異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三話 加齢なるギャツビー

「お帰り。どうだった?」

 

 野営地。居残った他の面々が出迎えてくれる。

 

「タウちゃんは元気そうだったけど、向こうの座長が挑発的なヤローでさ。

 『ウチの公演を観て身の程を知って帰れ』ってツラしてたからじっくり観察させて貰ったよ。

 まあ中々だったけど、ウチほどじゃあないねえ」

 

 鼻で笑うのはシルヴィアさん。ソフトとは言え挑発された上に、タウさんの歌にライバル意識を抱いたっぽい。わかりやすい人である。

 

「そうなの?」

「シルヴィアさんが悪く言ってるなら多分面白かったのかな?」

「ちょっとリタ!」

 

 見透かされてるシルヴィアさん28歳である。うーんこの付き合いの長さよ。

 まあ実際はそこまで挑発的じゃなくて始終紳士的だったし、出し物も面白かった。

 ただ、手品がちょっとスプラッタなんでリタは見ない方がいいかなー。血がドバドバ出て腕が落ちたりするし。

 

「あー・・・うん、それは見たくないかな・・・」

「取りあえずは明日からの公演だ! アントン一座をぶっ潰すよ!」

「「「「おーっ!」」」」

「おー!」

 

 拳を掲げて気勢を上げる俺達。

 まねして拳を掲げるリタがかわいい。

 そして響く鍔鳴りの音。

 ですから! わたくしは! あなたの娘さんによこしまな感情を持ってはおりません――!

 

 

 

 翌日から俺達ハスキー一座と自称偉大なるアントン一座の戦いが始まった。

 総合的には俺達が有利だろうと思っていたが、さすがにあちらも中々やる。まああっちの方が大きくてベテラン芸人も多いのでこの言い方はちょっと偉そうだが。

 

 まずシルヴィアさんとタウさんの歌は好みもあるがほぼ互角。

 アーベルさんの道化芸や師匠+オブライアンさんの魔術ショー、リタの動物芸などもほぼ互角。

 手品はさすがに俺の方が上だと思うが、あちらは見せ方のうまさとトーク、血糊バリバリのショッキングさ込みで互角に持ち込まれてる感じだ。

 

 逆に劇はあちらの方が圧倒的に上だ。

 素人に毛が生えたウチと違って、役者がほぼ全員専業。それでもカオルくんの幻夢剣エフェクトや俺の出す巨大ロボ系モンスターで何とか互角に持ち込んでいるとは思う。

 言ってみればあっちが古典演劇でこっちは特撮冒険映画だな。

 

 こちらが明確に勝ってる部分というと反則的な《加護》の持ち主であるラファエルさんの笑芸、そしてガイガーさんのコマの刃渡りだ。

 まー、あればっかりはいくら修行してもマネできるもんじゃねーわ。

 

 

 

 数日後。

 

「あ、いらっしゃい! アントンさんたちが来たら無料で入れろって座長に言われますんでどうぞどうぞ」

「おお、済まないね。今日は楽しませて貰うよ・・・ところで君、女の子だったの?」

「はっはっは」

 

 困った時は笑って誤魔化す俺である。

 タウさん他数人を連れてやって来たアントンさんを中に案内して(入場受付は出番外の奴が交代でやってるので、序盤は俺とガイガーさんが担当である)席について貰う。

 まあ席っつってもテントの床布なんだけど。

 

「色々とやっているが君の手品もどうして中々、評判がいいそうじゃないか」

「それはもう。今日はしっかり見て行って下さい」

 

 バチバチと散る火花。あらあらと笑うタウさん。

 初対面の時はまっとうな感性の常識人に見えたけど、やっぱりオブライアンさんの妹だな。

 この図太さは絶対遺伝だ。

 

 なお公演中アントンさんの一座の人達は唸りっぱなしで、やはりガイガーさんのコマ芸とラファエルさんの笑芸、そして俺の手品と最後の劇には目を見張っていた。

 一方のアントンさんは終始紳士的に楽しんでいる様子を崩さなかったが、公演終了後に挨拶したシルヴィアさんによると結構動揺していたらしい。

 この時ばかりはシルヴィアさんと同じ悪い笑みを浮かべてピシガシグッグする俺である。

 

「ハヤトがシルヴィアに染められてる・・・」

「まあ自分の得意分野で挑戦されたんだからわからなくもないかなあ」

「むー。シルヴィアさんと仲良すぎ・・・」

 

 え、今剣の鍔が鳴りました!?

 

 それはさておきハスキー一座とアントン一座の「戦争」はセントル市民の間でも噂になり、かわら版でもお互いの出し物のあれがこうだ、あそこがこうだと事細かに解説してくれる熱狂ぶりである。

 こっちは歌と手品と劇しか見てないので、こう言う解説はありがたい。宣伝にもなる。

 全般的には互角、手品で言えばやはり向こうはグロさが受けてるみたいだなあ。

 こっちの世界だと未だに死刑執行が見せ物になる位だし、グロ耐性は高いんだろう。

 

「しかし『偉大なるアントン一座』とただの『ハスキー一座』ではいささか名前の格に差がありますな。どうです、こちらも『華麗なるハスキー一座』とでも改名いたしますですぞ?」

「はっ、そんなことを気にするのは二流さ。ウチは芸の中身で勝負だよ。

 それにあたしが華麗なのは今更言われるまでもないね」

 

 この自信満々の28歳である。

 まあステージ上のシルヴィアさんが華麗なのは否定はしないが、いっぺん舞台を降りると酒瓶抱えた酒臭いねーちゃんで、華麗と言うよりむしろ加齢・・・ぐぶぼばっ!?

 

「そうかいそうかい、アンタそんなに死にたいかい。

 喜んで手伝ってやろうじゃないか」

 

 く、口に出してないのに・・・

 

「顔に出したら同じ事だっ!」

「成長せんのう」

「ハヤトさぁ・・・」

「ハヤトくんってば・・・」

「お兄ちゃんはほんともう・・・」

 

 三人娘の溜息と共に、剣の鍔が高らかに鳴った。

 

 

 

 そして翌日。

 

「領主様がいらっしゃるんですか?」

「そうだ。お忍びでな。閣下は特別扱いを望んでおられないゆえ、そうした気配りなどは無用だが、そう心得て貰いたい。

 護衛などはこちらで行うが、怪しげなものがいないかどうかチェックする必要がある。

 木戸(受付)や楽屋、裏口にこちらの者を入れるのでその手配はしておくように」

「わかりました。当一座は午前と午後の二回公演しておりますがどちらに?」

「午前だ。午後はアントン一座の方に向かわれる。そのつもりで励むように」

 

 ぴくり、とシルヴィアさんの顔が動く。

 

「お待ちしております」

「うむ」

 

 そんな感じで唐突に領主の使者の人が来て帰って行った。

 あー、権力めんどくさい。ああ言う偉そうな話し方されるだけでストレス溜まる。

 

「そりゃまあアタシも同感だけど逆らってどうにもなるもんでもないしね。

 はいはいと頭を下げてさっさとお帰り願うのがベストさ」

 

 にしても、ウチの次はアントン一座か。こりゃ比べられてるな。

 

「多分ここんとこの芸人戦争のからみだろうけど、領主様がウチに軍配を上げるとなったらどっちが勝ったかは一目瞭然ってもんだ。みんな、明日は気合い入れていくよ!」

「「「「おーっ!」」」」

「おー!」




タイトルは有名な戯曲から。
ジャイアントロボの素晴らしきヒィッツカラルドのイメージ元でもあります。
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