異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十話 怒りのアルテ

 デッカードと並んでカオルの後ろに控えていたユリシーズさんが剣を抜こうとするが一瞬遅い。首筋を斬られ、彼も倒れた。

 

「ははは! ははははは! 裏切者どもめ! 相応の最期じゃわ!」

 

 国王の高笑いが謁見の間に響く。

 ユリシーズさんは意識がない。カオルくんは胸を貫通されて立ち上がれない。

 それを嘲笑する軍曹。

 

「やれやれ、勇者様も往生際の悪い。身をかわさなければ心臓を一突きして楽に殺して差し上げましたのに」

「てめえ!? 豪子力・・・」

 

 カッとなって豪子力ビームを放とうとした瞬間、銀の光が走った。

 

 あれ

 

 しかいがまわって

 

 おれの

 

 くびのないからだが

 

 こいつ

 

 がいがーさんなみの

 

 たつじん

 

 そのまま右後頭部に衝撃を感じ、俺は――俺の首は絨毯の上に転がる。

 一瞬遅れて首から上を失った胴体が大量の血をぶちまけて同じく床に倒れた。

 

 

 

 

「さて」

 

 デッカード軍曹がカオルの腰からサンダースウォードを外す。

 

「ふん、裏切者の勇者なぞいらんわ。剣だけあればよい。

 デッカード、それはお前に預ける。その剣の力で見事魚どもを駆逐してみせよ」

「ありがたきお言葉」

 

 デッカードが剣を手に一礼する。

 

「ハヤト! 無事か・・・っ!」

 

 《眩惑結界(デイズ・ポケット)》の呪文を駆使したのだろう、謁見の間の扉を開け、ペトロワ達が乱入してきたのはその時だった。

 

「いやあああああああああああ!?」

 

 ペトロワ達が息を呑み、アルテが悲鳴を上げる。

 

「何じゃ貴様らは?!」

「ハヤトめの仲間にございます! すぐに始末いたしますゆえお待ちを! やれ!」

 

 命令一下、周囲の近衛兵たちが殺到する。

 

 ペトロワと一緒に来たのはシルヴィア、ガイガー、アーベル、ラファエル、アルテ。

 ペトロワに接近戦の心得はなく、アルテもショックで動けず戦力にならない。

 残りの四人でこの二人を守るしかない。

 

「ブッ殺すッ!」

「ぎゃあっ!」

 

 それでもシルヴィアのサーベル、アーベルのナイフ、ラファエルの拳は近衛兵を相手に一歩も引けをとらない。

 

「・・・」

「がっ!」

「ぎゃっ!」

「ぐわっ!」

 

 その中でもガイガーの活躍は際だっていた。

 剣を振りかざす近衛兵たちの中に無造作に踏み込むと、短い悲鳴を上げて相手が次々に倒れていく。

 無造作に振る剣が面白いように当たり、逆に兵士達の剣は全く当たらない。

 

「!」

 

 金属音。

 そのガイガーが、初めて攻撃を防いだ。

 黄金で象嵌された黒の剣。

 魔剣サンダースウォード。

 噛み合う刃の向こうに笑みを浮かべるデッカード。

 だが先ほどまでのそれに比べても、さらに狂気に縁取られた笑顔。

 

「貴様・・・デッカードか!」

「あなたは! 私の目標だった! 越えられない壁だった!

 あなたが姿を消してからも、その背中は常に私の目の前にあった!

 だがそれも終わりだ! 今日私はあなたを斬り、あなたを超えるっ!」

「盗んだ力でかっ!」

「何とでも言え! 勝てば良かろうなのだ!」

 

 刃を外し、距離をとる。

 次の瞬間、無数の閃光が二人の周囲に走る。

 かつての兄弟弟子、死闘の幕が上がった。

 

 

 

「ばあさん、どうだ!」

「これだけ距離が離れていてはの・・・!」

 

 30を超える近衛兵たちに取り囲まれ、動けないペトロワたち。

 ペトロワは倒れたカオルとユリシーズに治癒を施すものの、近衛兵たちの壁に隠れて効果は限定的。失血死を防ぐのが精一杯だ。

 

 ガイガーとデッカードの周囲には無数の火花が散り、余人の介入できない空間を形成している。

 デッカードの技量自体はガイガーに劣るようだが、サンダースウォードがその差を埋めていた。

 さすがのシルヴィアたちもガイガーが押さえ込まれ、数をかさにかかって攻めてこられては苦しい。アーベルもラファエルもいくつか既に傷を受けている。

 そんな状況だった。

 

「・・・うあああああああ!」

「!? 待ちな、アルテ!」

「待つのですぞ、アルテ嬢!」

 

 シルヴィアとラファエルが上げた声にも反応せず、アルテが飛び出した。

 

「あああああああああ!」

 

 技も工夫もなく、ただ振り回すだけの大棍棒。

 だがその丸太のような木の棒に誰も近づけない。

 竜巻のような死の旋風。それに当たってしまったものは骨が砕け肉が潰れる音と共に吹っ飛んでいく。

 大振りすぎてほとんど当たらないが、誰も近づけない。

 

「・・・!」

 

 きっ、とその目が玉座の国王に注がれた。

 

「!?」

「おまえが! おまえがあああああああああああ!」

 

 玉座に走り出す。

 残っていた近衛兵が立ちふさがるが、単純で純粋な膂力の前には無力。

 あっという間に五人全員が吹き飛ばされ、あるいは叩きつぶされて地に伏す。

 

「このおおおおおお!」

 

 玉座に向かって振り下ろされる丸太。

 国王と黄金の玉座が、まとめて砕けて血と肉と石と金属の混合物になる。

 誰もがそう思った。

 

「!?」

 

 空中で丸太が止まっていた。

 今までの狂態が嘘のように、愕然とそれを見るアルテ。

 

 それを止めたのは国王の右手。

 だがその右手は人のものではない。

 常人の三倍はあろうかという巨人の如き手が、丸太をわしづかみにして止めていた。

 

「ふんっ!」

「きゃあっ!?」

 

 片手で丸太とアルテを持ち上げ、無造作に叩き付ける。

 床に叩き付けられ、大棍棒で潰されたアルテはそのままぐったりと動かなくなった。

 

「アルテっ!」

「ククク・・・」

 

 国王が玉座から立ち上がった。

 右腕が更に巨大化伸長し、アルテをわしづかみにする。

 

「そうれ、下賤の侵入者ども、剣を捨てよ。さもなくばこの娘を握りつぶすぞ」

「くっ・・・!」

 

 シルヴィアの歯ぎしり。ガイガーも剣戟を止めて一歩下がる。

 それを見て国王が粘液質の笑みを浮かべる。

 

「恐らくは近くにこやつらの仲間一人とガイガーの娘がいるはず。

 捕らえよ。さすれば剣聖ガイガーはわしの思うがまま・・・そうじゃな、デッカード?」

「!? ・・・ぎょ、御意」

「デッカード! 貴様!」

 

 一座の仲間も見た事のない、ガイガーの怒りと驚愕の表情。

 動揺するデッカードはその視線を受け止められず、顔を背ける。

 

「さあ、何をしている! 武器を捨てよ下郎! 我が城を土足で踏み荒らした罪は重いぞ!」

 

 駆け出す何人かの近衛兵。勝ち誇った国王の声が謁見の間に響く。

 

「かっ・・・」

「アルテ!」

 

 アルテを握った右腕に力を込める。

 歯ぎしりするシルヴィアたちに、これ見よがしに見せつける。

 

「クソが。しょうがない、ここは・・・」

 

 一座の面々が諦めの顔になり、シルヴィアが口を開いたとき。

 

「・・・は?」

 

 その口がぽかんと開いた。

 その視線を追った一座の他の仲間、兵士達が一様に顔をこわばらせ、次の瞬間悲鳴を上げる。

 

「うわあああああああああ!?」

「ぎゃあああああ!」

「幽霊だ! 勇者のたたりだ!」

「勇者が地獄から怪物になって甦ったぁぁぁ!」

 

 兵士達が我先に逃げ出す。それを制止すべきデッカードや国王すら、愕然として行動を起こせない。

 彼ら全員の視線が集まる先、立ち上がったのは首無しの死体・・・ダン・ハヤト。

 その小脇に抱えられた生首がニヤリと笑った。

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