた。
・・・もう大丈夫ですかね?
「・・・多分ね」
さすがに疲れたのか、シルヴィアさんが息をつく。
おいリーヴィル(小)、大丈夫か?
「ケッ! ケーッ!」
あぶねっ! 危うく顔面をつつかれるところだった。
飼い鶏はちゃんとしつけておいて欲しいと思います。
「・・・おい、リーヴィル。大丈夫かい?」
「あ・・・あ・・・」
今気がついたが、リーヴィルは顔を青くしてガタガタと震えていた。
怪我は・・・ないみたいだけど。
「ほら、気付けだ。ぐいっと行きな」
「・・・ブフォッ!? ごほ、ごほっ!」
ちょっと! それ蒸留酒でしょ! マジの子供にそんな強い酒飲ませたらダメですよ!
「これくらいなら大丈夫だよ。それで・・・どうしたんだい。大丈夫かい?」
「ポルクの・・・ポルクのじいさんが・・・腹刺されて、血を吐いて動かなくなって・・・」
震えながらもリーヴィルが話し始める。どうやら爺さんはあの殴り込みに巻き込まれたらしい。
「とってもいい人だったんだ・・・面倒見が良くて、右も左も分からない俺にいろはから闘鶏を教えてくれた。俺が勝つのを自分の事みたいに喜んでくれて、俺の勝ち札で儲かったからって飯をおごってくれた・・・いい人だったんだ・・・!」
「ケェ・・・」
涙声のリーヴィルが、抱えたシャモの羽毛に顔を埋める。
フリーマンが慰めるように一声鳴いた。
リーヴィルはしばらく嗚咽を漏らした後、シャモの羽毛から顔を上げた。
その目は涙と憎悪に満ちている。
「ちくしょう、あの人は賭け券売ってただけで何も悪いことしちゃいないのに!
北の元締めの野郎の仕業だ! ブッ殺してやる!」
「そしてまた無関係なヤツを殺すわけかい。きりがないね」
何の感情もこもってないシルヴィアさんの声。
それが更にリーヴィルを激昂させる。
「やってきたのは向こうだろ! 悪いのはあいつらだ!」
「ヤクザなんてどいつもこいつも同じだよ。巻き添えが出たところで気にしやしない。組織の下っ端も、その辺の有象無象も、使い潰して終わりさね」
「リーヴィルさんはそんなことしねえよ!」
「あんたの好きなリーヴィルさんだって似たようなことはしてるさ。ましてや、30代の若さでナンバーツーに成り上がったんだ、相当無茶なことしてる。賭けてもいいね」
「・・・っっっ!」
親の仇ででもあるかのような目つきでシルヴィアさんを見上げるリーヴィル。
シルヴィアさんは無表情でそれを受け止めている。
「もういい! やっぱおまえらに俺達の気持ちが分かるはずないんだ!
お前らみたいに恵まれた人間に、身内を殺された人間の気持ちが・・・ごっ!?」
リーヴィルの軽い体がくるくる回って倒れる。
シルヴィアさんではない。
彼女は唖然とした顔で俺を見ている。
ひっぱたいたのは俺だった。
「・・・」
思わず手が出てた。
自分でも驚いてる。
けど、それと同じくらい俺は怒っていた。
起き上がろうとするリーヴィルの胸元を掴んで持ち上げる。
シャモのフリーマンが足を突っついてくるがまるで気にならない。
「お前が盗んだり傷つけたりした人だって誰かの身内なんだよっ!
お前が奪ったせいでその日の飯が食えなくなった人のことを考えたことがあるかっ!
お前が盗んだせいで店が潰れたかもしれない人がいると考えた事はあるか!
お前に騙されたせいで家を追い出されたかもしれない人、
お前のせいで薬を買えなくなって死んだ人がいるかもしれないって、考えた事はあるか!?」
「・・・!?」
固まるリーヴィル。
本当に考えもしなかったらしいな。
「同じだ! お前も、もう一人のリーヴィルも、ポルク爺さんを殺したヤツも!
全員人殺しだ! 勝手な理由で誰かの身内を殺す人殺しだ!」
正直、俺だってそこまでえらそうな事は言えない。
なるべく避けてはいるが、少なくとも俺とカオルくんを召喚したロンド王は殺してしまっている。怪物になっていたとか、俺たちを殺そうとしたとか、言い訳の余地はあってもだ。
けど、だからって許せないことがある!
「お、俺は人殺しなんか・・・!」
「絶対そうなる! 自分は貧乏だから許されるって言い訳して、他人の金を盗む事を正当化して、他人を傷つけることを正当化して、最後には人を殺すことだって正当化するようになるんだ!」
人によるところはあると思う。最初から殺人に忌避のないものもいれば、盗むだけで留まれるやつもいるだろう。
でも多分、大概の犯罪者はそうやって段階的に良心のタガを失っていくんだ。
慣れていくんだよ。
「・・・」
リーヴィルは完全に沈黙した。
ちらりとシルヴィアさんの方を見る。
彼女が頷いて話しかけようとする。
「・・・」
うん?
「ふざけんなこの野郎!」
突然リーヴィルが爆発した。
「殺されたんだぞ! ポルク爺さんが殺されたんだぞ!
身内を殺されて復讐しないのは男じゃねえよ!
逆に聞くぞ! あんたら、身内を殺されて黙ってんのかよ!?」
「・・・」
一瞬沈黙するシルヴィアさん。
その空白に声が割り込む。
「よく言った、リーヴィル。それでこそ男だぜ」
「「!!」」
三人が同時に振り返る。
南の元締めの若頭、リーヴィルと同じ名前の男がそこにいた。