異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十四話 俺の血液がフットーするぜ!

「ストライクバッターアウッ!」

「くーっ! くやしいっ!」

 

 三球三振したアルテがバットを地面に叩き付ける。

 いくら師匠が強化魔法かけてるからって、道具を粗末に扱っちゃあかんよお嬢さん。

 

「わかってるけど・・・」

 

 あの後多少球は乱れたが、ガイガーさんでようやく攻略できたものを、こう言っちゃ何だが俺らが真っ当に攻略できるわけがない。残念ながら当然の結果である。

 ただ、それならそれでやりようはある。

 

「ファウル!」

「!」

 

 ツーストライクに追い込まれてからの三球目、ラファエルさんがバットに当てた。

 打球は高く跳ねて、サード方向のファウルゾーンに転がっていく。

 

「うおー!!!」

 

 観客から歓声が上がる。

 ファウルながら、またしてもあの念動魔球をミートしたのだ。それは盛上がる。

 これが俺の策の三つめ、大根斬りファウル粘り戦法である。まんまだな。

 ネーミングをもうちょっとひねれ? いいんだよ、わかりやすさ優先だ!

 

 つまりだ。シカリの念動魔球は上下左右にコースを変える。

 変えはするが、その一方で俺の77マグナムみたいな常識外の速度はない。

 最高速でも多分180kmくらい。

 日本のプロ野球ならそれだけで魔球レベルの球速だが、常識外の超人がゴロゴロしてるサイモックではそこまでではない。

 それ以上だと《加護》による軌道変化がうまく行かないのかもしれないが、それはさておき重要なのは、三次元空間をピッチャーからキャッチャーまで移動する以上、奴の軌道変化は上下左右のみ、極論すれば一枚の平面に限定される。

 つまり180km/時で目の前を通過するボールに垂直にバットを振り下ろして当てることができれば、上下左右どこに変化しても、バットの軌道という平面の上に収まるわけだ。

 

 我ながら無茶なアイデアだとは思うが、ラファエルさんはそれを実現してくれた。

 このまま大根斬りでファウルを連発して粘って、相手のスタミナを浪費させる。

 あわよくばヒットで塁に出られるかもしれない。そう言う作戦だ。

 

 相手ピッチャーの顔が歪むのが見える。

 ガイガーさんならまだしも、侮っていた下位打線に当てられるとは思わなかったのだろう。

 尻から酒瓶を取り出して、しきりにグビグビやっている。

 

「それにしても・・・理屈は分かるけど、良く当てられたわねえ」

 

 ラファエルさんは武道家としての経験と下地があるからな。

 純粋な身体能力では一座の中でも中の下というところだろうが、相手の動きを見る目と身体操作技術に関しては一級品だ。

 言わばミート重視のアベレージヒッター。

 アルテみたいな長打力はないが、当てることに関しては極めて優秀だ。

 アーベルさんほどではないにしろ、人間よりかなりストライクゾーンが狭いのもこの際有利に働く。

 

「ファウル!」

 

 空振りしてアウト、チェンジになるまでラファエルさんは七球粘った。

 残念ながらガイガーさんは残塁である。やっぱ俺を四番にしたのが間違いだったかなあ・・・。

 

「おつかれー」

「ドンマイ、いやむしろ良くやった!」

「何、さほどのことはなかったのですぞ」

 

 ただ、最後の方は上下左右じゃなくて前後の変化、つまり球速を速くしたり遅くしたりする方に《加護》を使ってましたよね?

 

「ですぞですぞ。

 中々順応が早いですぞ」

 

 ただの《加護》頼りじゃないってことだな。

 そうである方がこっちとしては楽だったが・・・

 まあ、それは次の回の問題だな。

 まずはこの回の守備だ、しまっていこう!

 

「おーっ!」

 

 

 

「77マグナムっ!」

 

 ミットに収まる白球、衝撃波で吹き飛ぶ敵打者。

 

「ストライクバッターアウッ! チェンジ!」

 

 三回表も三者凡退。

 まあ相手も789番の下位打線だし妥当なところである。

 9番ピッチャーのシカリは《見えざる手の加護》で77マグナムの速度を遅くしようとしてたようだが、奴の《加護》は精密性は高いが純粋なパワーに関しては俺の77マグナムの足元にも及ばない。

 ただ、相手も無策のままってことはないだろうし、何かやってくるのは考えた方がいいだろうな。

 

 

 

 三回裏、こちらの攻撃はオブライアンさんから。

 ふらふらしながらシカリがピッチャーマウンドに上がる。

 

「おい、大丈夫か?」

「だぁ~いじょうぶですってぇ。俺がフラフラしてるのはいつものことでしょぉ?」

 

 川分監督から声がかかるが、シカリは意にも介さない。

 バッターボックスのオブライアンさんに向かって振りかぶり・・・投げた!

 よっしゃボール!

 大暴投になりかけたそれを、キャッチャーが慌てて立ち上がって捕球する。

 

「どうしたどうしたー!」

「ピッチャーどうした! タマついてんのか!」

「タマとバットは男の証ってか、HAHAHAHA!」

 

 じゃっく はぶ あ ばっと あんど つー ぼーるず!

 下品なヤジが飛ぶ中で、川分さんの眉間の皺が深くなる。

 

「おいどうした、シカリ! 飲み過ぎだぞ!」

「だぁ~いじょうぶですってえ。俺がこの程度の酒でどうにかなるわけないでしょ」

 

 ごくごくごく。

 中身を全部飲み干して、瓶を足元に放り投げる。

 振りかぶって・・・ストライク!

 オブライアンさんの大根斬り打法を避けて、ボールがミットに収まる。

 オブライアンさんはそのまま3ストライク1ボールで凡退。

 次のカスタさん、アルボルチの元締めが出てくる。

 一つの都市を切り盛りするヤクザの親分だけあってそれなりには強いのだが、何せ60近いお年でかつ傍から見てもわかるくらい丸い体型。

 

「ファイアーボールズー」

「どんどーん」

 

 心なしか応援にも力がない。

 まあ期待されてないわな。そうでなければ九番になんかしないし。

 

 ピッチャー振りかぶって・・・ボール!

 いいぞ、カスタさん振らなかった!

 ナイス判断!

 

「うおー!」

 

 歓声が上がる。今まで完璧なコントロールを徹底していたシカリが二打席続けてボール。これは確かに盛上がる。

 川分さんは無言で腕を組んでいる。

 

「かっとばせー! カスター!」

「根性見せてみろー!」

 

 お、応援もちょっと熱が戻ってきた。

 シカリ振りかぶって第二球・・・

 

「ボール!」

「!?」

「うおおおお!」

 

 審判の声が響く。

 観客席は更に大盛り上がりだ。

 

「おい、どうした?」

「シカリ!」

「おんどりゃナニしとんねん! 指ツメさせんぞコラァ!」

「野球のボールくわえさせて打撃練習に使ったろか!?」

 

 逆にハンニバルズベンチは困惑にどよめいている。どよめくと言うには物騒な声もあるが・・・

 シカリは何も答えず、戻ってきたボールを手に、三度振りかぶって・・・

 

「ぎゃっ!」

 

 ヘルメットが飛び、カスタさんが倒れた。




>じゃっくはぶあばっとあんどつーぼーるず!
90年代初頭、SSKという野球用具メーカーのCMより。
野球少年たちがこう叫びながら素振りする絵面だったが、ちょっと下品じゃないかなあw
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