異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「分身殺法! バーニング! シャドウッ!」
例によって俺の《加護》を駆使しての高速公演準備。
二十分ほどで仕事を終えると、後は働くみんなを横目にのんびり放課後ティータイム。
いやここ学校ちゃうしバンドでもないけど。
帰ってきたシルヴィアさんによれば、興行の許可は普通に下りたそうだ。
ここは王都ヌスタァダム。
数十年前、ヤクザや不良グループが乱立していたここを統一したのが川分さんの組織。
既に冒険者として名を馳せ、義に厚く、カタギに手を出さず、女子供にも優しい彼に一般人スジ者問わず多くが心酔し、最後には当時最大の組織のボスと素手でタイマンして決着をつけたとか。
昭和の番長マンガかよ。
「・・・川分さんってそう言う人だったの?」
「手束修とか古いマンガを沢山持ってて、道場に来た子供達がみんな読んでたね・・・そう言う内容の奴もあったと思う・・・」
頭を抱えるカオルくん。
まあ俺達からしたら昭和の遺物みたいな話でも、こちらではそう言う話が現実で現役だ。
ともかく町の興行を仕切ってる組織も川分さんの傘下であり、俺達が到着したのは普通に知られているだろう。
「取りあえずしばらく警戒を切らすんじゃないよ。いつ来てもいいように覚悟はしておきな。
それからアーベルも頼むよ」
「わかってる」
「アタシもちょっと出てくる。晩飯には戻るよ」
そう言って二人は野営地を出ていった。
酒はともかくギャンブルはしちゃだめですよ。
「うるさいね! やらないって!」
ここ、ヤクザの組織が大きいって事は賭け事も盛んだろうしなあ。
「ったく、あそこまで大負けしたのは一度だけだろ。それをいつまでもぐちぐちと・・・」
「アイソーポスいわく、一度定着した評判を打ち消すのはなかなか大変なのですぞ」
「やかましい!」
ぷりぷり怒りながらシルヴィアさんは行ってしまった。
あ、アーベルさんが余計な事言ってシルヴィアさんの拳をかわしてる。
あの人も一言余計なんだよなあ。
まあ、あれでうちの一座のコミュ力トップ2だ、何か聞き込んできてはくれるだろう。
ちょうどアルテの料理が完成したところで二人は帰ってきた。
醤油に糖蜜を混ぜたほのかに甘いジャガイモの煮っ転がしと新鮮な豚肉を使ったポークステーキ、これまた新鮮な野菜を使った付け合わせのサラダ。
旅先では中々食べられない御馳走である。
それで、お二方の方の収穫は?
「アタシはあったんだかないんだか・・・例の遺跡について聞き回ったんだけどね、この周辺って妙に沢山遺跡があるらしいんだよ。なんで遺跡荒らしの冒険者が結構多くてさ」
「ヌスタァダムは何度か滅亡したり征服されたりもしておるが、さかのぼれば真なる魔法文明の時代からの古都じゃからの。
それは周辺に遺跡も多かろうよ」
さすが師匠は生き地獄。
そう口にした瞬間、思いっきり杖で殴られた。
違うんです! ちょっと言い間違えただけで!
「やかましい! 貴様の方を生き地獄にしてやろうか!」
「普段から思ってるからぽろりと出るんじゃないか?」
「ですぞですぞ」
「まあ迂闊なのはいつもだけど」
だからうるせーんだよ
それはともかく、そこまでご存じなら怪しい遺跡とか思い浮かびませんか。
「それはさすがに知らんのう。こっちは通り過ぎたことはあっても滞在したことはほとんどない」
だめかー。シルヴィアさんは他に何か収穫は?
「ないねえ。分かったことと言ったら、ライゾムの旦那がガチで人気者ってことくらいさ。
ここ四十年くらいずっとヌスタァダムの守護神扱いだよ」
平和の象徴ってか。どっかのアメコミっぽいヒーローみたいだなあ。
アーベルさんは?
「大体シルヴィアと同じだな。ただ・・・」
ただ?
「ラデルアのリーヴィル。ヤクザのほうな。あいつが歩いているのを見かけた」
!
「間違いないのかい?」
「かなり肉が落ちていたがな。あいつのことは何度か調べさせただろ、アンタ。それを俺が見間違うとでも?」
「・・・」
まあそうだ。
アーベルさんの目と耳は、俺のミストヴォルグセンサー並みの精度がある。
それに確信が無い程度なら、そもそも口には出さないだろう。
でもあいつ、ゴクアクドリームで廃人になった上で逮捕されてたんじゃ?
「そのはずだよね・・・」
「まあそこは考えていても仕方あるまい。アーベルが確認したなら間違いないじゃろ。
その辺と関係あるような、ないようなことじゃが、今の話を聞いて思い出したことがある。リーヴィルがおった、ラデルアの南の元締めの屋敷から見つかったアーティファクト、覚えておるか?」
あー、師匠がちまちま解析進めてた奴。
「招霊か何かに関係するものだとはわかっておったんじゃが、かなり特殊なもので、何を目的として作られたのがようわからんでの。概念レベルの召喚を行う実験装置かもしれんが、まあ専門的な話はさておくぞ」
うん、意味がわからないのでその辺は飛ばしてくれていいです。
それで何が気になったので?
「うむ。アーベルは前に、リーヴィルの台頭と南の元締めが勢力を伸ばしたのがほぼ同時期――十年ほど前からと言うておったな?」
「ああ」
・・・んんー?
俺はその話は初耳だが何か引っかかる。
素直に考えれば、北の元締めがナンバーワンだったところにリーヴィルの力で南が勢力を伸ばして、二分するところまで持っていった。
そんでそいつの屋敷に謎のアーティファクトがあって、そして再起不能かつ収監されたはずのリーヴィルがヌスタァダムを歩いている・・・証拠は全くない、ないのだが。
「言われてみれば、それもあったか。ヌスタァダムとリーヴィルの繋がりは考えないでもなかったが・・・」
つまり、リーヴィル(大)はラデルアの裏社会を支配するために川分さんの組織が送り込んだコマだった可能性もあるワケか。いかにも有能なヤクザって感じのやつではあったが・・・
「それともう一つ。あのアーティファクト、召喚に関係するものと言ったじゃろう」
うい。
「ラデルアに入る直前、ワシらが見たニホンのセンシャの軍団と巨龍の咆哮・・・
あれをな、あのアーティファクトが引き起こした可能性がある」
!?
>アイソーポス
いわゆるイソップ童話の人。
この場合は狼少年の話ですね。
>平和の象徴
ヒロアカのオールマイトですね。
彼が完全引退するまでは毎週本誌で読んでた。