異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「キンウィルさん!?」
「タウ・・・タウハウシンか!」
互いの名前を呼んだ後、オアンネスのおじさん・・・キンウィルさんが小走りで駈け寄って来た。
「大きくなったなあ。元気だったか? 地上に出て来たんだな!」
「兄さんもいるのよ。別の一座だけど!」
そのまま少し話していたが、俺達も仕事中だ。
おじさんは自分の家を教え、タウさんも宣伝が終わったら行くと約束してその場は別れた。
「キンウィルさんが?」
「そう言う訳なので、兄を借りていってよろしいでしょうか?」
「構わないよ。そう言う事なら行っといで。でも日が暮れる前にね」
「ありがとうございます!」
そう言うやりとりがあって、ハスキー一座の野営地からオブライアンさんを連れてキンウィルさんの家へ。
・・・大きくはないが結構豪華な家だな? 金持ちの別荘とか言われたら普通に納得する。
「おお、タウ! ルパ! 久しぶりだなあ! 大きくなったもんだ!」
「お久しぶりです、キンウィルおじさん」
「そちらは?」
「お世話になってる一座の方々です。ここのところ物騒なので」
変に心配をかけてもいけないのでそう言うことにしてある。なお「ルパ」はオブライアンさんのこと。本名であるグルパーゴの愛称らしい。
「そうかそうか、まあ入りなさい。とっておきの香草茶とビスケットを御馳走しよう」
丁度お茶の時間でもあり、俺達は再びティータイムに突入した。
何だこの香草茶、俺達の飲んでるのとは香りがまるで違うぞ!?
ビスケットも超高級品だこれ! 吸血鬼の洞窟から持ち出して来た、ディテクの有名店のそれに勝るとも劣らない。
「うわ、おいしい」
「そうだろうそうだろう。こればかりは海の中では味わえない味だからねえ。
陸に上がってきて、すっかりはまってしまったよ」
そりゃそうだろうな。
なんでもこの近辺では香草茶の栽培が盛んで、あちこち放浪してここに流れ着いたキンウィルさんはその魅力に取り付かれてしまい、喫茶店のアルバイトから店主に、香草茶の栽培にも手を出して、今ではいっぱしの香草茶ブローカーなのだとか。
「事業が大きくなりすぎてもう私の手を離れてしまってね。最近は店や商会を時々見に行くくらいさ。
今は香草茶のブレンドを研究するくらいがお仕事だよ。まあ半分道楽だけどね」
はー・・・ツテもなかったろうに大した人やなあ。
「そう言えばおじさんはどうして陸に上がったんです?
兄さんみたいに人間の世界に興味を持ったんですか?」
「あはは、まあそんなところかな・・・」
「族長の末娘に手を出して、ばれたんで逃げ出したんだよ」
時が止まった。
頭をかくポーズのまま停止するキンウィルさん。
カップに手を伸ばしたまま固まる俺。
チベットスナギツネのような表情でオブライアンさんを凝視するカオルくんとタウさん。
やがて時が動き出した。
キンウィルさんに集中する視線。
多分俺もカオルくんもタウさんも、ガラス玉みたいな目をしていたと思う。
「にいさん」
やけに平板な声でタウさんが言った。
「逃げ出したって、どういうこと?」
「タウはまだ小さかったから覚えてないだろうけど、キンウィルさんってかなりのプレイボーイでね。あっちで成人前の娘に手を出して、こっちで人妻といい仲になって、その挙げ句にこれさ」
まあ外のことに興味があったのも本当だし、僕も色々教えて貰ったりはしたけど、とオブライアンさん。
「要するにハヤトの同類ってこと」
ちょっと待てぇぇぇぇ!?
まあその、色々あれこれはあるけど、少なくとも俺は女の子に手をつけて逃げ出したりはしないぞ!
「一座の女四人もモノにしておいて何を言うのかなあ。生殺しにしてるだけでしょ」
してへん!
「マナさんにレヴィータさんにレリアさんに、唇奪ってそのまま逃げ出してるじゃない?」
「お隣の町では領主様のお姫様の唇も奪ってましたねえ」
いやそれは! マナさんたちは向こうからキスしてきたのであって!
後お隣のお姫様はほっぺにチュウしてくれただけだから!(絶叫)
「後兄さん、モノにしたのは四人じゃなくて五人だから」
「だからハヤトはやめろって言ってるだろ!?」
「口を出さないでって言ってるわよね?」
一言で黙らされるオブライアンさん。弱い。
「ほほう、中々の豪の者だねえ」
一方でキンウィルさんは感心した顔。
それはもう長井業マニアですからってそうじゃない!
「しかしどうせ逃げ出すなら唇だけじゃなくて・・・」
そこで女性陣の絶対零度の視線が集中し、キンウィルさんは口をつぐんだ。
小声で隣のオブライアンさんに話しかける。
「グルパーゴ・・・タウは怖い女になったなあ」
「ええ・・・ハヤトだけはやめろと言ってるんですが、このとおりで・・・」
「聞こえてるわよ二人とも」
びくり、と震える魚人妖精二人。
弱いなあ。
「ハヤトくんも偉そうに言える立場でもないんじゃ?」
カオルくんの冷たい視線に、俺も沈黙させられた。
弱い・・・
「ま、まあそれはそれとして!」
絶対零度の雰囲気がブリザードくらいになったところでキンウィルさんが強引に話題を変えた。
「君達も随分あちこち旅をしてきたみたいだけど、どのへんから来たのかな?」
「僕達は全員ロンドからですね。座長さんたちはもっとあちこち回ってるみたいですけど」
「ロンドからか! 随分遠くだな。
・・・それで聞きたいんだが、『アストラル・パロット』という宝石のことを聞いたことはないか?」
今までとは打って変わって真剣な表情のキンウィルさん。
俺達は顔を見合わせた。
(・・・と言うことですけど、師匠、知ってます?)
(なるほど・・・取りあえずこちらに連れてこい。
チと話が長くなる)
念話である。
タウさんを狙う刺客がまだうろついているので、念のために随時かけて貰っているのだ。
視線を交わした後、代表してオブライアンさんが口を開く。
「僕達は知らないけど、一座にいる魔女のお婆さんなら知っているかもしれないですね。
今行きますか?」
「! わかった、案内してくれ。恩に着るよ」
「アストラル・パロットと言うたな」
「は、はい。ご存じで・・・?」
野営地。師匠のテント。さすがに六人も入ると結構狭い。
「その前に聞いておくが、魔力欠乏症じゃな?」
「! はい、そうです・・・」
頭を垂れるキンウィルさん。
何です魔力欠乏症って。やばそうなものだってのはわかりますが。
「まあ簡単に言うと
術師でなくとも生き物は常に微細な魔力を使って身体を動かしておる。
命はそもそも強力な魔法であるがゆえにな。
それが抜けるんじゃ、どうなるかは分かろう」
それはまあ・・・。
ちなみに
つまり人間の精神と肉体は「魂―アストラル体―エーテル体―肉体」と、四重構造をしているわけだな。
「アストラル・パロットはそれを治療するための宝石じゃ。
パロット・クレソベリルという宝石の変種でな。
身内か恋人か友人か・・・ともかく大事な誰かが魔力欠乏症にかかっておるんじゃな」
「はい・・・」
そこで厳しい顔になる師匠。
「先に言ってしまえば、手に入れる当てはある。しかし覚悟はよいか?
お主、それなりの資産家のようじゃが、お主の資産全て、あるいは命をも失うかもしれんぞ」
滅多に見ない師匠の厳しい顔に、俺達は言葉を失った。
> パロット・クレソベリル
実在の宝石です。
淡い緑色のクレソベリル(クリソベリル)をこう呼ぶのだそうで。