異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「ハヤトくん!?」
愕然とした声が、宿舎に連行された俺を見たカオルくんの第一声だった。
ちなみに連行とは言っても縄とかはかけられてない。
「や、ひさしぶり」
あえて軽く返事する俺。
「ヤマブキ」の変装というか変身は解いて、久しぶりに素の姿、服装も召喚された時のジャージ姿である。
「ユリシーズ卿、どうやって・・・」
表情を驚きから戸惑いに、視線を俺から後ろのユリシーズさんに移行させる。
視線を受けたユリシーズさんは僅かに笑って一礼した。
「それについては聞かないで頂きたい。そうですな、我が家秘伝のとっておきの一手とでも」
「・・・」
戸惑いが強くなるが、ユリシーズさんはその視線を笑って受け止めるばかり。
結局カオルくんは無言のまま視線を外した。
「それで・・・王都へ来てくれるのかい?」
「ああ。俺は無実だ。あのクソ王が嘘をついている」
「・・・わかった。大人しくしてくれれば拘束はしない」
悩ましい顔をするカオルくんに、俺は無言で頷いた。
がたごとと揺れる馬車の中。俺はカオルくんと向き合って王都に向かう道を進んでいた。
囚人護送用ではなさそうな普通の馬車で、ちゃんとサスペンションもあれば椅子にクッションもある。これ結構いい馬車じゃないかな・・・?
「・・・」
カオルくんは何か言いたそうな顔で俺を見ているのだが、俺も何話していいかわからない。
座り方を変えるふりをして腰の辺りをさする。
腰というか、意識しているのは下着の感触。
そう、今俺のパンツにはペトロワ師匠の魔法がかかっているのだ。
俺の場所を向こうに伝えるのに加えて、ある程度周囲の状況もわかるらしい。
(理解は出来ますけど何故パンツ!?)
(指輪とか首飾りだと一発で怪しまれるじゃろ。お主自身にかけても同じ事じゃ。下着が一番怪しまれないし、調べられにくいんじゃ)
(うんまありくつはわかった)
りくつわかんのかすげーな。
昨日の自分に突っ込みつつ、溜息をつく。
実際カオルくんの部隊の魔術師っぽい人に探知の魔法かけられても何の反応もなかったみたいだし、ペトロワ師匠の策が図に当たったんだろうが。
(それとも玉石に術をかけて飲み込むか? 一月くらいしたら出てくるようにするが)
(下着でお願いします)
「・・・」
そんなことを考えていると、カオルくんが意を決したように顔を上げる。
「その、陛下は君が《加護》の本当の力を隠していて、送還の儀式の時にいきなり襲いかかって来たって言った。違うのかい?」
そんな所だろうと思ったけど、やっぱりカオルくんもその話には疑問を感じていたらしい。
割と人の言うこと素直に信じちゃうタイプだからなこいつ・・・。
「全然違う。送還の儀式と言われて修道院に連れて行かれたのは確かなんだが・・・最初から送還する気なんてなかった」
「え・・・?」
そこから俺は、修道院で起きたことを簡潔に話した。
連れて行かれたこと、拘束されたこと。送還なんて最初から不可能だったこと。
殺されそうになって《ロボットアニメの加護》が覚醒し、クソ王が白々しい命乞いをしてきたこと。
なるべく淡々と話したつもりだが、どうしても怒りの感情が交じる。
話し終わったとき、カオルくんは愕然としていた。その顔を見て少し気の毒になる。
彼自身は一から十まで善意の人で、誰かを助けたいという思いだけで動いてたんだろうと思うと尚更だ。
「その・・・本当に?」
「嘘をつく理由はないよ。あの時まで俺の《加護》はアニメを見るだけのものだったし、帰れるなら素直に帰るつもりだったし、あの広間で俺は殺されそうになった。
ただデモゴディになった後はクソ王がクソみたいな言い訳するんでかっとなって、その後は覚えていない。気がついたら修道院が吹っ飛んでて、残骸の中で寝てた・・・なんだよ?」
「いや、その、そう言う下品な言葉使うのやめようよ・・・」
困った様に眉をひそめるカオルくん。
上品な奴だなー。よっぽどいいとこのおぼっちゃんなんだろうか。
「で、どっちを信用するんだ? 俺と、王様と」
「・・・"審判の剣"というのがあるらしい」
「うん?」
話を聞いてみると審判の剣というのは争っている二人のどちらが正しいか判定してくれる魔法の剣なんだそうだ。つまり・・・。
「正直君のことは信じたい。けど、君が修道院を破壊して逃げたのも事実なんだ。王都についたら陛下と君を相対させて、この剣を呼び出す。そうすればどちらが正しいか――あるいはどちらも正しいのか、どちらも間違っているのか――それがわかるはずだ」
いつの間にか身を乗り出していたのに気付いて、深く腰掛け直す。
「わかった、それでいいよ」
そう言うとカオルくんは少し意外そうな顔をしてから微笑んだ。
「やっぱり君が正しいのかも知れないね」
「だからそう言ってるだろ」
「・・・」
「・・・」
しばらくにらめっこをしていた俺達だったが、やがてどちらからともなくプッと吹き出した。
「・・・おにいちゃん大丈夫かな」
「うん・・・大丈夫だよきっと」
がたごと揺れるハスキー一座の馬車の中、心細そうにリタが呟く。
それを慰めようとするアルテの声にも力がない。
「何か変事が起きればすぐにわしにはわかる。そう言う術をかけたからの。今奴の近辺に危険は迫っておらん。安心せえ」
ペトロワがフォローするが、それでも少女たちの顔に明るさが戻る事はなかった。
追討部隊が王都へ戻り、ハスキー一座がそれを追う。
チェルブルクからザカリー、サクレア、そして王都ロンドと、俺がこの数ヶ月で辿った道を一ヶ月ほどかけて戻っていく。
その間にカオルくんとはそれなりに話をした。
ゲームとか、漫画とか、学校の成績とか、進学とか、そう言う下らないことをだ。
「そもそもどうして《ロボットアニメの加護》とか出たんだろうね?」
「ウチの親父がオタクでさー。最初に買って貰った漫画がデモゴディの原作だって常々自慢してたよ。産湯をつかったときからの長井轟マニアだって」
「ああ、デモゴディの原作の人だっけ」
「そうそう。子供の頃は夕方になると必ずロボットアニメの再放送があって、楽しみにしてたって。まあロボットアニメの黄金期に生まれて成長した人だからどっぷりはまったんだろうな。
で、そう言う親に洗脳されて俺もそっちにどっぷり浸かったわけ」
どうせならお前みたいに《魔剣の加護》とかかっこいいのが良かったんだがなあ、というと苦笑された。
「僕の場合は・・・剣道やってたからかな? 翻訳ファンタジー小説は、こっちも親が好きだからよく読んでたけど」
話によると、平凡な農夫の少年が実は伝説の王の血を引く生き残りで、燃える魔法の剣を石の王座から引き抜いて邪神と戦う話とかがお気に入りだったらしい。
「なるべくしてなった《加護》ってことか・・・」
「まあ、ロボットアニメ好きなんでしょ? だったらそれはそれでいいじゃない」
「つっても魔剣と巨大ロボじゃ、どっちがファンタジーの世界に似合うかって言ったらなあ・・・」
まあファンタジー世界で巨大ロボが戦うアニメってのもそれなりにあるけどさあ!
「まあいいや、向こうの世界に戻ったらその本貸してくれよ。ちょっと興味がでてきた」
「いいよ。その代わり僕にもその漫画貸してよ」
「オッケー」
そんなことを話して、俺達は王都に入っていった。
「・・・え?」
自分の目で見たものが信じられなかった。
カオルくんの胸から剣の切っ先が突き出している。
後ろからカオルくんを刺したのは彼のお付きの軍曹。
いつも浮かべていた、気の良い笑顔そのままで背中から剣を突き込む。
血を吐いてカオルくんが倒れる。
「・・・!」
玉座の方を振り向いた俺の目に、満面の、歪んだ笑みを浮かべるクソ王の姿が映った。