異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
取りあえずおじさんをテントに引き込んで師匠が治療する。
重傷ではないがあちこちに傷があり、血痕がぽつぽつと残っていた。
「ウォータービート! アクアプレッシャー(弱)!」
俺はウォータービートの能力で水を出して血痕の洗い流しである。
まあ大体ばれてるだろうけど一応ね。
テントに戻ると治療も終わって、おじさんが目を覚ますところだった。
そこそこ大柄だがあまり筋肉はついてない。肉体労働者ではないな。
メガネに白衣でも着せたら研究者っぽく見えるかもしれない。
目を覚ましたおじさんはぼんやりと左右を見渡して、チュパくんに目を止めた。
「おお、おお・・・」
「きゅー?」
感極まった声のおじさん。目には涙すら浮かんでいる。
チュパくんは戸惑ってはいるが拒否はしていない。
「おじさん・・・チュパくんを知ってるの?」
チュパくん同様戸惑う俺達を代表してリタが尋ねる。
おじさんは首を振った。
「その子は知らない。でもその子の仲間は知っている。
10才の時から待ってたんだ、ずっと彼を待っていた」
「・・・!」
それからぽつぽつと、彼は自分の事を話してくれた。
名前はオズ。術師で45才。
いわく「名前みたいな大魔法使いなら良かったんだけど」だそうだ。
オズの魔法使いもあるのかー。
10才の時にチュパくんの同族と森で出会って、紆余曲折の末友達になった。
悪い大人に目をつけられて、何とかチュパくんを元の世界に戻したとのこと。
「元の世界に戻せるの!?」
「お主術師のようじゃが、まさかその当時からそうであったわけでもあるまい。どうやったのじゃ?」
「ここから南東十キロほどに神隠しの森と言われているところがあるんですよ。
時折人が行方不明になったり、あるいは悪魔が現れるという言い伝えがあって・・・光る丸い戸口のようなものから彼が出て来たんです」
「異界門じゃな」
オズさんが頷く。
「追われる彼を連れて森を逃げていた時、もう一度その光る戸口が現れ、彼はそこに姿を消した・・・ペトロワ師、彼は戻れたのでしょうか?」
「恐らくはな」
師匠が頷く。
「異世界は沢山ある。そして数年から数万年単位で近づいたり離れたりする。
異界への門が発生しやすい場所というのはそれなりにあるが、どこも特定の異世界としか繋がらんのが普通じゃ。その時はまだ世界が接近している時期で、複数回門が開いたんじゃろう」
チュパくんもそうしてこちらの世界に来たわけですか。
「あるいはそうした特異点であるから、それを研究するために施設が建設された可能性もあるの。世界が接近しておるなら、自然に開くだけでなく、人工的に門を開くのもそれほど難しくはない。まあ高度な魔法が前提じゃが」
「んー、するとオリジナル冒険者族が召喚されるのも、ひょっとしてその世界の接近と関係があります?」
「ではないかとわしは睨んでおる。ただケースが少なすぎて明言はできんの」
興味深い話だが、今はチュパくんとオズさんのことだ。それで?
「その後私は術師になった。もう一度彼と会いたい一心でね。
術師としての才能はそれほどなかったが、研究者としては悪くなかった。
「『
オズさんが頷く。
「あのライゾムさんの関わる組織と言う事で、一も二もなく信用しました。
入った時にライゾムさんご本人も声をかけて下さって、年甲斐もなく興奮しましたよ」
そうなのか。
やっぱりあの人ここではヒーローなんだな・・・
「はい、ヒーローです。ヒーローでした・・・」
うなだれるオズさん。
入団後しばらくは熱心に研究を続けていたのだが、一年ほど前にチュパくんの同族を
「何とか助けてやろうとしたんですが何も出来ませんでした・・・何もです!
あの子は・・・どうなったでしょうか」
「機能は停止させた。その後は粗末な墓ではあるが丁重に葬ったよ」
「・・・ありがとうございます」
手を組み、祈るように瞑目するオズさん。
俺達も言葉を発せない。
しばらく沈黙が続いた後、オズさんが再び口を開いた。
「三ヶ月くらい前になりますか。最初の招来から半年ほど経って、再び招来に成功しました」
その時連れてこられたのがチュパくんか。
「ええ。この前のようなことにならないよう彼を逃がして、私が解析を進めていた遺跡の機能を起動させてとにかく遠いところに彼を逃がしました。
そして今度は私自身が疑いを持たれて拘束されそうになったので、今度は自分に同じ機能を使って逃げてきた訳です。本来なら国外に逃げるつもりでしたが、そちらの彼を助けた芸人一座がこちらに来ていると聞いたので・・・」
ウチに来たって訳か。まあ内部情報を色々教えてくれたのはありがたいが・・・と、ちらっと師匠を見る。
「安心せえ。こやつの言葉に嘘はない。ただ・・・」
この状況自体、ライゾムさんや組織の連中が仕組んだことじゃないかって事ですね。
「まあ考えちまうよな。《ゲッティスの閃光》ライゾムと言やあ武闘派で通ってるが、何の何の、頭も切れるし小技も搦め手も使う。ナメてかかれる相手じゃあねえ」
ちょっとポンコツ気味な気配はあるけど、ただの脳筋ならそんな大組織のトップでいられないでしょうしねえ・・・組織を完全に掌握し切れてない感じはあるけど。
「そこはちっと割り引いてやりな。沢山人がいたら、中々何から何まで思い通りとはいかないものさ」
「ですね・・・」
溜息をついたのはカオルくん。
色々思い起こしてしまったか。
む。
「!」
「ちょっとガイガー・・・まさか?」
「そのまさかじゃ。またお客さんじゃぞ」
外に出ると数十人のヤクザものがいた。その中央にいるのはどこかで見た二人・・・あっ、リーヴィル(大)か、片方は!?
「ライゾムさんの言った通りだったな。荒事は無しだぞリーヴィル」
「わかってるさ」
リーヴィルに話しかけたのは・・・そうか、あの五番セカンドだ。風を操る奴。
肩をすくめるとリーヴィルはニヤリと笑う。かつては弁護士のように見えた知的な容貌も、頬がこけて妖怪に取り付かれた魔剣士みたい。それでもギラギラした眼光だけは衰えていない。
「よう、姉さんも腰巾着の兄ちゃんもひさしぶり。一応聞いておくが、そっちにいる・・・」
「渡す訳ないだろ。さっさと帰りな。それとも力づくで来るかい?」
きっぱりと断るシルヴィアさん。
もう一度肩をすくめるリーヴィル。
「あんたたち相手に力押しはできないさ。
まあそのうち遊びに来てくれよ。俺の舎弟のリーヴィルと一緒に、旧交を温めあおうじゃないか」
「っ」
声を上げそうになり、シルヴィアさんは耐えた。
「じゃあな」
ひひひ、と笑みをこぼし、リーヴィル達が帰って行く。
シルヴィアさんが据わった目でそれを見送っていた。
エクストラ・プレニストリアルは「異次元からのもの」みたいな造語。