異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十五話 44ソニック・オン・サンダー

「きゅう」

 

 死球を受けて大の字に転がるカスタさん。

 デッドボール! テイクワンベース!

 男を見せたぜカスタさん! あなたの死は無駄にはしないぞ!

 

「いや生きてるからね!? 勝手に殺しちゃだめだよ!」

 

 あなたの事は忘れない。

 カスタさんは生きている、俺達の心の中に・・・

 

「だからー!」

 

 カオルくんとコントしてる間に、師匠の呪文で回復したカスタさんが一塁に進塁する。

 シカリと他のメンバーの間でちょっと言い争いが起きているが、くくく、貴様らはもはや我らの術中よ・・・。

 

 まあ実のところ大した事をしたわけではない。

 シカリの酒瓶の中の酒に、師匠が《蒸溜(ディスティル)》の呪文をこっそりかけて、アルコール度数を上げただけだ。

 別に毒入れた訳じゃないもんね! 試合中に酒飲んでる奴が悪いんだもんね!

 シルヴィアさんなどには悪魔呼ばわりされたが、俺は悪くない。

 そうだろう?

 

「悪い顔してる・・・」

「よくもまあこんなあくどいことを考えつくもんじゃ」

「どっからどう考えてもお前が悪いが、まあ相手もえげつないからトントンってとこかね」

「何かの拍子で悪の道に踏み込んだら後が怖いのですぞ」

「きゅー」

 

 しょーがねーだろ! ガイガーさんでもなきゃあんなの攻略できねーよ!

 球技で念動力使われたら、まともにやったら勝てんわ!

 なのでまともじゃない戦術を使います。

 カオルくん、わかってるね?

 

「わ、わかってるけど・・・ホントにやるの?」

 

 顔が引きつってるカオルくん。

 やるんだよ! チュパくんのためだぞ!

 

「わ、わかってるけど・・・わかったよ! もう、本当に強引なんだから・・・」

 

 少し顔を赤らめるカオルくん。

 こんな時でなんだがちょっとかわいい・・・ぐふっ!

 

「何鼻の下伸ばしてんのよ!」

 

 肘はひどいよアルテさん・・・

 

「自業自得だろ」

 

 あ、シルヴィアさんとアーベルさんもよろしくお願いします。

 どっちか一人でいいので、何とか塁に出て下さい。

 

「りょーかい」

「まあ、やってみるさ」

 

 軽く請け負う二人だが、今はその軽さも頼もしい。

 その後打順が一番に戻り、アーベルさんがなんとセーフティバントで出塁。カスタさんも二塁に。

 次の打席、シルヴィアさんが大根斬り打法で見事にボールの真芯を捕らえ、ホームベースに跳ね返って空高く白球が舞う。フェアだ!

 

 ボールが落ちてくるまでの間に(カスタさんはちょっと危なかったが)三人がそれぞれベースに走り込む。

 ここで満を持して、三番カオルくんの登場だーっ!

 

「キャー! カオル様ーっ!」

「ステキーッ!」

「ファイアーボールズー!」

「どんどんっ!」

 

 一斉に上がる黄色い声。

 カオルくんじゃなければジェラシーで狂いそうになっていただろうな!

 俺は手品に感謝している。芸人にならなければ嫉妬仮面になっていただろうから・・・

 

「え・・・」

「あれ?」

 

 だが、その黄色い歓声もカオルくんがバッターボックスに入ると戸惑いの声に変わる。

 向こうのベンチでは「こいつマジか」って感じで目をひんむいてる奴もいる。

 まあそれも当然だろう。

 何せカオルくんの持っているのは黄金の象嵌が施された黒い剣。

 彼女の愛剣にして伝説の黒騎士姫の魔剣、サンダースウォードである。

 

「・・・あの、それは?」

 

 狂人を見る目の審判氏。

 

「バットです」

「いや、しかし・・・」

「・・・バットです!」

 

 カオルくんの顔がちょっと赤い。

 審判が困った顔をして相手ベンチを見る。

 視線を向けられて肩をすくめる川分さん。

 

「・・・プレイ!」

 

 溜息をつくと、審判さんはゲームを再開した。

 

「タイム!」

 

 ととっ?!

 ピッチャーシカリ振りかぶって・・・のタイミングで川分さんがタイムをかけた。

 シカリがベンチに連れて行かれて、何か術をかけられてる。

 しばらくして戻ってきたひょろりヤクザの、顔の赤みが大幅に薄れていた。

 

「《解毒(アンティドート)》の呪文じゃな。

 さっきあちらの若いのが走り出していったから何かと思ったが、医神(クーグリ)の司祭を呼んできたんじゃろう」

 

 あー、気付かなかったわ。

 さすが川分さん、敵ながらこう言うところもそつない。

 

「や~れやれ、しばらく禁酒言い渡されちまったよぉ。

 けど、もう俺の投球に隙はないぜぇ~。

 何のつもりか知らないけど、そんなものを持ち出して来てもかすりもしないよぉ~」

 

 自信満々に肩をグルグル回すシカリ。

 だがもう遅いのだぜ。

 今バッターボックスに立っているのは、お前の天敵だ。

 シカリ、自信満々に振りかぶって・・・

 

「ちょいなっ」

 

 !?

 

「っ」

 

 カオルくんが上体をそらす。

 その顔スレスレをホップした白球が通り過ぎ、身を翻してキャッチャーミットに収まった。

 この野郎・・・狙いやがったな。

 

「ピッチャー! 次にやったらビーンボールを取るぞ!」

「へへぇ、すいませんねえ。まだ酒が抜けきってないらしいや」

 

 厳しい声で指を突きつける審判。

 シカリはのらりくらりとそれをかわす。

 

「ふうん」

 

 あ。カオルくんの目の色が変わった。

 怒らせると怖いぞ、彼女・・・

 ボールがピッチャーに戻る。

 再びサンダースウォードを構えるカオルくん。

 ばちり、と稲妻が走った。

 

「!?」

 

 稲妻はあっという間に刀身全てを覆い尽くし、周囲の空気を帯電させる。

 

「・・・」

 

 シカリはゴクリとつばを飲み、それでも振りかぶった。

 足を上げるその動きにはさすがと言うべきか、動揺はない。

 

「娘さん、そう言うこけおどしはよくないねえ。

 おじさんには通用しない・・・よっ!」

 

 投げた。

 白球が疾る。

 見えざる手に操られた魔球を待ち構えるは雷神剣。

 

「どれだけ雷が強くたって、俺の《見えざる手》は切れないよぉ!」

 

 その通り。普通の稲妻ならな。

 だがこれは破魔を司る雷神の力宿りしサンダースウォード。

 同じ神の力でもなければ、《加護》だろうと古代の術式だろうと、あらゆる神秘を打ち砕く!

 

「ぬぁにいっ!?」

 

 雷撃が閃き、白球に絡みつく。それと共に驚愕の声。

 ボールを掴んでいた自身の《加護》が打ち消されたのを感じたのだろう。

 恐るべき念動魔球も奴の《加護》がなければ、多少早いだけの棒球。

 次の瞬間、鋭い金属音を響かせて、サンダースウォードが思い切り白球を叩いていた。




>俺は手品に出会ったことに感謝している~
「オレは音楽に感謝している ミュージシャンにならなければ猟奇的殺人者になっていたから」
「デトロイト・メタル・シティ」のヨハネクラウザーII世の名セリフ。
デスメタルバンドのマイクパフォーマンスなのだが、豹変した後のクラウザーさんより、素の根岸くんのほうのヤバさが分かってくるにつれ、「これ単なる事実じゃね?」となってくる奥の深い一言。

>嫉妬仮面
ガンガン初期の名作?「突撃パッパラ隊」の名キャラしっとマスク。
まあ大体名前通りの存在。
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