異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
アントンはじめ、一座の芸人たち30人ほどが身体検査を受けて別邸に入る。
その中にはタウハウシンに付き添うオブライアンとラファエル、アルテの姿もあった。
「大丈夫かい、タウ?」
「ええ。兄さんやアルテは随分と落ち着いてるのね」
「まあねー」
「これでも結構修羅場くぐってたから」
「意外。あれだけ喧嘩とか逃げ回ってたのにね」
くすくすと笑う妹に、兄としては肩をすくめるしかない。
「まあ兄ぎみはこれでいざというときは頼りになるのですぞ。
知識も術もありますし、意外と腹も据わってますからな」
「単に鈍いだけでは?」
「私も同意見」
「まあそうともいいますですぞ」
「ちょっと!? アルテはともかく鈍いのはタウも同じだろ!」
「おい、無駄口を叩くな」
覆面で顔を隠した「
四人は揃って肩をすくめると、無言で奥に進んだ。
「・・・」
武器を構えた「
その顔の前でひらひらと手を振ってみるが、反応は無い。
これ本人はマジメに見張りを続けているつもりなんだろうな。
(
へいへい。
扉を開けて師匠が《
説明は俺の腹の中でするからかんべんな!
「~~~」
一分ほどの詠唱と共に、部屋の中に吸い込まれたはずの人質が現れる。
魔力反応もほとんどないし、本物にしか見えねえ。
あれなんかコツあるんですか?
(まあの。それより急いで次に行くぞ)
うーっす。
(騎士殿は人質の方々を落ち着かせて頂きたい)
(心得た、ペトロワ師)
あらかじめ領主さんに頼んで人質の慰撫役として腹の中に入って貰った騎士さんが、人質の人達に説明を始める。それを聞きながら俺はこっそりその場を離れた。
「!」
テロリストの男はハッと気付いた。
周囲をキョロキョロと見渡して、手に持った剣の感触を確かめる。
「どうした」
「いや・・・」
相方が訝しむのを流し、鍵穴から中を覗き込んで、中の人質の様子を確認。
不安そうにざわめいたり、そうした人間をなだめたりする声が僅かに聞こえる。
安堵のため息。
どこにも異常がないのを確かめて、男は定位置に戻った。
作戦はこれからが本番なのだ。
気を引き締めなくては・・・全ては正しき自由な世界の為に。
タウさんたちとは別に、俺達も別邸に潜入していた。
光学迷彩をかけて侵入、左翼端っこ、人質の部屋の近くから中を伺う。
少し待つと、一階の左翼の部屋から人質が連れ出されるのが見えた。
(小僧、他の部屋はどうじゃ)
一階の右翼の人質も連れ出されたみたいですね。
お姫様のところや、ほかのところは動きはありません。
ちなみに種はミストヴォルグの端末ロボ、ミストソーカルとミストライカである。
狼型のミストライカはお姫様の部屋の外で聞き耳を立て、鷹型のミストライカは俺達の反対側、右翼の部屋の窓から中を伺っている。もちろんどっちも光学迷彩をかけてだ。
(よし、それじゃ潜入するよ)
オブライアンさんから念話が来たのを確認し、俺達も三階の窓から屋敷内に潜入する。
潜入方法は、ごくごくクラシックに窓を割って、腕を差し込んで鍵を開けた。
音は師匠が消してくれたし、割れた窓も修復はばっちり。
便利だな魔術!
と言うわけで時間は戻る。
俺は最初の人質を助けた後、透明になって天井に張り付き移動していた。
考えてみればこれ初めてやったの、タウさんを奴隷商人から助ける時だよな。
今はそのタウさんと協力して人質救出作戦してる。不思議なめぐりあわせだ。
あの時は透明化が一時間も保たなくて、ギリギリで脱出して途中で行き倒れたんだったな・・・俺も結構強くなったことよ。
母屋を通り過ぎて三階右翼へ。
ここで見張りの目を盗んでアーベルさんとカオルくんが一階に下りていく。
テロリストたちと同じ覆面と服、武装もそっくりだ。
アーベルさんには師匠が《幻影変装》をかけている。
正直全員俺が助けられればいいのだが、時間もかけられないし、あっちは別働隊に任せた方がいい。
とにかく、まずは俺の担当、四つの部屋の人質を全員解放することだ。
アルテ達が大広間で劇の大道具の用意をしていると、着飾った人々が入ってきた。
しかし最高級の衣服は汚れ、しわになり、血の染みが生々しく残っているものもある。
顔にはあからさまに恐怖や絶望の表情が浮かび、そうでなければパニックを無理矢理押さえ込んでいるような奇妙な無表情。
(こんな人達に劇を見せるの?)
(娯楽とは心穏やかなればこそ楽しめるもの。
少なくとも恐怖に怯える人々が見て心に残るものではないのですぞ。
そういう意味ではこれを考えた奴は底抜けの愚か者ですぞ)
(ともかくここに30人。見張りもこちらに集まってきている。ハヤト君たちの仕事も楽になるさ)
(だといいけど・・・)
二階と三階の人質を全員解放し終えて一階に向かう。
師匠、大丈夫です?
(大丈夫なわけなかろう。四つも幻影を維持しとるんじゃぞ。念話とアーベルの幻影変装を足せば六つじゃ。いくらわしとてこれだけの術の維持は辛いわい)
すいませんね、でも正直師匠がこの作戦の鍵なんで・・・ともかくあと一つ。アーベルさんとカオルくんがお姫様助けて、その後大広間の人質を助ければ作戦完了だ。
(ハヤト、そっちはどう?)
(四部屋目の人質を助け出した。後はお姫様と・・・)
「~~~~~~~~~~~!」
アルテからの通信に答えようとした瞬間、怒号と炸裂音が一階の廊下に響いた。
唐突な轟音に、ミストヴォルグセンサーを解放する。
それと同時に母屋一階の奥の方・・・お姫様が捕らわれているはずのところから・・・なんだ? ビームガトリングというか、そんな感じの半透明のエネルギー弾が窓を破壊して夜空に飛び出していったのが見えた。
(
あ、イレマーレのダンジョンで、『盾』がブッパしてきたようなやつか!
続いて窓から閃いたのは、俺も良く見慣れた、僅かに緑のかった稲妻。
カオルくんのサンダースウォードだ。
アーベルさんが一緒なら大丈夫かと思ったが、敵のボスに見つかってしまったらしい。
どうする?
(ええい、こうなったらプランBだ!)
プランB? そんなんありましたっけ?
(あるわけないだろ)
やっぱりぃぃぃ!
その行き当たりばったりなとこ、どうにかした方がいいですよ!
(うるさいね! ともかくやるしかないだろ!
あたしらはアーベル達の助っ人に行く! アンタは『あれ』をブッパして、まずはその腹の中の人質だけ送り届けな! その後は大広間だ! お姫さんはあたしらに任せな!)
ちっ、しょうがねえな!
口だけで反抗を示しつつ、俺は預かってきた秘密兵器を解き放った。