異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第一章「グレイト・アントン」
第二話 接触編


 

「この芝居がいくらかでもお気に召したなら、どうか拍手喝采を」

 

     ――アウグストゥス、臨終の言葉――

 

 

 

「そう言えばあの時助けて下さった、大きなおじ様はどうしたんですか?」

「ガイガーさんならお留守番。俺は別に行かなくてもいいだろうって感じかな。こう言うの苦手な人だから」

 

 あの後俺達は楽屋に招き入れられ、お茶を御馳走になっている。

 座長の「偉大なる」アントンさんも一緒だ。

 もちろん本名じゃなくそう言う芸名らしい。

 

「それよりタウはどうしてこっちに? まさかまた奴隷商人に捕まったわけでもないよね?」

 

 オブライアンさんが言うと、タウさんと座長さんが笑い出した。

 

「ちょっと兄さん、アントンに失礼よ!」

「大丈夫ですよ、お兄さん。私はタウさんを買ったわけではありませんし、そもそもこの国では奴隷は違法です」

 

 でもじゃあどうして?

 

「あの後すぐ戦争が終わったでしょう? 人間に捕まっていた時は大変だったけど、それはそれとして人間の世界が面白いなって思ってたんですよ。

 ゴレイワおじさん・・・親戚の人が人間の船長さんと知り合いで、それで頼んで西行きの船に乗せて貰ったんです。さすがにまだロンドは怖かったし」

 

 まあまだ戦争直後だし、一般市民の意識はそう変わってないだろうからなあ。それで?

 

「ええ、ヘレンズって町でこちらの一座に入れてもらって、それからずっと西に旅してきたんですよ」

 

 ん、その町って確か・・・

 

「私たちが町を出た後、火山が噴火したって聞いて驚いたよな」

「しかも光る巨人が山を凍りつかせてそれを止めてくれたとか、ねえ」

 

 やっぱりあの吸血鬼(ルイス)の根城があったとこか!

 

「その後も大騒ぎだったなあ」

「イレマーレでダンジョン踏破者が出たってお祭り騒ぎになったらしいですね。ハイシンっていうの見に行きたかったなあ」

「ライサムだっけ、発った直後に領主様の館が吹っ飛んで一週間足止めされたとか」

「ゼンティルでも私たちがスノスレスを出た途端に町中に怪物が溢れて・・・公爵が謀反を起こしたんでしたっけ?」

「メリゴアでも凄かったよなあ。ヤクザ達が一斉に倒れたり、縄張り争いで野球したり・・巨大な怪物が現れて山一つ吹っ飛んだのは肝を潰したよ。

 こうして見ると、しょっちゅう大騒ぎの一歩手前で町を逃げ出してるな、私たち」

「そうですねー」

 

 あははー、と笑うタウさんと、笑って頷くアントンさん。

 言えない・・・その騒ぎ全部に俺達が関わってるなんて言えない・・・!

 

「ハヤトさん、顔を覆ってどうしたんです?」

「まあ若い男にはあれこれあるのさ。放っておいてやっとくれ」

「はあ」

「まあそうですな。若い頃には色々あるものです」

 

 したり顔でうんうん頷くアントン氏。

 ああ、このサトラレが恨めしい・・・!

 その後も互いの近況報告や苦労話を披露しあって盛上がったところで一座の人が呼びに来た。

 お二人の出番か。それじゃそろそろ・・・

 

「ああ、ついでだしご覧になっていってはいかがですかな。

 初日と言う事で席も空いておりますし」

 

 一見親切なアントンさんの提案。

 だがオレにはわかる、こいつは『挑発』だぜ・・・!

 

「いいだろう、見せてもらおうじゃないか」

 

 多分俺と同じ表情で、シルヴィアさんが笑みを浮かべた。

 

 

 

「うーむ」

「どえおわああああああ!?」

「うわっ?!」

「これは・・・うむう」

 

 一座の面々から上がるうなり声。

 ちなみに女と思えない汚い悲鳴はアルテである。三つ子の魂百まで。

 

「ハヤトうるさい!」

 

 周囲では悲鳴が上がっている。

 タウさんの歌は普通に素晴らしかったのだが、その後のアントンさんの手品が何と言うか、あれだった。

 

 序盤のリングマジックとか定番の鳩とかはまあ、普通。

 ただ見せ方はさすがにうまい。メチャクチャ勉強になる。

 加えて舞台の端の扉に入ってそのまま舞台のもう一方の端にある扉から出てくる瞬間移動マジックなどは見事だと思う。

 しかし腕を切り落とされたと思ったら、五体満足で再び舞台に現れる「不死身の男」マジックはマジでグロかった。血が飛び散って、腕が落ちるのは本物にしか見えない。

 師匠、あれ魔法ですか?

 

「その前のあれこれ含めて魔力は感じられんのう」

 

 ですよねー。

 俺もミストヴォルグセンサー全開で観察してたが、魔力は感じられなかった。

 つまりあれ全部純粋に技術で再現してる手品なんだな。

 割とどころじゃなくて普通に凄いわ。

 瞬間移動は多分替え玉使って、右側の扉に入る→扉で姿が隠れたところで舞台の穴に落ちる→替え玉が舞台左側の扉の影にある穴から上がってきて、扉から出てくるように見える、で瞬間転移したように見せかけてる。

 なのだが、扉に入ったアントンさんも出てくるアントンさんも、同一人物にしか見えない。

 

 不死身マジックの切り落とされた腕も本物にしか見えないし、血もそうだ。

 いや、血はブタの血とか使ってるのかな・・・?

 

「その辺はアタシにはわかんないかねえ・・・どれも本物にしか見えないよ」

「わしもじゃ。ちょっと信じられないレベルで真に迫っておるのう」

 

 しかし内容で負けてるつもりはないが、これだけ刺激が強いと、そっち方面で客を取られる可能性もあるなあ。

 その辺もうちょっと考えてみるべきかしらん?

 

「何言ってんの、毎回わたしやカオルを切り刻んでバラバラ死体にしてるくせに」

「だよねー。血糊(ゴア)はともかくスプラッタならハヤトくんの方が上だよ」

 

 そういやそうでしたね!

 などと敵情を分析しつつ演目はトリの劇に。

 こっちの演目は、何とロミオとジュリエッタ。短いしあれこれアレンジされてたりはするが、グロ手品と違って王道の恋愛悲劇だ。

 ウチと違って主人公が男装の麗人って事もないし、本物のシェイクスピアみたいにヒロインを男性が演じていると言う事もない。

 

「え、そうなの?!」

 

 当時の演劇って女人禁制だったんだよ。売春が絡むから。

 

「あーそーゆー・・・」

 

 ともあれ一時間程度で劇は終わり、満足した観衆から盛大な拍手が上がった。

 普通に面白かったので俺達も手を叩く。

 しかしいいなあ。いっぺんくらい、主役とは言わずとも脇役でがっつり演じてみたい。

 

「ハヤトはその・・・ねえ」

「仮面劇ならまあありじゃないか?」

「演技というところからこの世で一番遠いところにいるのが小僧という生き物じゃて」

「悲しいシーンで普通に思い出し笑いをするような人は役者には向いてないと思うよ」

 

 チクショウ味方がいねえ!

 

 

 

 挨拶してから帰ろうと楽屋に行ったらタウさん共々にこやかに迎えてくれた。

 

「さて、いかがでしたかな?」

 

 そうですねえ・・・インパクトも含めて、まあ互角というところでしょうか?

 

「ほほう」

 

 交わす笑顔。僅かに軋む緊張。

 

「それではそのうちそちらの公演も見に行かないとなりませんなあ」

「それなら入場料はサービスしておきますよ。皆さん連れてごゆるりとどうぞ」

 

 シルヴィアさんがニヤリと笑う。

 アントンさんもあくまで笑顔。

 

「感謝しますよ」

「わぁ、楽しみですねえ」

 

 タウさんは気付いているんだかいないんだか。

 こうして表面上はあくまでにこやかに、裏では緊張を伴って、アントン一座とのファーストコンタクトは終了したのだった。

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