異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第七話 痛し痒し

「ちっ、遅かったか」

 

 残念そうにずだ袋を放り投げるクソ小人族(バグシー)

 ぜってぇこいつ楽しんでたな!?

 そしてオブライアンさんがタウさんの両肩に手を置いて必死で説得しようとしている。

 

「いいかいタウ! ハヤトは確かにそりゃいい奴だけど、手当たり次第に女の子に手を出しては、責任もとらずに逃げ出すような奴なんだ! 僕は今まで何度も見てきたんだぞ! 王女様にだって手を出してはそのまま捨てるような男に、お前を嫁にやるわけには・・・」

 

 おい。・・・おい!

 色々言いたい事あるが手は出してねーよ!

 後何度もってのは何だよ!

 

「イレマーレのマナさんに、ゼンティルのレヴィータ様とレリアさんでしょ?

 何度もだし手当たり次第じゃない」

「お話の中で、馬で競争したお姫様とも良い雰囲気だったらしいね?」

「赤竜のラドゥーナさんともだよ」

「ザナちゃんにも色目使ってたしねえ・・・」

「決闘クラブの女とキスしてたって話を聞いたぜ」

「ハルギアにも迫られとったしの」

 

 使ってません! 良い雰囲気になってたりとかしません! 後最後のだけはない(真顔)。

 

「つまり何が言いたいかって言うと、ハヤトは見かけは良くても地雷だって事なんだ!

 アルテ達はもう手遅れだけど、お前はまだ間に合う! 彼女たちと一緒に爆死する必要はない!」

 

 さすがに腹が立ってきたな。

 と言うか地雷この世界にもあるんだ。

 

「例によってお前の先輩どもが概念を持ち込んでの」

 

 まあ火薬かその代替物さえあれば作れるものだし・・・

 

「つまり何が言いたいかって言うとね、彼にちょっかいを出すのは」

「兄さん」

 

 声に籠もった「響き」に思わず師匠共々振り返る。

 先ほどから派手に回転していたオブライアンさんの口がぴたりと止まっていた。

 

「私の泳ぐ相手は私が決めるわ。もちろん兄さんのことは愛してるけど、家族と言えど口を出すべきことじゃないと思わないかしら?」

「いやそうだけどねタウ・・・」

「に・い・さ・ん・?」

「 」

 

 にっこりと笑ったタウさんに、完全沈黙するオブライアンさん。

 この兄妹、そう言う力関係だったのか・・・

 

「タウの《加護》は《声の加護》だからね・・・強く言われると本当に誰も逆らえないんだよ・・・」

 

 弱い兄の悲哀である。

 しかし、シルヴィアさんと同じ《加護》ってことは、シルヴィアさんも似たようなことができるんですか。

 

「いや、アタシはそういうのないかねえ」

「《加護》も鍛え方次第じゃでの。こやつ(シルヴィア)はものまねとか演技とか、基本演芸に全振りしておる。タウハウシン殿はコミュニケーション方向に鍛えておるんじゃろうな」

 

 なるほど。ひょっとしてお二人の歌の聞こえ方にもそうした鍛え方が影響している?

 

「それは十分に有り得る話じゃな」

「だと思います。それとペトロワ師、タウだけで結構ですよ」

 

 にっこりと笑うタウさん。

 師匠も笑顔を返す。

 

「ならばわしもペトロワでよいわ。まあしばらくは自分の一座と思ってくつろぐが良かろう」

「お世話になります」

 

 どことなく無邪気な童女を思わせる仕草で、タウさんがぺこりと頭を下げた。

 

 

 

 翌日、早めに朝飯を済ませて、主立ったメンツでアントン一座の方に出かけていった。

 オレとカオルくんとタウさんだけでええやろと思ったのだが、どうも価格交渉のためだったらしい。

 まあタウさんは一日の大半はこっちにいるわけで、そうなればガイガーさん筆頭にウチの一座の猛者どもが実質追加の護衛に付くことになる。

 オレとカオルくんで緑等級二人分の報酬を考えていたアントンさんは、色々勘案して緑等級五人分の報酬を吐き出す羽目になった。ご愁傷様です。

 

「アハハハハ、見たかいあの顔! いやー、すっきりしたねえ」

 

 人の弱みにつけ込んで儲けるのもどうかと思うんですが。

 

「もちろんタウちゃんは守るさ。けどそれはそれ、これはこれ!

 後は客の入りで勝てば完勝だ! お前達も気合い入れなよ!」

「「「うーっす」」」

 

 ひどく上機嫌のシルヴィアさん。冷めた目で気のない返事を返す俺ら。

 クスクスと笑うタウさん。

 そのタウさんの笑いの意味に俺達が気付くのは、翌日夕方のことになる。

 

「何だこりゃあ!」

 

 怒髪天を衝くシルヴィアさんが、手にした紙切れをビリビリに引き裂いて、手の中で粉になるまでもみ潰す。

 もう一ミリ刻みの粉末レベルで、イランの学生ですら復元はできまい。

 何書いてあったんだろうな?

 

「~~~ほいっと」

 

 と、思ったら師匠があっさり修復してしまった。魔法パねぇ。

 それで肝心の中身は・・・何だ、かわら版かこれ?

 

『悲劇の歌姫! 偉大なるアントン一座に客が続々! 演芸戦争の決着は見えたか?!』

 

 なるほど、タウさんの事が話題になってアントン一座のお客さんが増えてると。

 まあ確かに有り得ることだったな。

 とは言えシルヴィアさんが荒れるのも分かる話だ。

 

「ふざけんじゃあないよ! 芸人なら芸で勝負しろってんだ!

 タウちゃんが襲われたからって一座の実力とは関係ないだろ!

 あんただって、死にかけたのにこうやって利用されるのは面白くないだろう?」

「いえ別に?」

「 」

 

 珍しいことにシルヴィアさんが絶句した。

 

「芸だって、見に来て貰えなければ意味がありませんでしょう?

 だからああやって話題作りに練り歩くんですし。

 きっかけはゴシップやスキャンダルでも、見に来たお客さんを満足させられればそれで勝ちでは?」

 

 つよい(つよい)。

 ただこの世界の人には受け入れがたい考え方かもしれないなあ。

 実際その辺すれた日本人はともかく、他のみんなは師匠とアーベルさん以外固まってるし、その二人にしても呆れ顔だ。

 あ、オブライアンさんだけはむしろあきらめ顔だな。

 

「わかるだろ? こう言う奴なんだよ・・・」

 

 奴隷商人のところに捕まってた時は薄幸の美女に見えたんだけどなあ・・・。

 結局セントル演芸戦争は話題作りに成功したアントン一座が売り上げでは一応勝利したものの、その利益の大半を護衛料としてハスキー一座が徴収する形に。

 領主様も明確な判断はしなかったため、シルヴィアさんは勝負に勝って試合に負けたのであった。ちゃんちゃん。




>イランの学生
1979年のイラン革命の時、アメリカは大使館の重要書類をシュレッダーにかけて隠滅したのだが、イランの学生の人海作業によって大半復元されてしまったそうな。
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