異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「国王を倒すために協力してもらいたい」
数日ぶりにテントのテーブルにみんなでついて、お茶を入れて、ユリシーズさんの第一声がこれだった。
あの後見られているのを知っているかのように語りかけてきて、そのまま避難所の真上に居座ってしまった彼。しばらく話しあった後、概ね全員の同意を得て話を聞くことにしたのだ。
なおそのまま上に出るとばれるので、ちょっと離れた場所までアルテとペトロワ師匠が穴を掘った。師匠の呪文のレパートリーの広さにもびびるが、何だかんだで力持ちというのは凄く便利な能力だと思う。
「・・・いきなり国王を倒すとは穏やかじゃないね。大体あんた王様の家臣だろ?」
眉をしかめたシルヴィア座長に、ユリシーズさんはあくまでまじめな顔で言葉を続ける。
「
多くの兵士や船が失われる中で停戦を求める意見が強くなってきたのだが、陛下はそれを一顧だにされず・・・反対派の貴族が数人蟄居を命じられもした。
果てには妖しげな術師を呼び寄せて奇怪な儀式を執り行い、勇者の召喚まで。
正直付いていけないというのが大部分の家臣の思いなのだ」
「ふうむ・・・」
何度も言ってるがそりゃ海で魚人にケンカ売ったら勝てるわけがない。
ただでさえ妖精って神様の力で人間を強化して作った種族。スペックで人間を上回る。
オブライアンさん見てると実感ないが、オアンネスだって人間の数倍の腕力があると言われている。その上に水の魔法が得意で水中で自由に行動できるんだから、これはもう話にならない。
当たり勇者が来たから開戦しよう、ならわかるが・・・最初に戦争始めた時、あのクソ王は何を根拠に勝てると思ってたんだろう?
「それにしたってね。あんたこう言う任務に狩り出されるって事は国王派の騎士なんだろ。それをどうやって信じろって?」
「我がオーキッド家は確かに代々国王直参の家柄だが、私の母は現在反国王派に近いサント家の出身なのだ。その縁だな」
シルヴィアさんがアーベルさんに視線をやると、アーベルさんが無言で頷き、座長は溜息をついた。
「それで? あたし達に何をさせようっていうのさ? クーデターかい?」
「簡単に言えばその通りだ」
「ファッ!?」
凄く簡単に言うけどさあ、クーデターって要するに武力蜂起だろ?
うまく行けばそりゃいいけど、行かなかったら泥沼の内乱とかになるんじゃないの?
そりゃまあそうなったら戦争してる暇無くなるからオアンネスの人達は助かるだろうけど!
そう言ったらユリシーズさんは何故か笑顔で頷いた。
「さすがニホンの勇者、平民でも学があるというのは本当だな。
その通り、だからこそ最初の一撃で確実に勝負を決めなくてはならん。
そのために君と――ガイガー殿の協力が必要なのだ」
「・・・?」
ガイガーさんの方に視線が集中する。
見られている方はいつも通りの無表情。
「兄弟子・・・いや、剣聖ガイガー・ロート殿。あなたの力を是非にもお借りしたい」
「!?」
どよめきが起こった。
「剣聖!?」
「あれマジ話だったのか!」
「何かリタの思い違いかと思ってた・・・」
僅かでも驚いてないのはリタとペトロワ師匠のみ。
その他は多かれ少なかれ驚愕を顔に浮かべるなか、渦中の当人がゆっくりと口を開く。
「俺は剣聖ではない。剣の道に足を踏み入れたこともあるが、俺は昔も、そして今も芸人だ」
「だがシュテファン先生が後継者に指名したのはあなただ。そしてそれに異を唱える人間もいなかった」
「それでも俺は違う」
「それは奥方のことが関わっているのか」
ぴくり、とガイガーさんの頬が動いた。
「・・・」
「・・・」
沈黙が痛い。
事情はわからないが、それでも何か口に出せる雰囲気じゃなかった。
しばらく続いた後、溜息をついて音を上げたのはユリシーズさんの方だった。
「いいでしょう。ですがこの件については協力して頂きたい」
「・・・」
「勇者ハヤト殿。君にも協力を願いたい。
君が身の安泰を願うなら、つまる所それ以外に手段はない。
それだけではなく、オアンネスとの戦争が終わるか否かの瀬戸際なのだ。
そこをよく考えてくれ」
ちらりとオブライアンさんに視線を走らせる。彼が身を固くするのがわかった。
「・・・」
オブライアンさんは何も言わないけど、無理だよこれ・・・
「・・・どうすればいいんです」
「「ハヤト!」」
アルテとシルヴィアさんが声を揃えるが、俺の決意は変わらなかった。
ユリシーズさんが真剣な顔で深く一礼する。
「感謝する、勇者ハヤト殿」
「・・・」
ガイガーさんは無言でためいきをひとつ。
あ。
「いや、これは俺が勝手にしたことで、ガイガーさんには関係ないですよ!?
ガイガーさんが嫌なら協力する必要は・・・」
「俺が決めたことだ、ハヤト」
その一言で俺は黙り込んでしまった。
人生経験の差か、それとも格の違いという奴か。
ガイガーさんがその気になったら俺じゃ止められない。
「それに」
「?」
ガイガーさんがオブライアンさんの方を見る。
「
「っ・・・」
オブライアンさんが顔を押さえた。手の隙間から、ぽたりとしずくが落ちる。
しばらくの間、再び沈黙が落ちた。
オブライアンさんが席を外した後、シルヴィアさんが蒸留酒をぐいっとラッパ飲みする。
瓶をテーブルに置いてユリシーズさんを軽く睨む。
「それで? どうするつもりだい?」
「協力してくれるのかな?」
「あんたの話次第さ。無謀な話なら今からでもこの二人をふんじばって、あんたは家に帰れなくなる」
「けっこう」
薄く笑ってユリシーズさんは話し出した。
「まず、ハヤト殿には逮捕されて頂く。自ら名乗り出て、自分の潔白を証明しに王都へ向かって貰う。自首したのであるから縄はかけない。逃げようとしてもカオル殿なら苦もなく捕縛できよう」
うんまあそりゃそうだ。正直《加護》はかなり使いこなせるようになってきてると思うけど、あっちにも《魔剣の加護》がある。《加護》の能力が同じくらいなら、素の能力で俺がカオルくんに勝てるとは到底思えん。
「逆におたくらがハヤトに害を為そうとしても、勇者様が止めるってかい」
「しかり」
ユリシーズさんがまた薄く笑って頷いた。
「ハヤト殿は見覚えがあるかも知れないが、国王陛下は君たちを召喚した術師から色々と買い込んでいたようだ。巨大な
ハヤト殿とガイガー殿の助力が是非にも必要なのだ」
あー、あのボハボハ笑ってた肉達磨みたいなやつか・・・でも正直あてにされても困るなあ・・・巨大ロボット丸ごとの召喚はあれ以来成功してないし。
そう言う事は余り口に出すなと言われたのでその辺は黙っておくけど。
そんなことを考えていると、シルヴィアさんがこっちに顔を向けてきた。
「どうする、ハヤト? あんた次第だ」
「・・・」
その場の全員から視線が集中する。
このまま逃げててもじり貧、逃げ切れた場合でもオアンネスとの戦争は放置していくことになる・・・それを考えるとユリシーズさんの提案は危険ではあるが問題を完全に解決できる一手に思えた。
シルヴィアさんの目を見て頷く。彼女も頷き返してきた。
「よし、ハヤトが頷いたならいいだろ。詳しい事は途中で話して貰おうか。それとこの件、どれだけが知っている? 勇者様には伝えてあるんだろうけど」
うん? シルヴィアさんの言葉に、何か困った様な顔をしてるぞ。
「それなんだが・・・伝えてない」
「何で!? 最重要だろ!」
「そうなのだが・・・勇者殿は素直というかなんというか・・・察しは良いのだが腹芸が出来ないタイプの人間でな・・・」
「あー」
言われてみればカオルくん、凄く素直なキャラである。
馬鹿正直というか、考えてる事が顔にすぐ出るというか・・・。
「言っておくけど、考えてる事が顔に出るのはハヤトもそうだからね?」
アルテの言葉にうんうんと、ユリシーズさん以外の全員が頷いた。
ひどない?
残当。