異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「ひいいいいいいいいい!」
「ああああああああああ!」
謁見の間は阿鼻叫喚という表現がふさわしい状況だった。
「怪物だぁ!」
「首無しの騎士!」
「首をはねられた勇者が黄泉返った!」
「死んだ勇者が魔物になって襲ってきたぞ!」
ククク・・・ひどい言われようだな。まあ事実だからしょうがないけど。
切り落とされた首を小脇に抱えて悪役笑いを浮かべてみせる。
まあどっからどう見てもアンデッドか悪魔のたぐいだ。元キャラがそもそも悪役だしな!
「デモゴディΣ」の悪役は見た目も中身も強烈な連中ばかりだが、その中でも1、2を争うのが自分の生首を小脇に抱えたサイボーグ騎士、ワルプルギス伯爵だ。
ヨーロッパの伝説に出てくる首なし騎士、デュラハンをモチーフにしているらしい。
というか最初に出てきた幹部が縦に真っ二つだったから、今度は横に真っ二つにしてみようぜwwwなんてノリをマジで実行したのがこれだよ! デュラハンってのも後付けだろ絶対!
首をはねられて意識を失うまでの十数秒でワルプルギス伯爵のことを思い出して《加護》を起動しようとしたのだが、本当にギリギリのところで何とか間に合ったらしい。
なまじデッカードの技量が高く、綺麗に首を切り離してくれやがったのも一因だろう。
「ば、ばけものめ・・・!」
怪物化したクソ王が呻く。
鏡見ろよ! お前に言われたくはねえよ!
「くそっ!」
あっ、手を縮めた! アルテと一緒に!
「てめえアルテ返せ!」
「ぶははははは、ばかめ、返すものか! 貴様の様な化け物を相手にするのに正面から・・・」
「豪子力ビーム!」
相手のたわごとを最後まで聞かず、胴体に戻した頭からビームを放つ。
両目から発された光線はクソ王の右腕と胸をえぐる。
「ぐっ!」
「ちっ! やっぱりてめえのほうが余程化け物じゃねえか!」
大きくえぐられた右腕は即座に再生し、胸に大穴が貫通して後ろの壁をもえぐっているというのにクソ王は血の一つも吐かない。
にやりと笑ってその体を包む豪華な衣裳が内側からはじけ飛んだ。
「なっ!」
クソ王の肉体が肉の塊のようになり、急速に巨大化する。それに引きずり込まれるアルテを握った腕。
「!?」
その一瞬。
ガイガーさんさえ驚愕で足が止まった瞬間に飛び込んだのはデッカード軍曹だった。
「うわあああああああああああ!」
「!? 血迷ったか、ゴミが!」
狙いはアルテを握ったままの腕。手には魔剣サンダースウォード。
ガイガーさんでさえ目を見張るような踏み込みからの閃光のような振り下ろし。
その刃がアルテを握った腕を断つかと見えた刹那、軍曹の体がびくりと痙攣した。
「ごぼっ・・・」
「不忠者が。貴様は取り込んでくれよう」
肉塊から聞こえるくぐもったクソ王の声。
彼の体を貫いたのは、その肉塊から飛び出した触手の槍。
力の抜ける手に触手が絡みつき、アルテとサンダースウォード共々、デッカード軍曹は肉塊に飲み込まれていく。
「デッカード!」
「あ・・・あ・・・」
ガイガーさんの言葉に何かを返そうとして返せず、彼はそのまま肉塊の中に消えた。
「ごばぁ!」
肉塊から声とも破裂音ともつかぬ音が響き、成長が更に急加速する。
謁見の間の天井が崩れ、巨大な岩が降ってくる。
既にこの場には肉塊と俺以外には一座のみんなとカオルくん、ユリシーズさんしかいない。
チラリと後ろを振り向く。
慌てたり、戻ってこいと叫ぶみんなの中で、ペトロワ師匠とガイガーさんがはっきりと頷いた。
向き直って肉塊を見上げた。
確信がある。
今ならできる。
この怒りと、アルテを助けたいと思う気持ちのある今なら――!
「マシン・オン! パイルビード・ゴォーッ!」
体が見る見る巨大化する。
人間の皮膚が鋼鉄の装甲となり、血の代わりに豪子力エネルギーが体を駆け巡る。
瞳のない鋼鉄の目、中世騎士のフェイスガードの如き口元、鋼鉄の巨体。
今俺は再び、デモゴディΣになった。
「なんだいこりゃ・・・なんだいこりゃあああああっ!?」
心底驚愕した顔でシルヴィアが叫ぶ。
話には聞いていたが、見ると聞くとは大違いだ。
18メートルの鋼鉄の巨人は、文字通り圧倒的な存在感で認識を塗りつぶす。
謁見の間の天井を崩して落ちてきた岩を、ペトロワの準備していた呪文が弾いた。
「呆けておる場合ではない! みんなわしの回りに集まれ!
勇者とその男も連れてこい!」
「は、はい!」
ガイガーがユリシーズを、シルヴィアがカオルを引きずってくる。ペトロワが改めて防護結界を発動させた時には、デモゴディともう一体の巨人が相対していた。
『ぐは』
鋼鉄のデモゴディと向き合うのはそれより頭半分大きい、無数の生物の特徴が混じり合ったような巨大な人型の
『ぐはははははは』
その顔は大雑把に国王のそれを模しており。
『ぐはははははははははは!』
胸には船首像のようにアルテが埋め込まれていた。
「アルテ!」
『いいのう、人を見下すのは気分がいいのう! 貴様は一度わしを見下した。今度はわしが見下す番じゃ! 国王たるわしを見下した、その罪を裁いてくれよう!』
『・・・』
無言で頭半分高い融合巨人を見上げるデモゴディ。
その視界の隅に、融合巨人の胸に埋め込まれたアルテ。
『お前にわしの気持ちがわかるか?! 王の子であるというのに! 長子であるのに! 誰も彼もわしを見下し・・・』
『 う る せ え ッ ! 』
『ブゴォッ?!』
「「「「「殴ったぁー!?」」」」」
ハスキー一座の悲鳴がハモった。
『ガッ・・?!?』
鋼鉄の拳が融合巨人の顔を直撃する。
歪んだ顔に間髪入れずもう一撃。
顔が大きく陥没し、人間なら間違いなく死んでいる衝撃。
無論それで攻撃は止まらない。
休みなく左右から全力で殴り続ける嵐のデンプシーロール。
流石に胸中央のアルテは避けているものの、攻撃には一片の容赦もない。
『ぐが! ぶべ! べご!』
『死ねっ! 死ねっ! 死ねっ! 死んで罪を償えこのクソ国王ッッッ!』
ハスキー一座の面々は呆然とそれを見上げるしかできない。
「ハヤト・・・キレてんなー・・・」
「・・・恐らくは未熟なあやつにとって、あれを発動するのに強い感情が必要なのじゃろう」
「魔法でも、強い感情が術の力を強めたりするのでしたかな?」
ラファエルの問いにペトロワが頷く。
「魔力は即ち生命の力。精神と肉体の根源なる力ゆえにな。強い感情は一時的にではあるが膨大な魔力を生み出し、術力を高める。それ故にあやつは限界を超えられたのじゃろう」
デモゴディの強烈な一撃が融合巨人を吹き飛ばして後ろの壁に激突させ、謁見の間を完全に崩壊させた。