異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「お兄ちゃん! あっち!」
抱きかかえたリタが斜め上を指す。
黒く群がる鳥の群れ。
そうか、チュパくんを追ってるのか!
「飛んで先行する! カオルくんとアルテはついてきて!」
「わかった!」
二人が頷いたのを確認し、俺は左腕にプロペラを生成して空に舞い上がった。
鳥の群れを追って雑多な下町の上空を翔ける。
チュパくんの姿は見つからない・・・これ、ひょっとして家と家の間の、30センチくらいの隙間を通り抜けてるのか!?
「いた! チュパくんだ!」
「ああ、俺にも見えた!」
ちらっと見えた彼は四つ足で、狼くらいの速さで走っていた。
そうじゃないかと思ってたが身体能力も結構高い!
入り組んだ下町でも見失わないのはリタの鳥たちのおかげだ。
こう言う時は本当頼りになる!
下町をジグザグと走るチュパくん。
鳥の群れを頼りにそれについていく俺。
何とか捕まえたいのだが、家と家の隙間から出てくれないとどうにもならん。
姿だって、時折ちらりと見えるくらいで・・・なんだ、鳥の群れが動かなくなったぞ?
リタ!?
「チュパくんが見えなくなったって! どうしよう!?」
取りあえず落ち着くんだ。
自信はないけど、何とか臭跡を追ってみる。いいな?
「うん・・・わかった」
リタを抱く腕に力を込める。
鳥たちがチュパくんを見失った辺りの通りに降りると・・・あれ? いつも見慣れたような、この十匹十色のカラフルなナマモノ達は?
「チュー!(ハヤトのくせに偉そうな物言いでチュ)」
「ヂュヂュッ(さっさとリタから離れるでチュ)」
「チューチチチー(ヘッ、この●●ヤローが)」
うわあ、俺いつの間にかアカフク達の言葉が分かるようにナッチャッタヨー。
特に理由はないのだが何かショック。
あとゲッペイ、どこで覚えたのか知らんが、リタに聞かせられない言葉言うの禁止!
「それでみんな、何か分かったの?」
「チュー(それはもちろん)」
「チュチュチュッ(図体ばかりでかい能なしと比べないで欲しいでチュね)」
おいペパ公、誰の事だ。
それはともかく奴らの言う事を総合すると、黒い連中がチュパくんを無力化し、袋に入れて走り去ったとのこと。
「今からでも後は追えるでチュ。こっちでチュ!」
よし、今回ばかりは良くやった! 案内しろ!
「ハヤト! リタ!」
「チュパくんは!?」
よしナイスタイミング!
追いついて来たアルテとカオルくんたちと共に、俺達はまた走り出した。
「はあ・・・ふう・・・」
そろそろアルテが息切れしてきた。
「チュー(やはり牛はスタミナが足りないでチュね)」
「チュチュー(いつも食べすぎでタプタプしてるから、体が重いのでチュ)」
アカフク達が何か言ってるが、身の安全のためにもスルー・・・ちょっとアルテさん、なんで俺を睨むんですか!
それはともかく周囲は工房というか、作業場が多くなっている。
サトウキビや樽を積んだ馬車が沢山出入りしていて、甘い香りがしているから、多分サトウキビを絞って砂糖を作ってるんだろう。
あの中のどれかに隠れてるって事は無いか?
「チュー(少なくとも、チュパくんをさらったヤツの匂いはまっすぐ続いてるでチュね)」
「ヂュヂュヂュ!(リタの弟分なら我々にとっても弟と同じ! 我ら生まれし日は違えども同年同月同日に爆発四散でチュ!)」
義兄弟みたいな感覚か。こいつらなりに義憤を感じてるんだな。後それちょっと違う。
「チューッ!(いた! あれでチュ!)」
!
作業場街の途切れるところ、5mクラスの巨大な樽が沢山並んでるところに奴らはいた。
馬車で運んできた樽から黒い液体を注いでいるのが横目に見えたから、多分廃糖蜜の樽。
走ってくる俺達に気付いたのか、こちらを指して叫んでる。
「あ、剣を抜いた!」
悲鳴を上げて、作業の人達が逃げていくのが見える。まあ巻き込まないで済むのは好都合だ!
「逃げられるよりはいいって意味でもね! 幻夢剣!」
カオルくんが新たな魔剣を呼び出す。アルテもかばんから「それどこに入れてたんだ」と言いたくなるような巨大なメイスを取り出した。毎回思うが「100t」とか書いてそう!
「舞え、桜吹雪!」
「!?」
彼我距離20mくらいのところでカオルくんの幻夢剣が発動した。
効果は舞台でも良く使う桜吹雪。1m先も見えないくらいの濃密な花びらの幻影の中を、俺とカオルくんが駆ける。
「何だ?!」
「クソッ! 幻影・・・ぐわっ!?」
視界を塞がれて右往左往する黒服の男をムラマサで殴り倒す。
安心せい、峰打ちじゃ。
「ぎゃっ!」
「ぐわっ!」
隣から悲鳴。
カオルくんが同様に黒服を打ち倒してるんだろう。
ちなみに俺はミストヴォルグのソナーで大体の位置がつかめるが、カオルくんはマジ気配だけで相手を感知して殴ってる。どれだけテンサイだよこいつ! 砂糖の町だけにな、HAHAHAHA!
「馬鹿な事言ってないで!」
カオルくんサーセン! 仕事はしてるから許して!
ちなみに幻影を見通す手段がないアルテはリタの護衛。
別働隊がいる可能性もあるが、今のアルテなら大概の相手はホームラン出来るだろう。
! いた、こいつだ!
俺は大きな袋を持った男を殴り倒し、中からチュパくんを引っ張り出す。
ぐったりしてるが怪我はない・・・カオルくん、見つけたぞ!
「よし! 散れ、桜吹雪!」
無数の桜吹雪がパッと消滅する。
残ったのは黒いお仕着せを着た男たち数人、そして一人豪華な服を着た、太った中年男。
なんだろう、こいつら。
微妙に犯罪組織っぽくもあるが・・・何者だ!
「そのクリーチャーを渡せ! そいつはわしらのものだ!」
冷や汗を浮かべて中年男が叫ぶ。
魔力を感じるな・・・杖も持ってるし術師か?
だが断る!
「そう言う事! ・・・ハヤトくん、こいつらどうする?」
出来ればあのデブは生かして捕らえたいかな。チュパくんについて知ってるみたいだし。師匠に頭クチュクチュしてもらおう。
そう言うとカオルくんが苦笑した。
「悪い顔してるよハヤトくん。でもまあ、賛成かな・・・サンダースウォード!」
「うおおおお?!」
冬の晴れた空が一転かき曇り、黒雲が空を覆う。
天に手を伸ばすカオルくん。落雷。
そしてまぶしさに目を閉じた黒服達が目を開けた時、カオルくんの手に握られていたのは黄金の象嵌を施した黒の剣・・・伝説の黒騎士姫の剣、サンダースウォードだった。
「うお・・・」
冷や汗を浮かべてデブ中年が一歩下がる。
術師なら、サンダースウォードの秘めた魔力も理解出来るだろう。
降伏するなら今のうち・・・がっ!?
「うっ!?」
がつん、と来た。さっき、チュパくんが腹から飛び出した時のような。
立っていられない。
ぐらりと視界が揺れて、俺は倒れた。
カオルくんも、どうやらアルテとリタもだ。
「くくく・・・伝説の魔剣とは驚かせてくれる。だが所詮使うのはただの人よ。
並の精神防御ではこいつには勝てまいが・・・おい、見せてやれ」
デブの後ろに控えていた黒服が、上着の前をはだける。
!?
「お・・・お前らは・・・!」
カオルくんの怒りと驚愕の声。
黒服の胸には、チュパくんと同じチュパカブラのデスマスク。
人間の体に移植され融合した、チュパくんの死んだ同族の目が、無感情に俺達を見下ろしていた。
>ペパ公
リタのハムリス十兄弟のうち、次兄のペパーミント(青)。
なんかペパ公と言うとガルパンのペパロニっぽいな!(ぉ
>5mの樽
ギネス世界記録は九州の醤油屋さんが使ってる9mのやつだとか。
>巨大なメイス
「隠しポケット」と呼ばれる魔法のかばん(師匠の私物)にしまってました。
100tはシティハンターから。現実世界では20tのスレッジハンマー、夢のなかでは原作通りの100t木槌を持ち出すフレンチシティハンターには脱帽だぜ。
>「舞え、桜吹雪!」
わざわざ口に出すのはその方がイメージが強くなるからです。この世界の魔法で呪文を唱えるのも同じ理由。でもハヤトくんは素。
舞台だとエフェクトごとにその場のセリフと関連づけてたり。