異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十九話 知るは一時の恥 一生知られたくなかった恥

 羞恥の余り、両手で顔を覆って動かなくなるカオルくん。

 だ、大丈夫かな?

 そう呼びかけると、もの凄く冷たい目で睨まれた。

 

「君ね。他人の秘密をこうしてばらすんだから、自分も同じ目に会う覚悟はできてるんだよね?」

 

 あんとくさま、それだけはお許しを!

 一分の隙もない動きで見事なジャンピング土下座を決める俺。

 土下座の恥など、過去の恥をほじくり出されることに比べれば何でもない!

 

「ほほう、見事なドゲザだねえ」

「つまりそれだけの秘密をカオルは握ってるって事か・・・なあ、教えろよ。何を知ってるんだ?」

「それも興味あるけど、どこで知ったかってのも気になるわねえ・・・」

 

 感心するシルヴィアさん、にやにやするアーベルさん、鋭い目のアルテ。

 そればかりは! そればかりはお許しを!

 

「うーん、どうしようかなー。墓の下まで持っていってくれると思っていた秘密をたった今バラされたばかりだしなー」

 

 そこをどうにか! 神様仏様カオル様! 鉄腕カオルの六連投!

 

「君、カオルと同年代だと思うけど古い話知ってるねえ。というか君もオリジナルなんだ?

 オリジナル冒険者族って数十年に一度くらいの話を聞いた気がするんだけど」

「まあ普通はそうじゃが、こやつらはちと事情があっての。

 というかアホやっとるではない。そもそもこの御仁の話を聞くのが先じゃろうが」

 

 そうだそうですその通り! 遠い神代の昔から、お年寄りの言葉には含蓄があると決まっている!

 

「ああ、確かにそうですね。これは失礼」

「とは言えちと気になることもある。お主、いつこちらに? どこに降りたんじゃ?」

「こちらの世界では五十年ほど前でしょうか。気がついたらラデルアの近くにいました。

 あちらではおそらく五年くらい前と言う事になるようですね、カオルの様子を見るに」

 

 死んだ魚のような目をしていたカオルくんが慌てて先生に向き直る。

 

「は、はい、大体そんな感じです。と言うか先生、生きてらしたんですね・・・!」

「ああ・・・」

 

 遠い目になって空を仰ぐ川分先生。

 カオルくんも複雑な表情でそれを見ている。

 何か口を挟めない雰囲気。

 

「ふむ・・・」

 

 しかし、何を確認したかったんだろう?

 視線をやったが、師匠は何も口にしなかった。

 チュパくんにちらりと視線をやる川分さん。

 

「さて、ここへ来た用でしたな。

 その前にお尋ねしますが、あなたたちは我々『騎獣を招来するもの(コールライド)』についてどれだけご存じで?」

 

 シルヴィアさんが師匠と視線を交わし合う。

 

「ろくでもない事をしている組織ってことは知ってるよ」

「でしょうね。

 その子に我々がしたことを考えれば無理もない反応です。

 ピュリティ・・・ノストボでその子を奪還しようとした太った術師ですが、ヤツと出会っていたなら尚更」

 

 アルテやリタの固い顔。多分俺もそんな顔をしてたと思う。

 同じ表情だが複雑な顔のカオルくんが口を開く。

 

「先生は・・・何のためにそんなことを。いえ、そもそもその組織は先生が作ったんですか?」

「そうだ。私が道場で教えていたことを覚えているか?」

「自分を高めるため、大切な人を守るため、そして見過ごせない過ちを正すため・・・」

「そうだ。理不尽な暴力を止めるためにこそ、私たちは強くなければならない。

 だが理想は高くとも、現実の壁は更に高かった。妥協に妥協を重ね、それでも理想は捨てられなかった」

 

 カオルくんが無言で頷く。

 

「迷って、迷って、迷って・・・気がついたらこの世界にいた。

 しかも人並み外れた力を与えられて。

 天啓だと思った。神か何か・・・そういうものがやり直すチャンスをくれたのだと」

 

 ・・・。

 

「人を助けて回った。

 片っ端から。

 弱きを助け、強きをくじく。

 自分がしたかったのはこう言う事だ、これこそあるべき姿だとね」

 

「黒等級にまで駆け上がり、様々な武勲も残した。

 有頂天になっていたと思う。自分には人を助ける力がある、誰かの役に立てると。

 だがそれも所詮幻想だった。オリジナル冒険者族ゆえの力が錯覚させていただけだ」

 

「こちらの世界でも現実の壁は高く、オリジナル一人の力だけでは限界があった。

 公権力や社会も、常に弱いものの力、正しいものの味方ではなかった。

 だんだん、そうした社会の手からこぼれ落ちる人々を助ける事が多くなった。

 気付いたらヤクザの親分みたいなことになってたよ」

 

 ははは、と笑う川分さん。

 いやそうはならんやろ。

 多分みんな同じような感想を抱いていたと思うが、カオルくんなどはかくーん、と顎を落としている。

 

「そ、それでその・・・『騎獣を招来するもの(コールライド)』を?」

 

 カオルくんの震える声。

 川分さんは苦笑。

 

「いや、ある日組織ごと引き抜きを受けたんだ。『騎獣を招来するもの(コールライド)』の傘下に入れ、ってね。

 もちろん突っぱねて、組織同士の全面抗争になったんだが・・・何せほら、相手は召喚した魔獣のたぐいを擁しているだろう? まともに戦ったら勝てないと思ってね、ゲリラ戦に徹した」

「げりらせん?」

「正面から戦わないで、相手の不意を突いたり森に隠れたりして戦う戦法のことさ。

 まあ小人族(おれたち)の為にあるような戦い方だ」

 

 アーベルさん解説アザーッス。

 確かにこの人たちゲリラ戦やるために生まれてきたような種族だよなあ。

 霊猿妖精(ヴァナラ)も森林戦なら鬼みたいに強いって聞いたけど。

 

「そうそう、そんな感じだ。とにかくゲリラ戦に徹して情報集めに集中してね。

 相手の本拠地が分かったところで私が単身斬り込んだ。

 首領も武闘派の幹部も大体斬り倒して制圧してね・・・その後も色々ごたごたがあって・・・どういう訳か『騎獣を招来するもの(コールライド)』の首領になってた」

 

 だからそうはならんやろ!

 というか、この人結構ポンコツなんじゃ・・・?

 

「チュチュー」

「きゅー」

「ははははは」

 

 ハムリスどもやチュパくんですら疑わしげな視線になる中、川分さんはにこやかに笑っていた。

 

 

 

「それで結局お主は何しに来たんじゃ。昔話と身の上話が目的か?」

 

 あ、師匠も呆れた声になってる。

 

「おっと」

 

 川分さんが居住まいをただす。

 

「まあ色々問題はある組織だが、私は何とかその力を善きことに向けようと努力してきたつもりだ・・・カオル」

「は、はい」

 

 突然声をかけられて、思わずカオルくんが背筋を伸ばす。

 

「『騎獣を招来するもの(コールライド)』に来ないか?」

「!?」

 

 唖然とした顔。

 周囲の俺達も同じ表情。

 川分さんはじっとカオルくんを見る。良く見たらこの人、老人ではあるがかなり端整な顔立ちだな。カオルくんの記憶の中で見たのは40くらいの時の彼だが、若い頃はさぞかし美形だったろう。

 

「さすがに私ももう歳だ。オリジナル冒険者族の寿命は常人より長い傾向があるが、それでもそう何十年は続けられないだろう――私の後継者に・・・」

「お断りします」

 

 俺達が何かを漏らすより前に、カオルくんがきっぱりと断った。

 川分さんの少し驚いた顔。

 

「理由を聞いてもいいかな」

「・・・」

 

 少し考えてカオルくんが口を開く。

 

「多分先生の言ったことに嘘はないと思います。

 理想と現実の間で、妥協しなきゃならない時があるのもわかります。

 でも・・・それでもこの子をこんな目に会わせるような組織に、ボクは所属したくありません」

「そうか」

 

 おだやかに、にっこりと川分さんは笑った。

 

「それでは失礼します。お嬢さん、預けた剣を」

「あ、ああ」

 

 シルヴィアさんから剣を受け取ると、川分さん・・・ライゾムは一礼して去っていった。

 




>あんとくさま、おゆるしを!
諸星大二郎「海竜祭の夜」より。
ちょっとグロイので検索する向きは自己責任で。

>神様仏様カオル様! 鉄腕カオルの六連投!
鉄腕・稲尾和久。西武ライオンズの前身の前身である西鉄ライオンズの伝説的投手。
巨人との日本シリーズ七戦中、第二戦を除く六戦に登板、チームは三連敗の後四連勝の大逆転勝利、五戦目では自らサヨナラホームランと、当時のファンの脳を盛大に焼いた。
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