異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十六話 自らに頼む、それが超人だ

 鋭い打撃音と共に、打球がショート脇を抜ける。

 センターとライトの間を鋭く跳ねたゴロがグラウンド奥の柵に当たって止まり、鳥人化したセンターがそれに飛びついてバックホーム。

 だがそれが戻ってくる直前に、シルヴィアさんがホームベースを踏んでいた。

 走者一掃のスリーベースヒット!

 

「タイム!」

 

 キャッチャーがタイムをかけると、内野手がピッチャーのもとに集まる。

 フォローすんのか、こっちでもそう言うのは変わらないのな・・・

 

「オラァッ! 気合入れんかいっ!」

「げふうっ!」

 

 殴ったーっ!?

 そのまま内野手全員にボコられるシカリ。

 唇が切れ、たらりと血が伝った。

 

「オラァ、気合い入ったかコラー!」

「おう入ったぜドラァ!」

「ならこれ以上イモ引くんじゃねえぞオラー!」

「やったろうじゃねえかコラァ!」

「タマ取ってこいや!」

「ナンダオラー!」

 

 もはや半分くらい意味のわからないヤクザスラングの応酬。

 最初の殺気だった雰囲気とは打って変わり、笑顔で乱暴にシカリの肩や背中を叩いて、それぞれが守備位置に戻る。

 俺達は今何を見せられていたんだ・・・?

 垂れた血を袖でぬぐい、シカリが笑う。

 

「へっへぇ。気合が入ったからねえ。

 もうあんさんはもちろん、あの怖ぁいおっちゃんにだって一球たりともかすらせはしないさぁ」

「・・・プレイ!」

 

 俺がバッターボックスに入り、審判がプレイ再開を告げる。

 

「行くぜ小僧ぉ! 同じ手が二度通用すると思うなよぉ!」

 

 凶悪な笑顔。振りかぶって・・・投げる!

 だが遅い! それに無窮打法を使う気もハナっからない! お前の言った通り、同じ手は二度通用しない。種が割れれば、手品はそこで終わりだ!

 

「マグネティック・フォース・オンッ!」

「っ!?」

 

 俺の胸から放たれる稲妻。

 カオルくんのそれが全ての魔術を打ち砕く破魔の雷光なら、こちらはあらゆるものを捉えて逃さない磁力の爪!

 

「ひ、引き寄せられるぅ!?」

 

 鋼身ジークフリートの磁力光線。敵を引き寄せ、鯖折りで破壊するジークフリート・ブレーカーに繋げる前ふりだが、今度の敵は野球のボール。

 何しろ巨大な亜竜ですら捕らえて放さない磁力線だ。精度は高いがパワーはさほどでもないシカリの《加護》ではこれに抗し切れない。

 

 そして俺の手に持つ木製バットが、黒く金属色に染まっていく。

 俺が今この体に宿すもう一つの力。

 身長200mの巨体から繰り出される打撃、エネルギー球をバットで彼方に飛ばす技。

 その名は――

 

「ブラスターホームランッ!」

 

 磁力線に引っ張られ、ストライクゾーンど真ん中に飛んでくる白球をジャストミート。

 それより一瞬前。

 視界の端に、セカンドが風をまとって飛び、センターに向かうのが見えた。

 セカンドはあの、風を操る五番バッター。

 恐らくは既に鳥人化しているセンターの援護だろう。判断が速い! だが甘い!

 

「クケエェーッ!」

 

 ミートと同時に風をジャンプ台にして鳥人が飛ぶ!

 これなら俺の打球でもキャッチが間に合うだろう。だが!

 

「ブラスターホームラン・プラスッ!」

 

 ミートと同時にボールが光に包まれ、バットもまた光を放った。

 そのままバットが分解し、ボールと見分けの付かない七つの光球となって彼方へと飛ぶ!

 

「ケェェエッ!?」

 

 さあ、どれが本物だ! 貴様に分かるか!?

 これぞ10月りゅう座流星群打法、またの名を・・・

 

「ジャコバン流星打法!」

「キェェェエェェッ!」

 

 それでも鳥人は一つをグラブで、一つを素手で、もう一つを体で止めた。

 骨が砕け、グラブが四散する。

 しかし、彼の文字通り超人的努力もそこまで。

 本命の白球は他のバットの破片と共に空の彼方に消えていく。

 

「ケェ・・・」

 

 力尽き、そのまま地上に落下する鳥人を、セカンドが風を操って受け止める。

 

「ほ・・・ホームラン!」

 

 主審の判定が響き、大歓声が轟いた。

 

 

 

「おっしゃあっ!」

「よくやった!」

 

 ホームに戻ってきた俺を、チームメイトの手荒な祝福が出迎える。

 俺より先に戻ってきていたカオルくんもだ。

 一方で相手センターは抱えられてベンチに運ばれていく。

 胴体で止めたバットの破片、割と危ないところに当たってたからな・・・

 どれが本物のボールか誤魔化すために、ボールやバットの破片をエネルギーでくるんでいたが、あれは本来破壊力を増すためのものだ。

 素手で捕った右手はもちろん、グラブで捕った左手も無事では済むまい。

 

「回復するでしょうか?」

医神(クーグリ)の司祭殿の腕次第じゃが、あれだけの威力、骨は逝っておろうな。

 治療できたとしても、まず完全とはいかんじゃろうよ」

 

 師匠が埒外すぎるだけで、本来骨折の治療や臓器の再生などは魔法を使っても数時間から一日、ものによっては数ヶ月はかかるのだそうだ。

 さすがにこの試合の間に復帰はできまい、しても以前のようなパフォーマンスは発揮できまい、というのが師匠の見立て。

 

 とは言え試合はまだ三回裏。

 ホームランキャッチャーは葬らん!したが、ショックを受けてはいるもののシカリはまだ健在だ。

 酔いどれ天使作戦が露見した以上、カオルくんと俺とガイガーさん以外は奴の球を捉えるのは難しいだろう。

 ラファエルさんやアーベルさんに大根斬りファウル作戦で投球数を水増しして貰い、クリーンアクトリオ、もといクリーンアップトリオの三人で何とか点を取るしかない。

 

 むしろ問題は俺である。

 さっきのジャコバン流星打法、実は原作アニメにある技ではない。

 ブラスターホームランは存在するし、ジャコバン流星アタックという必殺技が明らかにジャコバン流星打法モチーフなのだがそのものではない。

 「明らかに元ネタだろう」ってことで組み合わせたが、本来存在しない技を再現して、体にも消費魔力的にもかなり負担がかかっている。

 このまま最後まで完投できるかどうか・・・。

 

「魔力については心配するな。カスタ殿の若い衆からありったけ搾り取れば、この一試合くらいは持つじゃろ」

「ちょ、ちょっと何するつもりだ、そこの魔女!?」

「勝ちたいんじゃろう? なあに、しばらく足腰立たなくなるだけじゃよ」

 

 ふぇっふぇっふぇ、と邪悪な笑みを浮かべる師匠。

 カスタさんは冷や汗を流しながら沈黙。

 まあしょうがないね! 譲れない戦いだからね!

 あ、川分さんが出てきた。審判と何か話してる。

 

「・・・良いのですか? 儀式は無効にはなりませんぞ?」

「わかっております」

 

 審判が頷いて手を上げた。

 

「この試合! ヌスタァダム・ハンニバルズの試合放棄によってアルボルチ・ファイアーボールズの勝利!」

 

 一瞬沈黙が降り、次の瞬間歓声が爆発した。




タイトルはアストロ球団の名セリフから。

>ブラスターホームラン
「トップをねらえ!」のガンバスターのバスターホームラン。
本編には出ていないがスーパーロボット大戦で映像化された。
何考えてるんだゲームスタッフ! 良くやったぞ!
ここだけの話、復刻してたらバスターホームランじゃなくて「宙球戦士アブソルト」(巨大ロボで宇宙人と野球するボンボン漫画)使ってたかもしれない(ぉ

>10月りゅう座流星群打法
アストロ球団のジャコビニ流星打法。
小柄な兄を巨体の弟が投げあげホームランボールをキャッチする、という明智兄弟の「人間ロケット」への対抗策。
バットにひびを入れて、ホームランを打つと同時にバットの破片を飛ばし、どれがボールか分からなくすると言うもの。
同作を象徴する必殺技。

>葬らん!
究極超人あ~るより。
ホームラン→ほうむらん!
それだけw

>クリーンアクトリオ
クリーン悪トリオ。「逆転イッパツマン」の悪役トリオ、いわゆる三悪。
イッパツマンは野球モチーフの作品なので、ところどころにこうした表現やネーミングが出てくる。

>試合放棄
厳密には没収試合となるのですが、そこはまあルール適用がラフなので。
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