異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第拾伍話 甘き死よ、来たれ

 無表情な男の腹に、同じく無表情なチュパくんの顔。

 チュパくんの同族・・・恐らく遺体を肉体に移植してる・・・趣味が悪い・・・改造人間かよ・・・

 ぐう・・・頭ががんがんする。

 シルヴィアさんに酒を飲まされた時みたいな・・・

 

「おい」

「はっ」

 

 生き残りの黒服の一人が近づいて来て、俺の腕からチュパくんを奪い取る。

 

「手を焼かせおって!」

「ぐっ!」

 

 デブ中年が俺を蹴る。

 俺はもがく事すらできない。

 カオルくんは・・・くそ、気を失っているか。

 アルテもリタも・・・リタ!?

 

「チュパくんを返して!」

「ほう」

 

 デブが目を丸くする。

 どうしてリタは・・・そもそもこの攻撃は何なんだ?と朦朧とする頭で考えて、一つ閃いた。

 もちろんあの改造人間の仕業なのは間違いない。

 それで多分これは、チュパくんたちの種族の「会話」なんじゃなかろうか?

 

 テレパシーだから、多分声による会話よりは遥かに多くの情報を伝えられるだろう。

 でも俺達はそうした情報伝達に慣れてないから、脳がそれらの情報を処理しきれない。

 それで脳が処理落ちしたのがこの状況だ。

 チュパくんが俺の腹を飛び出した時ガツンと来たのも、チュパくんがそうしたテレパシーを無差別に放射したんだろう。

 

 リタが無事なのは多分《会話の加護》で常時そうした膨大な情報を受け取り処理していたから、俺達より遥かに処理能力が高かったってことなんだろう。

 俺もリタほどじゃないが、ここ一年近く《ロボットアニメの加護》でセンサーの情報を処理してきたから、アルテやカオルくんよりは処理能力が発達してたんだと思う。

 修行で精神力を鍛えていたから、と言うことならカオルくんが耐えてるはずだしな。

 

「そいつを捕まえろ!」

「いや! 離して!」

 

 くそ、リタを離せ・・・!

 悔しいが体が動かない。

 これじゃ《加護》もまともに・・・いや、こう言う時は逆に考えるんだ。

 体が動かせないなら、勝手に動くヤツを呼び出せばいいさと考えるんだ。

 コンパクトロン、イジェークト!

 

「!?」

 

 瞬間、全員が目を丸くする。

 そりゃそうだ、人間の胸が開いて、そこから謎のカセットテープ・・・正確にはコンパクトカセットが出てくればな。

 

 こいつはコンパクトロン。

 変形ロボットアニメ「メタモルフォーマー」の敵参謀・ステレオウェーブの子分?だ。

 

 ステレオウェーブはカセットプレイヤーから変形するメタモルフォーマー。当然胸からはカセットが出る。このカセットがロボットに変形したものがコンパクトロンだ。

 カセットテープが地震を起こす小型人型ロボや、コンドル型の飛行ロボ、ジャガー型の陸戦ロボ、コウモリ型の偵察ロボなどに変形するのだ。

 今で言う自律型ドローンみたいな役目を果たしてくれると思えばいい。

 それを魔力が続く限り胸から吐き出す!

 

『『『『『『メタモルフォーム!』』』』』

 

 ギガゴゴゴゴと連続で鳴り響く変形サウンド。

 

「うわあああ!?」

 

 混乱する黒服達。

 何とかこの隙に回復して・・・

 

「この!」

 

 デブが杖を振り上げた。杖の先に赤く光る・・・ファイアーボールの呪文!

 やば・・・

 

「チュパくん!」

 

 リタの声。

 

「チュパくん、お願い、目を覚まして! 早く逃げて! この人たち悪い人達なの!

 捕まったら、また痛いことされちゃうんだよ!」

「くそ、このガキ! 黙ってろ!」

 

 黒服がリタの顔をひっぱたく。

 この野郎?!

 体がカッと熱くなり、魔力が体を駆け巡る。

 だが、俺が動くより早く動いたものがいた。

 

『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!』

 

 チュパくんが目を開き、心の声で叫ぶ。

 先ほどのそれより更に強い「ガツン」が来た。

 だがそれは俺の精神にぶつかることなく隣を通り過ぎ、胸をはだけた改造人間――チュパくんの同族の遺骸を体に埋め込んだクソ野郎にぶつかり、次の瞬間そいつは悲鳴を上げ、頭と胸の両方の顔から血を吐いて、もんどり打って倒れた。

 

 !

 頭を圧迫していた何かが消えた! 動ける!

 

「な、あ!」

 

 チュパくんの「ガツン」の余波を受けたのか、混乱するデブたち。

 

「あ」

「あ」

「あっ」

 

 「ガツン」の余波で制御を失ったのか、発射寸前だったデブの火球があさっての方向に飛んでいった。

 咄嗟にチュパくんとリタを脇に抱えて空に舞い、カオルくんとアルテはワシ型コンパクトロンで拾い上げる。

 

「うわあああああああああああああああ」

 

 直径20mを越える火球の爆発。廃糖蜜の樽が破壊され、他の樽も連鎖的に壊れる。あふれ出す黒い液体。中年デブと黒服達が数百万リットルの廃糖蜜の洪水に飲まれ、押し流されていく。

 

「せ・・・せめて上白糖に埋もれて死にたかったーーーーっ!」

 

 中年デブの今際の際の言葉である。

 いや死んでないけど。

 

 

 

「あっ、あっ、あっ、俺達は『騎獣を招来するもの(コールライド)』という組織で・・・異世界から役に立つものを召喚することを研究していて・・・」

 

 例によってペトロワ師匠の頭クチュクチュモンダミン。

 どうやら首都の近くに異世界に繋がりやすい場所があり、召喚の研究をしている術師がいた。その術師を捕らえて研究成果を奪い、チュパくんを召喚したらしい。

 最初に召喚したチュパくんの同族は実験の失敗で死んでしまい、人間の死体と掛け合わせてあの改造人間を作ったそうだ。

 

 取りあえずデブを一発殴ってから、遺体を丁重に埋葬しておいた。

 道ばたの粗末な墓だが勘弁してくれ。

 

 話を戻すと俺の想像は大体当たっていたらしく、テレパシーで過多な情報を送り込み続けていた改造人間を、チュパくんがテレパシーでキャパシティオーバーさせて、精神感応機能を破壊。

 それで負荷がなくなったのと同時にデブが呪文の制御を失ってあの有様というわけだ。

 

 ちなみに一番大変だったのは糖蜜の中からこいつらを掘り出すことだった。

 糖蜜ってさ、砂糖の汁だから冷たくなると固まるんだよ・・・しかも今は真冬だろ? 樽に入ってる間はまだしも、冷たい街路に触れるとあっという間に固まってさ。

 デブが逆さまに両足だけ出してスケキヨ状態になってるのはよほど放置しようかと思ったわ。

 閑話休題(それはさておき)

 

「・・・じゃあ、その人を助ければチュパくんは仲間のところに帰れるの?」

「!」

 

 そうだよな、そう言う事だ。でもリタにとっては・・・。

 

「きゅぴー?」

 

 無意識にだろう、チュパくんを抱き寄せるリタ。

 そんなリタをチュパくんが見上げる。

 

「・・・」

 

 俺達の誰も、それに返事を返すことが出来なかった。




>コンパクトロン
トランスフォーマーのカセットロン。
大体本文通り。
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