異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十三話 限りない過ち(主にハヤトくん)

「ストライクバッターアウッ! チェンジッ!」

 

 カオルくんの鋭いスイングが空を切った。

 完全にジャストミートのコースだったのに、直前で直角に軌道変えるのおかしいでしょ!?

 

「へっへっへ」

 

 それをやった敵ピッチャーは尻から酒瓶を出して(ホラあれだ、アメリカの映画で時々尻ポケットに入ってる金属製の小瓶)ぐびぐびとやる。

 

「シカリ、ほどほどにしとけよ!」

 

 ベンチに戻っていく選手から、笑い混じりの制止が飛ぶが、ひょろりヤクザは意にも介さない。

 

「なぁ~に、オレさまはちょっと酔ってた方がいい球が投げられるのよぉ~」

 

 へらへらと笑ってベンチに戻っていくシカリ。

 うーむ・・・カオルくん、あの球どうだった?

 

「完全に捉えたと思ったんだけどなあ。普通に振ってたら打てないよあれ」

「《見えざる手の加護》などと呼ばれるたぐいの《加護》じゃな。要するに念動の術の《加護》版じゃが、かなり鍛えておる。対策無しではガイガーでも辛いじゃろう」

 

 やっぱその手のあれかあ。ピッチャーで使ったら無敵だな。

 「投球だってスタンドなんだぜぇ~。甘く見ていたあんさんたちが悪いのよぉ~」とか言いそう。

 

「どうする? ばあさんの魔法解除の術でどうにかしてもらうとか」

「本人ならともかく、横から介入したら試合妨害になるのう」

 

 《加護》でズルするのは認められてるのになあ。

 

「まあ、そうでなければ結局は『応援団』同士の武力勝負になってしまいますですぞ」

 

 それはそうか。

 

「ついでに言うなら、《加護》や魔法も、自分やバット、ボールにかけるのは認められても、グラウンドや相手の選手に直接かけるのは認められておらん。

 そのへんは法神の司祭殿が注意していたと思うが」

 

 まあその辺は分かるんだけどね・・・

 ならこう言うのはどうだろう?

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 アイデアを話し終えた時、その場の全員がドン引きしていた。

 

「悪魔かアンタは」

「おまえさん、悪党になれる才能があるねえ」

「詐欺師の手法だよね」

 

 卑怯だろうとハッタリだろうと、中身がなかろうとなあ、勝ちゃあいいのよ、世の中は!

 大体あっちの投球の方がよっぽど卑怯でしょうが!

 

「まあそれはそうね・・・」

 

 とは言えこれは遅効性だ。他にもやれることはやっておこう。

 

「ですぞですぞ」

 

 

 

「77(セブンティセブン)マグナームッ!」

「ぐわーっ!」

 

 バットが粉々に粉砕される。その余波できりもみ、倒れ込む相手チーム四番。

 

「ストライクバッターアウッ!」

 

 俺のオイルが沸騰するぜ!

 しかしこいつさすが四番だ。最後には俺の77マグナムにちゃんと合わせてきた。

 こいつ以外も慣れてくるだろうし、次の打順以降はいくらか考えないとな・・・

 敵の五番はバットに竜巻をまとわせる風の《加護》の使い手、六番は獣人変化してきたが、いずれも77マグナムで押し切った。

 

「ストライクバッターアウッ! チェンジッ!」

 

 まあまだ二回表だ。次は俺達のターン!

 二回裏は俺の打席からだ!

 

「へへぇ~。アンタ凄い球投げるじゃないの。でもオレの球もすげぇよぉ?」

 

 ニヤニヤしながら、金属瓶の酒をぐびぐび。

 舐めるなよ。貴様の投球を破る策は108式まであるわ! 口から出任せだが。

 

「ほほぉ~。それじゃ見せて貰おうじゃあねえのぉ~」

 

 にまぁ、と笑って酒瓶を尻ポケットに。振りかぶって投げ・・・

 

「無窮(パンチ)!」

「ぬわにぃぃぃぃ!?」

 

 奴の手からボールが離れた瞬間、バットを握る俺の両腕が伸びる。

 無限に伸びる拳、「轟世のアーシリオン」主役メカ・アポロアーシリオンの必殺技無窮(パンチ)

 それを野球に応用した、どこまでも延びる腕での打撃、無窮打法だ!

 

 奴の手からボールが離れた瞬間、ピッチャーマウンドまで延びた俺のバットがそれを叩く。

 このタイミングでは奴の《見えざる手の加護》も無意味!

 かきーん、と快音がして白球が宙に飛んだ。

 

 

 

 いったーっ!

 これは紛れもなくホームランコース!

 地球一周どころか月まで叩き付けられる勢いのパンチだ!

 俺が使っても1キロの高さのサイコロ岩てっぺんにまで届く威力はある!

 たかが百数十メートルのグラウンドくらい、物の数ではない!

 

 そう思っていた時期が俺にもありました。

 日本やアメリカのスタジアムならバックスクリーン直撃どころか楽々越えて行く場外ホームランコース。

 ふ、勝ったっ! 

 フラグを立てた瞬間、敵のセンターの背中からばさり、と灰色の翼が広がる。

 

「くけぇーっ!」

 

 そのままシッカー怪人みたいな奇声を上げつつ、凄い勢いで急上昇して、俺のホームランはあっさり捕球された。いつの間にか、顔や手も鳥のものになっている。これが本当の怪鳥音やな!なんて言ってる場合じゃない!

 

「《獣の加護》じゃな。これもまた、あそこまでのレベルはそうはおらんぞ」

 

 ホームラン妨害で飛行キャラ用意するとか、ホントガチで勝ちに来てんな川分さん!

 

「ば・・・バッターアウッ!」

 

 何とかアウト宣告を出した審判さんの声を聞きながら、俺はベンチに戻っていった。

 そして次の打席。

 しん、と応援席も互いのベンチも静まりかえる。

 敵ピッチャーもへらへら笑いを引っ込めた。

 

 何せガイガーさんである。

 俺の知る限り世界最強の男。ガチでやり合えるのは川分さんくらいのものだ。

 握るのが剣ではなくバットであっても、その「格」はわかるのだろう。

 唇を舐めて振りかぶり・・・第一球、投げた! ガイガーさん振った!

 

 はええ! 見えねえ! 見えないスイングだ!

 それでも奴の変化にはついていけず空振りだったが、「チリッ」とバットとボールがこすれる音が確かに聞こえた。

 ピッチャーの頬を一筋の汗が伝う。

 奴の球をガイガーさんが捉えた。それが奴にも分かっている。

 

 二球目。

 今度はファウルチップ。

 バットがボールにかすり、キャッチャーの顔面に当たる。

 それを何とか捕球するが、ピッチャーの汗は二筋に増えた。

 迫っている。ガイガーさんという虎の牙が、ピッチャーの喉元に。

 

「落ち着け! 一人塁に出したところで問題はない! まだ二回だ、焦らないでいいぞ!」

「わ、わかってますよぉ~!」

 

 ベンチの川分さんの声に頷きつつも、尻酒瓶(ヒップフラスク)をぐびぐびとラッパ飲みする投手(シカリ)

 

「ぷふうっ・・・」

 

 酒瓶を尻ポケットに戻し、目を閉じて集中する。振りかぶって・・・投げた!

 

「!」

 

 その瞬間、本当にガイガーさんのバットが消えた。

 「軌跡を捉えられない」レベルだったスイングがマジで見えなくなり、ガイガーさんの体がぶれる。

 でかい石をハンマーでブッ叩いたような音が響いた。

 一瞬遅れてショートのユニフォーム脇腹がはじけ飛び、彼の後方で地面が炸裂する。

 

「外野っ! 捕球しろ!」

 

 一瞬固まりかけたハンニバルズのメンバーに、川分監督の鋭い叱咤が飛ぶ。

 へたり込みかけて、何とか立ち上がるショート。捕球に動くレフト。

 その時、ガイガーさんは既に一塁を回っていた。

 

 しかしあちらも早い。レフトからサードに球が返り、結果はツーベース。

 それでも奴を真っ正面から攻略したことの意義は大きい。

 ファイアーボールズベンチと応援団(当然だが地元住民なので全員ファイアーボールズ応援だ)から大歓声が上がった。

 

「うおおおお!」

「ファイアーボールズー!」

「どんどん!」

 

 それはそれとしてなんだろうね、この「どんどん!」って。祭りのお囃子みたいなもんかしらん。





>投球だってスタンドなんだぜぇ~
ジョジョ第三部のホル・ホース。
スタンド弾丸の軌道を「  ̄∪ ̄ 」型に曲げてシルバーチャリオッツの剣を回避させた時のセリフ。
なおこれと同レベルの軌道変化を何の超能力も無しでやらかすのが「巨人の星」の星一徹・飛雄馬親子である。

>卑怯だろうとハッタリだろうと、中身がなかろうとなあ、勝ちゃあいいのよ、世の中は!
「オーバーマンキングゲイナー」の小悪党キャラ、ケジナン・ダッドの名セリフ。
何がいいかって、紛れもない事実だと言うところw

>俺のオイルが沸騰するぜ!
「疾風!アイアンリーガー」より。
同作品を象徴するセリフの一つ。

>108式まで
テニスの王子様より。
テニスに逆転ホームランはねえ!→デュークホームラン!のコラはもはや芸術。

>見えないスイング
「巨人の星」より。
飛雄馬を倒すべく一徹が用意した助っ人外国人オズマの必殺技。
肉眼で見えないほどスイングが速いので、「相手のバットに故意にボールを当ててアウトを取る」魔球、大リーグボール一号を「いったんストライクゾーン真っ正面でバットを止め(この時点で大リーグボール1号の軌道が確定)、再度フルスイングする」ことで無効化した。
地味に飛雄馬の魔球その他よりよっぽどブッ飛んでると思う。

>どんどん!
元ネタは「ダイナマイトどんどん」という奇才・岡本喜八のヤクザ野球映画。
ヤクザがショバ争いを野球で解決する話で、その中での応援のかけ声が「どんどん!」。
ホントに古典ヤクザ映画そのままのノリ、かつ昔のヤクザ映画で主役張ってるメンツが大まじめに演じてるので、知ってると笑いが止まらない。
ヤクザ丸出しの菅原文太(ワンピの赤犬)と田中邦衛(同黄猿)が、バッターボックスとピッチャーマウンドで対峙するだけで面白すぎる。
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