異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「待ってくれ! それではタウの護衛はどうなるんだ?!」
「お前達がか・・・」
その後もう一度アントンさんたちと領主の館に行き、シルヴィアさんが話を切り出した。
アントンさんは純粋に慰問だけ考えていたらしく、目を丸くしている。
対照的に領主さんは考え込む顔。ちらりとガイガーさんに視線をやった辺りは意外と強いのかも知れない、この人。
そこで横に座っていたやり手のキャリアウーマンみたいなおばさん(後で聞いたら冒険者ギルドの元締めだった)が口を挟んできた。
「領主様。少なくともそちらの黒い剣士殿は、亡くなられた騎士隊長殿を越える使い手かと存じます。一考の余地はあるのでは」
「・・・」
領主さんが顔を歪める。
良く見れば目の下にはクマが濃いし、顔色も悪そうだ。ぱっと見でわからなかったのは化粧で隠してるんだなこれ。芸人一座で化粧慣れしてるから分かったけど。
まあ自分の子供が人質になって丸二日経ってるんだ、それは心配だろう。それでも平静を装っているのは彼がこの町の領主で、捕らわれた他の人にも責任があるからだ。
お貴族様ってのも難儀な商売やで。
みんなが領主さんの答えを待っている間に、タウさんが口を開いた。
「アントン。私はこの救出劇に協力したいと思うの」
「タウ?!」
「捕らわれてるのって辛い事よ。ましてや子供なら」
「それはそうだが・・・危険だ! ただでさえ狙われているかも知れないと言うのに」
「待ってくれ、そちらにも何か事情があるのか?」
ギルドマスターのおばさん(男言葉)が質問してきたので
「あっちもこっちも問題だらけか。難儀なことだ。しかし妖精の歌姫よ、本当に突入するとなれば危険な仕事だ。舞台の上であっても安全は保証できないぞ」
「問題はありません。むしろ多少ですが助けになるかと思います」
「ふむ?」
首をかしげたギルドマスターに少し微笑んで、タウさんが領主さんの方を向く。
「今から私の力をお見せしたいと存じますが・・・領主様、少々お耳を塞いでいて頂けませんか?」
「?」
領主さんがギルドマスターの方を向く。
ギルドマスターが頷くと、彼はいぶかしげな表情ながらも、両手で耳を塞いだ。
「ありがとうございます。では皆様失礼いたしまして・・・『右手を上げなさい!』」
!?
なんだ、今思わず右手を上げたぞ!?
手が勝手に動いたというか・・・ああそうか、オブライアンさんを完封した「強く言われると逆らえない」ってやつか!
「はいそうです」
にっこりと笑うタウさん。
今手を動かさなかったのは、領主さん、ガイガーさんと師匠だけ。
ギルドマスターが感心したように頷いた。
「そうか。《声の加護》だな。人間でもそう言うものがいる。
ましてや
「人間を誘う妖しの歌声などというのは迷信のたぐいだと思いますけどね。
ただ、私のような《加護》の持ち主が自衛するには中々便利な使い方でして」
なるほどなー。
でもこんな力があるなら、何で奴隷商人に捕まってたの?
そう聞くとタウさんが困った様な顔で笑った。
「ハヤトくんが思っているほどには強くないんですよ、この力。
今みたいな簡単なことしかさせられませんし、連続では使えません。
例えば『手に持った武器を落とせ』とか『全員伏せろ』とかは可能ですけど、『弓に矢をつがえて撃て』は無理です。『弓に矢をつがえろ』とか既に弓に矢をつがえている状態で『矢を撃て』なら可能なんですけどね。
同じ理由で『牢屋の鍵を開けろ』も無理です。鍵を出した時点で我に返っちゃいますから」
なるほどなあ。でもサポート用の術として考えるなら、これメチャクチャ強力じゃね?
「違いない。色々悪用法は思いつくのう」
ひっひっひ、と笑うペトロワ師匠。この人時々マジで悪い魔女にしか見えなくなるな。
「ふむ・・・
「そちらの剣士殿が突出しておりますが、他の方々も恐らくは緑等級、一騎当千の猛者揃いかと。魔女殿はこの私でも分かるほどの魔力をお持ちですし、そちらの紫色の髪の術師殿も歳に見合わぬ高位の使い手とお見受けしました」
俺のことである。
《加護》で女装すると紫髪のロングヘアーでアニメ顔の美人さんになるからな。
まああくまで女装だから胸は無いし、つく物はついてるんだが。
「冒険者ギルドからも緊急依頼を出して冒険者を募ることはできますが・・・正直なところ、青等級ばかりでは下手すれば足手まといになるでしょう」
「うむ・・・」
領主さんが頷く。
「となると、後はアントン、お前の意向だけが問題になるな。
無論辞退したとしても責めはせん。オアンネスの歌姫についてはお前の許可を取る必要があるだろうがな」
「お願い、アントン。別邸にはお姫様の他にも子供がいるんでしょう? 助けたいの」
「・・・」
室内の視線がアントンさんに集中する。
「・・・」
しばらく沈黙した後、アントンさんが深い溜息をついた。
「わかった。だが頼む。ちゃんと無事で帰ってきてくれ」
「はい」
タウさんがにっこりと頷いた。
それから作戦会議になった。
互いの戦力情報の交換。
うちの戦力はいつもの通り。
アントンさんのところは青等級クラスの用心棒兼下働きが二人と、赤等級クラスの人が七人。まあ街のチンピラや盗賊ゴブリン相手なら問題ない戦力ではある。
ギルドの冒険者は青等級五人、赤等級六十人ほど。
それに騎士団の生き残りが青等級七人。兵士百人。
囚人にも青等級が何人かいる。恩赦をエサにできるかも知れないとのこと。
結構な戦力ではあるが、緑等級が率い、青等級十五人で固めた精鋭部隊が為すすべなく敗走したのであるから、まともにやったらかなりの損害が出るだろう。
それはいいのだが、その後うちとアントン一座の芸人たちの構成や、身につけた芸の情報などを事細かに聞かれた。
まあ確かに慰問に行くんだから芸は重要だけど、そこまで細かく聞く必要ある?
「それがあるのだ。これを」
「なんですかこれは・・・劇の脚本? 『苦しみの船』?」
首をかしげてアントンさんが脚本を手に取る。
それを覗き込むタウさんとウチの座長。
「ふむ・・・王家所有の、魚を獲って干物にする工場兼用の巨大漁船・・・そこで奴隷の如く働かされ、時にはむごたらしく殺される平民、それが主人公の青年によって初めはストライキを、最後には反乱を起こし、それがきっかけとなって王制は転覆する・・・?」
蟹○船だこれーっ!?
領主は今度中の人がケンシロウをやるデレマスの武P、ギルドマスターのおばさんは美城常務のイメージ。
>蟹工船
小林多喜二のプロレタリア文学。
多分くだんの民主主義勇者が流した。