異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十七話 剣豪談義

 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンッ!

 絶え間なく鳴り続ける剣戟の音、舞い散る火花の結界。

 素人目には姿が霞むほどにめまぐるしく動き続ける二人。

 間違っても余人が介入できる状況じゃない。

 

「ロケットパーンチッ! ビームフリーザー!」

 

 とは言え、他の連中はそこまで化け物じゃない。

 襲撃者が五十人ほど、緑等級クラスが数人いるが、大半は青等級クラス。

 この程度ならガイガーさんがいなくてもどうということはない!

 

「《水生成(クリエイト・ウォーター)》!」

「!?」

 

 オブライアンさんの呪文によって、十人くらいの敵がびしょ濡れになる。

 一瞬戸惑った顔になるが、ただの水と理解して再度襲いかかってくる。

 でも残念、ただの水だけどそれが致命的なんだよなあ。

 

「サンダースウォード!」

 

 剣を水びたしの地面に突き立てて、雷撃を発するカオルくん。

 

「しばばばばばばばばばっ?!」

 

 意味を成さない奇声を上げて、びしょ濡れの男たちが痙攣する。

 電撃使いが相手にいるんだから、それ位警戒しておけよ・・・ってのは酷か。

 

 師匠の眩惑(ぼんやり)の呪文が飛んで、数人を無力化する。効果は数分程度だが、戦闘では永遠に等しい時間だ。

 剣を拾ったシルヴィアさん、アーベルさんラファエルさんは馬車とリタ達を守っている。

 あ、アルテに連続ホームランされて二人ほど空の彼方に飛んでいった。

 

「ロケットパーンチッ!」

 

 そして俺のロケットパンチも次々と敵をなぎ倒していく。

 馬鹿の一つ覚えと言うなかれ、消費は少ないし誘導できるから混戦にも打ち込めるし、青等級程度なら回避不可のスピードと一撃で倒せるだけの威力がある。

 定番は有効だからこそ定番なのだ。

 

「ぬ」

「・・・」

 

 剣戟の音がやんだ。

 灰衣の老剣士が後ろに下がったのだ。

 ガイガーさんもそれを追わない。

 

「撤収! 戦えない者は置いていけっ!」

「!」

 

 老剣士の声が響くなり、今まで闘っていた連中が一斉にきびすを返した。

 見事なくらいに一糸乱れず、街道脇の森の中に飛び込んでいく。

 

「ミサイルラッシュ! 冷凍ビーム!」

 

 追い打ちで何人かを倒すが、それだけ。

 現れた時同様、ガイガーさんと互角の恐るべき老剣士は姿を消した。

 

 

 

「ふうっ」

 

 思わず大きく息をついた。

 真冬の凍りつく大気の中、体から盛大に水蒸気が立ち上っているのがわかる。

 身体はほとんど動かしてないのに。

 それはみんなも同じようで、ガイガーさんと師匠以外の面子からははっきりと白い湯気が立っていた。

 

「恐ろしいね・・・死ぬとこだった。助かったよ、ガイガー」

 

 無言で頷くガイガーさん。

 まがりなりにも緑等級であるシルヴィアさんが、ほとんど何もできずに斬り殺されるところだった。

 間違いなく黒等級(最強)クラスの剣士だ。

 それ以外にも

緑等級が数人、青等級が四十人以上。

 中年デブの襲撃から一週間も経ってないのに、これだけの戦力を用意してぶつけてくるのは並の組織じゃない。

 

「そもそもたかが芸人一座のために、これだけの戦力をかき集めること自体尋常じゃねえ。

 こちらの情報がきっちり伝わってるし、油断や慢心の欠片もありゃしねえ」

 

 アーベルさんの分析にラファエルさんが頷く。

 

「引き際も見事だったのですぞ。

 あと十秒ほど判断が遅れていたら、部下は恐らく全滅していた。

 不利と見るや、倒れた部下を見捨ててあっさり逃亡を選択。

 中々できることではございませんぞ」

 

 同感だ。

 正確には数えてないが、多分二十人以上は逃げてるだろう。

 ガイガーさんと全力で戦いながら、きっちり戦況を見極めて、あれだけの戦力を整えながら不利と見るや即撤退・・・軍隊だとこう言う撤退の判断が一番難しいって聞いたことがある。

 あいつは指揮官としても一流って事なんだろう。剣士としては超一流だ。

 そして部下たちの方も迷わずその指示に従った。かなり練度が高い証拠だ。

 

「ですぞですぞ。

 間違ってもその辺のごろつきや、腕が立つだけの寄せ集めではないのですぞ」

「軍隊みたいってこと?」

「軍隊でも中々こうはいきませんぞ。

 腕利きを集めて厳しく訓練した精鋭部隊と言ってもいいくらいですぞ」

 

 だよなあ。

 カオルくんはどう思う・・・カオルくん?

 

「あ、ごめん。何?」

 

 いや、あいつら練度高かったよなって話。

 傭兵とか冒険者とかじゃなくて、完全に軍隊、それも特殊部隊レベルだったよな。

 

「そうだね。個人単位で言えばユリシーズ卿とかイーサンさんとか決闘クラブの人達とか、もっと強い人はいくらでもいたけど、あんな統率の取れた人達は初めてだよ・・・何?」

 

 いや・・・何でもない。

 俺の事をサトラレとか顔がホワイトボードとか人間電光掲示板とか色々言うが、カオルくんも結構わかりやすいんだよな。

 

「・・・何を言いたいかはわかるけど、それでも君ほどじゃないと思うよ」

 

 サーセンw

 それで何を考えこんでたの? 言いにくいことならいいけど。

 

「言いにくいって程じゃないかな。ガイガーさんと戦った灰色の剣士、いたでしょ」

 

 うん。

 

「ボクが通ってた道場って、実はいわゆる古流剣術の道場だったんだけど・・・」

 

 おお、古流剣術! ロマンを感じる! どこの流派!? 示現流じゃないのは分かるけど。

 

「そう変わったものでもないよ? 剣道の試合じゃ使える技も限られるし」

 

 苦笑するカオルくん。

 まあ素人のミーハー根性に見えるんだろうな、ちゃんとやった人からすれば。

 

「流派は一刀流・・・小野派一刀流と言ってわかるかな」

 

 おお、超正統派!

 将軍家剣術指南の流派じゃん!

 

「あ、結構詳しいんだ?」

 

 時代小説はそこそこ読むからね。

 伊藤一刀斎とか、神子上典膳(みこがみ てんぜん)とか、善鬼とか瓶割刀とか。

 まああくまでフィクションの範疇で、ちゃんとした知識はないけど。

 

「ボクもその辺は時代小説とかで知ってる程度だから大差ないよ。

 まあともかく、あのおじいちゃんの剣がボクの習ってた一刀流に似ていたんだ」

 

 すげえな、あの剣筋見えたのか。

 

「ところどころね。シルヴィアさんの剣を叩き落として、下から跳ね上げた剣なんかはまんま伝書にあるやつなんだよ」

 

 ははー、と感心する俺。

 まあシェイクスピアだの、おにひら犯科帳だの、俺らの先輩方が好き放題してるんだから、剣術流派もいくつも伝わってるんだろうな。

 本物の侍も何人も来てるんだろうし。

 

「確かにの。有名どころだけでもディテクの『白のサムライ』やアグナムの『雷帝』、ライタイムの『見えずの剣のコジロウ』とか、ちょっと考えただけでもポンポン出てくるわい」

 

 そのコジロウさん、ひょっとして名字は佐々木とか言います?

 

「ミヤモト・ムサシと戦ったササキ・コジロウか? 聞いた話では違うようじゃの」

 

 残念。

 でも召喚が400年前からなら、宮本武蔵とか柳生十兵衛とか来てたりしてな。

 そう言うと師匠がぴくりと眉を動かす。何かあるのかな。そう言えば柳生十兵衛ってこの世界では眼帯の下からビームを出す魔法剣士だっけか。

 

「あー、それならボクは千葉周作か男谷精一郎がいいなあ」

 

 カオルくんは幕末派か。中々渋いですなあ。

 それからしばらく俺とカオルくんは剣豪談義に興じ、仲良くシルヴィアさんにどやされたのであった。




>小野派一刀流
作中で言ってる通り、実は柳生新陰流と並んで将軍家剣術指南を務めた流派。
開祖は小野次郎右衞門忠朝(前名神子上典膳)。一刀流開祖伊藤一刀斎の直弟子で、兄弟弟子の善鬼を破って後継者になったと伝わる。
柳生家が一万石越えの大名なのに対して石高は六百石だが、剣術指南に石高はほとんど関係ないので、流派として上下があるわけではない。
そもそも剣術指南は片手間の仕事扱いで、柳生の石高も但馬守宗矩が大目付その他の要職を歴任した上級官僚だったから。小野家も道具奉行などの仕事をしていた。

>千葉周作
幕末の江戸三大道場と呼ばれた神田お玉が池の北辰一刀流玄武館の館主。
神田が学生の街になったのはこの人が原因。カレー屋と古本屋が多いのも割とこの人が遠因。
合理的な教え方と道場経営のうまさでも有名。坂本竜馬や山岡鉄舟、山南敬助などもここの門下。

>男谷精一郎
千葉周作とほぼ同時期の剣士。勝海舟の従兄だが大分年上。
最強かつ人格温厚で礼儀正しい完璧超人。
こちらも稽古の仕方や竹刀の規格などを定めて剣術の発展に貢献し、現代剣道にも影響を及ぼしている。
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