異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十三話 ヤクザ映画の見せ場は殴り込み

 爆発音。

 立ち上る煙。

 上がる悲鳴と怒号。

 古代魔法文明時代の遺跡にして『騎獣を招来するもの(コールライド)』の本拠地である魔導研究所・『ほとりの要塞(ナーザ)』。

 ほとりとは水のほとりにあらず、世界のほとりの意である。

 異次元とこの世界との関係を調べるため、古代の大魔術師たちによって作られたこの研究所は、今襲撃を受けていた。

 

「サンダースウォード!」

「どっせいっ!」

「・・・」

 

 先頭を切るのは青玉の鎧を身に纏った騎士カオル。

 100キロは超えるだろう無骨な重甲冑をまとい、2mのメイスを振り回すアルテ。兜に生えた牛の角、さながら女ミノタウロス。

 軽装ながら誰もその動きを捉えられない達人・ガイガー。

 

「オラオラオラオラ、死にたくなけりゃあとっとと逃げなぁ!」

「ですぞですぞですぞ!」

 

 その脇を固めるのは緑等級のシルヴィアと、それに迫る実力を持つラファエル。

 

「ファイアーボール!」

「ウォーターミスト!」

 

 火力呪文で兵士を薙ぎ払うペトロワ、霧で相手の視線を遮り、支援を妨害するオブライアン。

 

「ぐっ」

 

 支援しようとしていた術師や弓兵が、霧に紛れたアーベルによって討たれる。

 前衛の中にはそれに気付く腕利きもいたが、暴れ回る前衛三人を相手にして術師たちを守る余裕はない。

 

「きゅー!」

 

 そしてチュパは精神感応の力で全員を高揚させている。

 感覚が普段より鋭くなり、身体能力も通常以上のそれを発揮する。

 

「右の奥の方! ペパーミントがこっそり近づいてくる人達がいるって!」

「よし、カオル!」

「はい! 幻夢剣!」

 

 素早く剣を持ち替えたカオルが増援の視界を幻でふさぐ。

 リタは先行するハムリス達と連絡を取って、周囲の情報を逐一把握していた。

 爆音と怒号の中、数百m先のハムリス達の声が聞こえる異常を彼女はまだ自覚していない。

 

 

 

 遠く爆音が響く。

 古代技術で作られた大ホールはこの程度で壊れはしないが、それでも震動は吸収しきれない。

 ライゾムこと川分市郎は巨大な空間の入口を眺め、次に天井を眺め、そして奥に鎮座する「それ」を見た。

 全長50mはあろうかというその影は、この広大な空間の天井にまで届いている。

 腕組みをし、瞑目する。

 

(思えば遠くまで来たものだ)

 

 悩み多き人生だった。

 子供達のために様々な活動を続けてきた。

 報われることもあったが、その逆のことのほうが多かった。

 

 それが頂点に達したときに召喚されたこの世界。

 多くの命をこの手で救い、同じ位の命をこの手からこぼしてきた。

 怪物を倒して村人を救い、疫病を鎮めるために私財を投じて医神(クーグリ)の司祭を招聘した。

 荒くれどもを叩きのめしてまだしも正しいと思われる方向に導き、当時王都で勢力を二分していた組織の頭領「紅拳」のヤシトとの一騎打ちで勝利し、義兄弟の契りを結んだ。

 官憲と協力して麻薬を撲滅し、道路や運河などの公共事業にも手をつけた。

 

 だがそれでも世の中には不幸が溢れていた。

 貧困。犯罪。疫病。搾取。

 年齢も九十を過ぎ、さすがにそう長くは生きられない。

 後継者も指名して、自分がいなくなっても組織が維持されるように環境を整えもした。

 

 だが諦めきれない。

 自分の人生を全部つぎ込んでも、もっと何かを残したい。

 そうしてライゾムが頼ったのが、かつて叩き潰して傘下に入れた『騎獣を招来するもの(コールライド)』の技術だった。

 

 土壌改良型半植物合成魔獣。

 研究者たちには確かその様な名前で呼ばれていた。

 巨大な植物の(つる)とライオンをかけ合わせたかのような奇怪な外見。

 ライゾムが名付けた愛称は「獅子の蔓(ライヴァイン)」。

 「自分(ライゾム)の意志を継ぐ者」としての願望もあったかもしれない。

 

 魔力結晶を燃料として動くそれは、こんもりと盛上がった50メートルの巨体から無数の蔓を地中に伸ばし、攪拌し、土壌を豊かにする。

 十年ほど前に完成した運河と組み合わせれば、農地の収穫は数倍にもなるはずだ。

 

(カオル・・・お前がわしの後継者になってくれればな・・・)

 

 成長していたかつての教え子に出会った時には、天にも昇る思いだった。

 それが一部の研究者の呼び出した危険物の奪回の折でなければもっと良かったのだが。

 その危険な魔獣も、あの様子なら放置しておいてかまうまい。

 あの魔女と、少女たちがいれば何とかなるだろう。

 

「ライゾムさん」

 

 傍らの男の声で、ライゾムは物思いからさめた。

 

「どうした、リーヴィル」

 

 10年前にラデルアに送り込んだ刺客。

 当時から才覚溢れ、後数年であの町を手中にできたろう男。

 げっそりと頬がこけ、目は危険な光を放っていたが、頭の冴えは変わらず、今は幹部の一人として扱っていた。

 

「奴らがここに来たら、『これ』、使っていいですか」

 

 立てた親指で指すのは背後の巨獣。ライゾムが眉をしかめる。

 

「これはこの国を豊かにするためのものだ。破壊されては困る。そもそも戦闘に使えるのか」

「術師どもは問題ないと。今朝方行った施術で、制御は完璧になったと言っていました」

「・・・いいだろう。だが私の命令があるまで待て。

 もう一つ。破壊されそうになったら離脱させろ」

「わかりまし・・・」

 

 リーヴィルが返事をし終わる前に、また爆音が響いた。

 それもごく近くで。

 

『ライゾム様! 奴らがすぐ近くに来ています!』

 

 通信機から響く部下の声。

 ばちり、と一瞬雑音が入って通信が途切れた。

 

「全員用意しろ。来るぞ」

 

 大ホールの入口が開いたのは、それからきっかり三分後のことだった。

 

 

 

「なんだいこりゃ。これもチビみたいに向こうから呼び出したものかい?」

「恐らくは合成魔獣(キメラ)じゃの。見たところ招来なり召喚なりされたものは使ってないように見えるが・・・」

 

 シルヴィア達一団がなだれ込んだ。

 そんな会話をする間にもシルヴィア達は鋭く動き、陣形を整える。

 30mほどの距離を隔て、ハスキー一座とライゾムたちがにらみ合う。

 

「先生・・・」

「待て」

 

 ライゾムが剣にかけていた手を離し、ガイガーたちを制する。

 

「カオルたちはともかく、その子らを戦闘に巻き込むわけには行くまい。

 娘さんとチュパくんだったか、その子たちはそちらのシェルターに入れてはどうかな」

 

 一座の面々がちらりと視線を交わす。

 ガイガーが頷いた。

 

「その子らには手出し厳禁だ。法神の誓約により、そうしたものは私自身が斬らねばならん。いいな」

 

 部下たちが頷いたのを確認した後、部下の一人にリタ達を案内させる。

 オブライアンが付き添っていった。

 扉が閉まり、圧搾音とともにロックのかかる音がする。

 

「さて、やろうか」

 

 ライゾムが剣をすらりと抜いた。

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