異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
カオルくんのサンダースウォードで丸焼きにされて香ばしい匂いを立てるオウム大仏。
というかあれ一応生体だったんだな。
周囲を警戒しつつ負傷を治療したりしているうちに、その姿がすうっと薄れて消えた。
こう言うのは大体魔力結晶が残るのだが、ボスキャラっぽいこいつだと多分・・・ビンゴ!
「なんだこりゃ?」
「箱ね」
中から出て来たのは折りたたみ式の60センチほどの収納ケースだった。
使わない時は畳んでぺったんこにできる奴。
世界が違っても、行き着くところは同じらしい。
「それじゃご開帳・・・おおっ!?」
箱の中にあったのは短剣や小さな箱、そして透明なケースに収められた・・・
「ねえオブ、これって!」
「ああ、これだろ!」
「間違いないですね! 強い魔力を感じます!
ペトロワさんに教えて貰った外見とも一致します! アストラル・パロットですよ!」
盛上がる一同。
確かに俺の目から見ても強い魔力があるのが確認できるし、淡い緑の宝石の卵の中に燃えるようなゆらめきが見える。
間違いなく目的の品なのだが・・・
「ねえハヤトくん、これって・・・」
どう見てもアレだな・・・。
「キンウィルおじさん喜ぶよ! 早く持って帰ってあげないと」
無邪気にアストラル・パロットのケースを持ち上げるオブライアンさん。
どう見てもスーパーで売ってる10個入り卵パックにしか見えないそれを見て、俺とカオルくんはこっそり溜息をついた。
「お、結構いいもんだな。これ俺が貰ってもいいかな?」
「相談次第だけど、そう言うの使うのアーベルくらいだし、多分大丈夫じゃない?」
短剣を抜いて軽く振ったり突いたりしてるアーベルさん。
一方オブライアンさんは小箱らしきものを取り出している。
「これは・・・ハヤトくん、カオルくん、ちょっと来てくれる?」
ん? これって・・・
「『坂口安吾選集』!?」
「あ、やっぱりニホンのものなんだ? カンジが書いてあるからひょっとしたらと思ったけど」
小箱に見えたのは、紙のケースに入ったハードカバーの本だった。十二冊セット。
「巷談社、昭和五十七年・・・うん、やっぱり日本の本だね。それでか」
「ダンジョンの産んだモンスターが坂口安吾の名言喋るわけないもんなあ」
「どういうこった?」
つまり、あれはただのモンスターじゃなくて、魔力のある物体の周囲にダンジョンの魔力が集まって姿をとった、「守護者」と呼ばれるたぐいのモンスターだったわけですよ。魔力結晶が落ちないのもそのせい。
あのイン・・・もといオウム大仏はこのアストラル・パロットを中心にして生まれたモンスターだけど、この本も取り込んだせいでそうした情報も一緒に取り込んだんじゃないかなって。
この箱も、ひょっとしたらオリジナル冒険者族が置いていったか、あるいは遺品だったのかもなあ。
「そうなると、あの羽根を散らせてダメージを無効化したのはその短剣の能力を取り込んだからって可能性もあるね」
あーなるほど。まあ後で師匠に見て貰おう。
ともかく目的は達成したんだ、さっさと帰り・・・
「おっと、そのアストラル・パロット、こっちに渡して貰おうか」
後ろからかかった声に、俺達は一斉に振り向いた。
「で、何を渡せって?」
サンダースウォードを突きつけるカオルくんの冷たい声。
既に彼の仲間は全て夢の世界に旅立っていた。
アルテホームランされた奴はピクピク痙攣していてちょっとやばそうだが、まあ大丈夫だろう、うん。配信魔法は切ってあるし。
「め、メチャクチャな賞金をかけてアストラル・パロットを欲しがってる奴らがいるんだよ・・・それで、おたくらがあのオウムとやりあってるのを隠れて見てたらアストラル・パロット見つけたっていうから・・・」
マジカルリングで拘束した頭目が自白する。
顔はロケットパンチを食らって盛大に腫れ上がっているが、別に心は痛まない。
というかオウム大仏との戦いを手伝っていれば一個位やってもよかったがなあ。
あれに勝てない程度の戦力で、俺達に勝てると思ったんだろうか。
「実力差は把握してたんだろ? せめて不意打ちするなり人質を取るなりすべきだろ。
状況判断といい、詰めの甘さといい、ほんとになってねえな、ったくよ」
心底不機嫌そうに吐き捨てるアーベルさん。
あの、こいつらがなって?たら、俺達ピンチになってたんですが。
「それはそれ、これはこれだ。雑な仕事を見てるとむかつくんだよ」
プロフェッショナルの矜持みたいなもんかなあ・・・
こいつらどうします?
ここに放置していってもいいけど、こいつは師匠に頭クチュクチュしてもらいます?
「ひいいい!?」
「ハヤト、怖いって」
怯える頭目。
いつの間にか笑顔になっていたらしい。
失礼な、このラブリー&チャーミーな顔を見て怯えるとは。
「ハヤトくんって先生が捕虜に『あれ』やる時、凄く楽しそうだよね」
「あれでしょ、ゾンビがゾンビを増やそうとする奴」
「まあ出来るなら一生経験したくないのは確かだね」
うるせーよ。
で、どうします?
「いらんだろ。誠実に話せば知ってることは喋ってくれるさ。なあ?」
「はいっ! 全部話させて頂きますっ!」
アーベルさんに肩ポンされて、涙目でコクコク頷く頭目。
「な? 人間大事なのは礼節なんだ。礼儀をもって接すれば、大概の事はどうにかなるのさ」
俺よりよほど邪悪な顔でニヤリと笑うアーベルさん。
礼節とか、どの口が言うんですかねえ・・・。
「・・・ほんとにそれだけしか知らねえのか? ここまで来れる位のパーティのくせに、脳みそのほうがお粗末すぎるな。
そんなんじゃいくら腕が立ってもあっさり死ぬぞおまえ」
「だってー!」
結局頭目はほとんど何も知らなかった。
賞金かけた人間の名前すら知らない。
どこそこの商会に持っていけば、とんでもない額のお金が手に入ると言うこと位だ。
「一応調査しておきます?」
「いらんだろ。どうせこっからはすぐにおさらばするんだ。
キンウィルの旦那の恋人にそれ使って、余ったら売りさばいてもいいがね」
せやな。
取りあえず頭目を解放して俺達はさっさと帰路についた。
気絶させてもよかったんだが、それだとさすがにその辺に転がってる連中が死ぬし、そう言うのは俺達の心によくないものを残すぜ!
それに復活したところで俺達より早く洞窟を出られるとは思えないし、こいつらが出て来たころには俺達は空の彼方だ。まあ正直どうでもいいけど。
ダンジョンを出るともう夜だった。
疲れてはいたが村で泊まると高くつくし、寝込みを襲われる可能性もあるしで、100kmほど離れた所に移動して、一晩野宿してからペカ・カンサに戻る。
何事もなく夕方に到着、そのままキンウィルさんの家にオウムの卵十個入りパックレギュラーLサイズを届けて野営地に帰る。使った分だけお金貰って、余ったら返して貰う約束である。
一座のほうも、ダンジョン配信が結構受けていたそうで一安心。
明日からはまたいつもの演目だ。がんばるぞい。
――異変に気付いたのは翌日の夜だった。
「そう言えばキンウィルさんと恋人の人はどうなったの?」
晩ご飯を食べていたリタがふと漏らす。
「・・・」
「・・・!」
そう言えば、という表情が半分。厳しい顔になるのがもう半分。
「オブライアン。タウ。キンウィル殿は、無事に事が済んでわしらに挨拶の一つもしないような薄情者かの?」
「ありえません。女癖は最低ですが、礼儀正しい人です」
ディスッてるのか褒めてるのか分からない言葉に、しかし笑う余裕が俺達にはない。
まさかとは思うが間に合わなかったとか・・・。
「さすがに今日は遅い。タウ、オブ、ハヤト、カオル。明日の朝一番で確かめに行きな」
俺達は重い顔で頷いた。
>心によくないものを残すぜ!
ジョジョ第三部、ディオと承太郎の決戦でのセリフ。
その辺にこだわる承太郎と、こだわらないディオの、信念の有無が勝敗を分けたシーン。