異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十六話 最後の切り札

 酒瓶の当たったおでこをさすりつつ、合成獣の残骸の方を見る。

 獅子の頭はもうほとんど崩れており、泡のようになっている。

 今は最初にあふれ出してきた泡の海にビチビチはねるツタが浮かんでいるような案配だ。

 そもそもこの泡ってなんなんです?

 

「そうじゃの・・・先ほどカオルが言っておったが、セッチャクザイというのは(のり)のことじゃな?」

 

 俺とカオルくんが頷くと、師匠が先を続ける。

 

「であるならその言い方は正鵠を得ておる。

 あれは異なる生物組織を融合させるための『(のり)』のようなものじゃ。

 多分に魔法的なものであるゆえ、サンダースウォードの破魔の魔力によってああして分解されておる。

 時間が経って完全に融合しておれば、ここまで派手に分解はしておらんかったじゃろうが」

 

 ツタが残ってるのは「材料」だったからですか。

 

「そう言う事じゃ。ツタの部分は他の生物から採取した素材、獅子の頭は合成に近いものだったんじゃろう」

「確かに術師たちがその様なことを言っていた記憶がありますな。ポマトみたいなSFの世界だと思ったものですが」

 

 トマトとポテトを遺伝子レベルで合体させたキメラ植物でしたっけ。

 トマトも地下のジャガイモの方も食えたもんじゃなかったそうですが。

 

「そうだったのか? まだ夢の世界には遠い話だったんだな」

 

 ちょっと遠い目になる川分さん。

 手束漫画とか読んでたらしいから、まあSFは好きなんだろうな・・・どうしたアルテ?

 

「今、泡が動いた」

 

 そりゃまあさっきからツタが触手みたいにうごめいてるが。

 取れたてぴちぴちの新鮮な触手だよ!

 

「そうじゃなくて、何か・・・」

 

 うわ!? 泡が盛上がった! それが急速に収縮していって・・・?

 

「違う! 地下に吸い込まれておるのじゃ!

 ライゾム! 地下には何がある!」

「休眠状態の巨大な植物型魔獣です。遥か古代に研究材料として召喚されて、あのツタの部分の材料に・・・」

 

 そこでハッとした顔になる川分さん。

 おいおいおいおいおいまさか。

 あのリタやアルテが感じとった「何か」なのか?!

 

「泡から今一瞬、あのヤクザの方のリーヴィルの気配がした! あの護符も!」

 

 おおおおおおい!?

 ツタで叩き潰されて壊れて&死んでなかったの!?

 いや、それは後だ!

 泡が消える・・・というか、床の排水溝に吸い込まれていく。残ったのはもう動かないツタの残骸だけ。リーヴィルの死体は・・・ない!

 

「小僧、追えるか?」

 

 ジェッタードリルでも古代文明時代の素材はちょっときついです!

 できなくはないけどあのスピードで逃げられたら追えない!

 

「レジェーロ、そっちのリーヴィル君と、シェルターの子供達を施設から連れ出せ!

 他の者は私についてこい!」

「ああもう、また厄介ごとかい!」

 

 頭をかきむしって叫ぶシルヴィアさん共々、俺達は川分さんたちに続いて走り出した。

 

 

 

「研究所の中に残っている者は全員シェルターに退避しろ! 私がいいと言うまで絶対に外には出るな!」

 

 通信機に叫ぶ川分さん。

 リタ達含めて大型エレベーターの前で待つ俺たち。

 一分一秒を争う場面なんだが、川分さんの部下が昇降ボタンをカチカチ押しているのを見てつい笑ってしまった。

 

「落ち着け、ギオ。押したからと言って早く来るものでもない」

 

 それは川分さんも同じようで、苦笑しつつ部下をたしなめている。

 

「この面子なら飛び降りた方が早いじゃろう。《軟着陸(フェザーフォール)》もある。

 一直線で地下に繋がる縦穴とかはないのか?」

「残念ながら、このエレベーターシャフト位で・・・このシャフトも100mほどごとに乗り換えねばならんようになっております」

 

 日本の高層ビルでは良くある建て方だけど・・・あれは長いエレベーターシャフトは強度のために面積を取るからって理由があったはずだが、地下施設ならそれほど面積は気にしなくていいよな。

 ひょっとして地上まで一直線の穴を作るのを嫌った?

 何かの映画で生物兵器研究所が、ウィルスの流出を恐れてそう言う構造になってた気がする。まあやっぱり漏れてバイオハザードるんだけど。

 

「!」

「!?」

 

 震動。

 がりがりがり、と言う凄い音と、震度6くらいの激しい揺れ。

 それが下から上に通り過ぎていく。

 震動が完全に俺達のいる階を通過したのとほぼ同時にエレベーターのドアが開く。

 合成音声のアナウンス。

 

『下に参ります』

「いや、上だ」

 

 川分さんの言葉に、その場の全員が頷いた。

 

 

 

 資材運搬用らしい大型エレベーターだったが、さすがに二十人以上乗るとギチギチだった。

 重量制限に引っかかったため、何人かは師匠の《浮遊(レビテイト)》で浮かんでいる。

 ジリジリしながら見上げる、少しずつ移動する階数表示。

 

『地上一階でございます。ドア開きます』

 

 エレベーターの合成音声を聞く間ももどかしく、俺達は再び駆け出した。

 森の中の遺跡から走り出ると、周囲の風景は一変していた。先ほどのそれよりも遥かに巨大なツタが森の木々を薙ぎ払い・・・

 

「危ないっ!」

「プロテクションシェェェェェドッ!」

物理障壁(フィジカル・バリア)!」

 

 俺と師匠、川分さんの部下が同時にバリアを張る。

 直後、直径10mはあろうかという極太のツタが地面を削るように迫り、バリアに当たって斜め上後方にカッ飛んでいった。

 

 防いだわけじゃない。

 地面から斜めにバリア張ったから、僅かに逸らして直撃を避けただけだ。

 

『くけかかかかか。せせこましいなあ』

「!」

 

 森中に、あるいは王都にまで届くような巨大な声。

 遥か上方からひびく、割れたスピーカーのようなそれ。

 かろうじてリーヴィル(大)のものとわかるくらいの。

 

「なっ」

 

 上を見上げた一同が絶句する。

 巨大なツタの集合体、中心に巨大な顔。

 それは下で倒したライヴァインと同じだ。

 だがこれの顔は。

 

「リーヴィル・・・」

 

 川分さんがその名前を絞り出す。

 緑色で歪んではいるものの、それは確かにあのヤクザの顔だった。

 

『切り札は常に用意しておくもんだと、アンタは言ったろう、ライゾムさんよ?

 これが俺の切り札だぜ・・・今度はせこいマネで逃げられないよう、叩き潰してやる!』

 

 上空300m程か。

 そこにあるのはそれだけで数十メートル、ライヴァインほどにはありそうな巨大な顔。

 正直それだけでもの凄い圧迫感だ。

 精神衛生上よろしくない。

 

「小僧」

 

 何とかしますから、その隙に全員離れて下さい。マシン・オン!

 

「お・・・おおおおおおおお!?」

 

 俺を最強にする、唯一無二の呪文。

 身体が巨大化し、黒い金属色を放ち、太陽の光を反射する。

 同時に振り下ろされる巨大なツタ。

 それを真っ向正面から受け止めたのは一体の巨人。

 

「デモゴディ・・・Σ・・・!」

 

 川分さんが呆然と呟いた。

 




> 取れたてぴちぴちの新鮮な触手だよ!
メタルマックスより。
こんな感じでバイオ汚染された「ぬめぬめ細胞」などが酒場で供されているアフターアポカリプス世界。
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