異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
第十五話 三人目の魚人妖精
「演奏を続けてくれ。もし音楽が愛の糧であるならば」
――シェイクスピア、『十二夜』――
「その男だったのは間違いないんじゃな?」
だと思うんですけどね。
最初の時も今回も、じっくり見た訳じゃないので絶対の確信はありません。
「ただ、ハヤトくんのラジコン・・・ええと分身みたいなのが奴を追って、見失ってしまったと言う事自体傍証になるとは思います」
「だなあ。前に試したが、ありゃ簡単には逃げられねえ。俺でも一苦労だ」
とはアーベルさんのお言葉。
前に彼の思いつきで「かくれんぼ」を試してみたのだが、隠れる方も見つける方も、アーベルさん相手に中々良い成績を残した。
透明化しても俺本体と同精度のセンサーを持つミストソーカルからは簡単に逃げられない。
はずなのだが、逃げられた。
「ただ者じゃあないって事だね」
シルヴィアさんの言葉に、全員が頷いた。
それはそれとして俺達は芸人である。
演じなければおまんまの食い上げである。
今回救出作戦を合同で行い、結構仲良くなったと思うのだが、芸人としてのライバル意識は別らしい。
と言うわけでここ、シチ・カンサでも演芸戦争が勃発した。
当初はかなり向こうに客を取られた。
話題になった大事件を演劇にしたらそりゃ見たくなる。
日本でも何か大きな事件が起こればニュースやワイドショーはその話題一色になるし、なんなら映画も作られる。それと同じだ。
アントンさん、やはり話題を作ったりそれに乗ったりするのはうまい。
しかし、前の町で悔しい思いをした俺達とて学習はする。
欲望さえあれば人間に不可能はない! 人間は成長するのだ! してみせるっ!
名言を最悪に改変してる気がするが割と真理ではある。特にシルヴィアさん。
そのシルヴィアさんだがなんと、あの時お姫様に俺のことを話すようにお願いしていたというのだ。加えて公演が終わった後、アーベルさんたちと夜の町に繰り出し、手分けして噂を広めて回っていた。
おかげで一週間位後には貴族にも庶民にも俺がお姫様を助け出した張本人というのが広く知れ渡り、向こうに負けない程の客が押しかけて来るようになった。
公演の内容も変化が加わり、手品に加えてテレポートとロケットパンチを駆使してお姫様を助け出す寸劇をやらされたが、これがメチャクチャ受けた。
ちなみに犯人役を演じてるのはカオルくんなので股間のロケットパンチもへっちゃらさ!
まあロケットパンチも幻影なんだけど
結果、シチ・カンサでの動員数はほぼ互角に終わった(たぶん)。
タウさんの警護料もぶんどったから、懐具合は圧勝である。
「よーし、まあ上々だ! 次の町では動員数でも圧倒的に差をつけてやるよぉ!」
「おー」
やる気のない同意の声と、「早く出て行ってくれ」という同業者の嘆願の視線に見送られながら俺達はシチ・カンサの町を発った。
すいませんねえ、ほんと・・・。
例によって移動しながらのロボットアニメ上映会。
『なんじゃこりゃぁ~~~!』
その言葉と共に、仲間の一人がメカごと爆散する。
『デニムー!』
仲間達の悲痛な叫び。
見ているアルテ達も息を呑んでいる。
『アウター大作戦ゴラングル』、最初の殉職シーンである。
『デニムは死んだ。若い命を散らせて死んだ。しかしゴラングルに泣いている暇はない。
彼が命を捧げた正義を守り抜くことを心に誓い、明日への戦いに邁進していく。
戦え、チーム・コング。戦え! ゴラングル!』
ナレーションと共に本編が終わり、EDが流れ始める。
「うう、デニム~。好きだったのに~」
沈黙してる他の面々に対し、べしょべしょ泣いているのはタウさん。
意外だな。のめり込むタイプだったか。
「ハヤトくん、慰めてください~」
「ちょっとタウ! どさくさ紛れに抱きつかない!」
「ハヤト、アタシのことも慰めておくれよ~」
「シルヴィアさんも!」
さて、次の回を上映するかな・・・
「お兄ちゃんの目がうつろだ・・・」
鳴り響いた鍔鳴りはちょっと音が弱かった。
数日の移動を経て、俺達はペカ・カンサに到着した。
「おう、シチ野郎の町から来たのか! あっちは汚くてくさくてつまらん町だったろう!
この町は期待していいぜ!」
前にも言ったがシチ・カンサとは仲が悪く、ラーメンの本家元祖で争っている。
それでも特に咎められたり足止めされたりすることはなく、俺達は(アントン一座も)ペカ・カンサに入った。
「チェーェェェンジ、ジェッターII(ツー)! 分身殺法! バァァァニング! シャドウッ!」
例によっての高速設営。
タウさんと話をしに来たアントン一座の人達がかくーんとあごを落としている。
街に入ったが昼くらいなので、あっちも今日は公演無しだ。
「お兄ちゃんお茶だよー」
「はい、どうぞ。お茶菓子です」
ありがとうございます。
残りの雑事を片付けるみんなを尻目に一足早いティータイム。
タウさんもお客さんなんだからのんびりしてればいいのだが、リタと一緒にお茶の用意をしてくれている。ええ人や。
アントン一座の人も交えてティータイムを過ごした後は宣伝である。
「~~~~♪」
響くタウさんの歌声。
俺達はアントン一座の馬車の中で、フードかぶってしゃがみこんでる。
当たり前だがタウさんの護衛をしてたら俺達が一座の宣伝に出れない。
シルヴィアさんとアントンさんでちょっと話したらしいが、「どうせ顔見せだけなんじゃから、小僧とカオルだけ幻影で見せればよかろう」という師匠の一言で解決した。
なので、今頃うちの宣伝馬車では俺(女装)とカオルくんの幻影がニコニコと手を振っているはずである。
「~~~っ!」
「!」
歌が途切れた。
俺とカオルくんは咄嗟に立ち上がってタウさんの周囲を守る。
「ハヤトくん、何か見える?」
いや・・・ミストヴォルグセンサーには感無しだ。うん?
「うん?」
二人同時に気付いたらしい。
目を見開いたタウさんの視線の先。
タウさんと同じオアンネス、やや歳を重ねた感じの男性が、タウさんと同じような表情でこちらを見ていた。
>信念さえあれば人間に不可能はない! 人間は成長するのだ! してみせるっ!
ジョジョ第一部の名セリフ。ジョナサンを猿扱いするディオに対して放った言葉。
この後爆熱ゴッドフィンガー(手袋を燃やしただけ)によってディオの気化冷凍法を破る。
>犯人役のカオルくん
ガイガーさんは演技力皆無、アーベル・ラファエル・オブライアンは見るからに妖精、他は女子供ということで、消去法で彼女です。
>なんじゃこりゃぁ~~~!
「太陽にほえろ」のジーパン刑事、演松田優作の名セリフ。
名セリフ過ぎて、殉職と検索するとこの人ばっかり出てきて困った(ぉ
「ジーパン」なので「デニム」だが、ガンダムのヒゲ親父とは関係ない。