異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十二話 プランB

「おい、地獄さ行ぐんだで!」

 

 劇が始まった。

 老労働者に扮したアントン一座の役者が、これから行く場所をこう評する。

 あちこちの村や町から強制連行された人々が工船に連れて行かれるシーン。

 

(あの親玉っぽい奴、戻ってこないよね)

(お姫様がどうのこうの言ってたみたいだけど、それにしては遅いよね)

 

 劇が進行する中、ペトロワの念話ネットワークでひそひそ話をするアルテとオブライアン。

 「観客」である誕生日パーティの招待客たちは微妙な顔で劇を見ているが、そこに主賓であるはずの領主の娘はいない。

 

(ハヤトたちはどうなの?)

(四部屋目の人質を助け出した。後はお姫様と・・・)

 

 怒号と炸裂音が響いた。ハヤトやアーベルのような耳を持っていない彼女らには、それがどこからの音かは分からない。だが上の階でないのは間違いなさそうだった。

 

「きゃああっ!?」

「何!? なんだ!」

「動くな、肥え太ったブタどもめ!」

 

 動揺する人質たち。テロリストが剣や槍を突きつけて大人しくさせる。

 次の瞬間大広間の扉が破られた。

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」

 

 おたけび。

 怒号。

 渇望の叫び。

 人質やテロリストはおろか、知っていたアルテ達でさえ一瞬固まった。

 

 なだれ込んできたのは兵士、騎士、冒険者、囚人。

 青等級は十人と少しだが、とにかく数が多い。ゆうに百人は超えている。

 彼らに比べれば質の高いテロリスト側だが、それでもこの場にいるのは二十人ほど。

 あっという間に人の波に飲み込まれて動けなくなる。

 

「死ねやおらぁぁぁ!」

「かみさんと子供に会いに行くんじゃぁあああ!」

「おお神よ、我に自由を! しからずんば死を!」

「お前も! お前も! お前もっ! 俺のために死ねっ!」

 

 目を血走らせてテロリストに襲いかかるのは、一人殺せば恩赦を提供してやると約束された囚人たち。

 

「うっひょぉぉぉぉ! 稼ぎ時だあ!」

「金貨100枚! 金貨100枚! 金貨100枚!」

「ベンズ白金貨で十枚! エイビス金貨で百枚! ホーティ銀貨で一千枚! ダコック銅貨で一万枚ィ!」

 

 一方で人質に群がる・・・もとい、救出しようと駆けつけるのは冒険者たち。

 彼らはテロリストか人質一人につき、恩赦の代わりに金貨百枚を約束されている。

 日本の貨幣価値に直すとおおよそ百万円だ。

 その日暮らしの赤等級冒険者にとっては目もくらむような金額。

 それよりランクの高い青等級冒険者にとっても、そうそう手に出来る金ではない。

 

「・・・」

「ど、動揺するな! 人質の救助を最優先に考えろ!」

 

 今や死兵と化した囚人や冒険者にちょっと・・・いや、かなりドン引きしつつ、生き残りの騎士や志願した兵士達が何とかそれをフォロー。

 もちろんアルテ達の方に襲いかかるテロリストたちもいたが、そうした面々はアルテ達の手によってあっさり撃退され、二の足を踏む間に飢えた人の波に飲み込まれる。

 

(アルテ! タウさん!)

(ハヤト!)

(ハヤトくん!)

 

 そこに俺も駆け込む。

 

「え」

「あ」

「うおおっ?!」

 

 人質たちと、タウさんを含むアントン一座の非戦闘員たちの姿が消えた。

 彼らを担いで運びだそうとしていた冒険者たちも一緒に。

 取りあえず俺達は脱出! 残りはあっちの人に任せる!

 

「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 冒険者と囚人と兵士とテロリスト、その場にいる全員が俺たちを呆然と見送った。

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「うおおおおおお、死ねぇぇぇぇ!」

「堕落した貴族の走狗どもがぁぁぁ!」

「テロリストだ! なあお前テロリストだろう! 首おいてけぇ!」

「アイアムフリーダーム!」

「お前が俺のフリーダムになるんだよ!」

「い、イタガキ死すとも自由は死せずー?!」

 

 数十秒の静寂の後、大騒ぎが再開した。

 質や装備はやはりテロリストたちの方が上。

 しかし恩赦、あるいは金貨百枚に目を血走らせた無数の荒くれ者どもに群がられては為すすべもない。軍隊アリにたかられるライオンの如く、程なくテロリストたちは全員沈黙した。

 

(ところで飛び込んできた時に呼ぶ名前がタウとアルテだけなのはどういうことだろうですぞ。吾輩とオブライアン殿もいたというのに)

(所詮ハヤトはハヤトって事だよ。人間の本性ってこう言う時に出るよね)

 

 ええい、黙ってろそこの妖精コンビ!

 

 

 

「それじゃ吐き出しますよ」

「えっ」

 

 別邸の斜め向かいにある別の貴族のお屋敷。

 今は臨時の指揮所になっている。

 そこの庭に、腹の中に詰め込んだ百数十人を吐きだして俺は別邸にとって返した。アルテ達はこの人たちの護衛よろしく! まだ万が一があるかもだし!

 

「ちょっと、こんな人数どうしろと!?」

「ありがとう、ありがとぉぉぉ!」

「た、助かった・・・」

「お腹減ったよぉ・・・!」

 

 安堵と混乱の声が後ろから聞こえる。

 すいません、色々面倒だと思いますけど後よろしく!

 

「逃げるなあああ! 混乱から逃げるなああ!」

「解放するにしてももうちょっとやり方ってあるでしょぉぉぉ!?」

 

 後ろから悲鳴が聞こえるがすんません、無視!

 しゃーねーやん、時間もないしお姫様まだ助けてないんやから!

 

 

 

 俺がはす向かいから戻ってくると、大広間ではまだ騒乱が続いていた。

 テロリストども手強いな。あの戦力差でまだ戦いが続いている・・・

 

「そいつの首は俺が取ったんだぁぁぁ!」

「やかましい! 金貨百枚は俺のもんだぁぁぁ!」

「よせ! おまえらやめんか! おい! やめなければ全員収監するぞ!?」

「よし、首は俺が貰うから胴体はくれてやる! それでどうだ!」

 

 ・・・。

 うん、聞かなかったことにしよう!

 俺は迂回してお姫様が捕らわれているはずの部屋を・・・うお!?

 今度は水平射撃で放たれる魔弾(マジックミサイル)

 部屋の窓どころか壁が丸ごと粉砕され、屋敷の外壁も粉々になる。

 粉砕された壁から一座のみんなが出てくる。全員無事だ!

 

 けどお姫様は・・・そう思った瞬間、みんなの後を追うようにそいつが姿を現した。

 7~8歳、リタと同じ位だろうか。

 豪華なドレスを着た女児を小脇に抱え、棺桶ほどもある巨大な黒い直方体が融合した右腕を軽々と持ち上げている。

 チューブらしきものが直方体から体に繋がり、先端には砲門。

 話にあった射撃用の推定アーティファクトか!

 それを体に接続しているのは、意外なことに荒くれではなく、眼鏡をかけた新聞記者か学者の卵といった方が良さそうなやせ型の男。

 

「さあ、どくんだ! 独裁者の走狗どもめ!

 革命の火は決して消しはしないぞ!」

 

 目には狂気の光。

 それが別邸を襲撃し、女子供を人質に取ったテロリストのリーダーだった。




「囲んで棒で殴れ」は最強の戦術やでえ・・・。

>「おお神よ、我に自由を! しからずんば死を!」
アメリカ独立の時にパトリック・ヘンリーという議員が吐いた名セリフ。

>「お前も! お前も! お前もっ! 俺のために死ねっ!」
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ。
結局キリコ以外死ぬ(ぉ

>金貨百枚
ちなみに前作のヒョウエ君パーティ(実質黒等級)が一日で稼ぐのが金貨330枚位(ぉ
どうでもいい設定ですが、ダコック銅貨=大黒天 ホーティ銀貨=布袋 エイビス金貨=恵比寿 ベンズ白金貨=弁財天。

>首おいてけ
みんな大好き島津の豊さんの決め台詞。

>「逃げるなあああ! 混乱から逃げるなああ!」
陽のコミュ障、竈炭治郎くんの名セリフ。
後からこれが猗窩座に対する最強の煽りだったと判明するの強すぎる。

>お姫様
イメージは桃華ちゃまでひとつ(ぉ
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