異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
決着をつける。
その言葉に、シルヴィアさんとアントンさんが顔を見合わせた。
代表するようにアントンさんが口を開く。
「陛下、その、決着をつけるとはどのように?」
「無論客の数を比べるのだ。公平を期すため、木戸には俺の部下を配置する。
同程度であれば、最終日に俺が直接観覧してどちらが上であったかを決める。
どうだ、両名?」
再び顔を見合わせるシルヴィアさんとアントンさん。
「シルヴィア・ハスキー、異存はありません」
「アンジャール・アントン、同じく」
「よし、では決まった!」
上機嫌そうに王様が手を叩いた。
一座に戻り、今回の件をみんなと共有。
「へえ、そいつぁ粋な王様だ。あいつらとの因縁も結構長くなったからな。
決着をつけられるってのは悪かねえ」
「ですぞですぞ。勝ち負けはともかく、そうした最高の舞台に上がれることは芸人として喜びですぞ」
奏でられるバイオリンの音もどこか楽しげである。
みんなの反応が大体こんな感じで好意的なのに対して、シルヴィアさんだけはガチモードである。たとえるなら生肉を目の前にした空きっ腹の雌ライオン。
「そうともさ。今度こそ完全に白黒つけてやるチャンスだよ。
完膚無きまでに大差をつけて、奴を這いつくばらせてやるんだ!」
「まあ、楽しそうですねえ」
覇気を放つシルヴィアさんに、ころころ笑うタウさん。
一座の面々すら少し引いてるのに、ほんとに図太い。改めてオブライアンさんの妹だと確信する。
「僕そんなに図太いかなあ・・・?」
「割とそうでしょ」
「お主は単に鈍いだけじゃ。小僧と同じでな」
そこで俺を引き合いに出す必要ありましたかねえ!?
延々と興行を続けるわけにもいかないので期間は十四日、入場料とテントの大きさは同じというルールで正々堂々と試合開始。
ちなみに相手のほうが大きかったので新しい布を買って来てテントを拡張したのはペトロワ師匠。丸一日そっちの作業にかかりきりになってぶつくさ言っていた。
俺も魔力タンクとしてこき使われたので疲労困憊である。
まあこれはこれで学園祭前夜みたいで楽しい。
そしていよいよ始まる最終演芸戦争。
月日は夢のように流れ、十三日目までの動員数は・・・完全に互角。一人の差すらつかずにマジで同数である。
「どういうことだいこれは!」
怒り狂うシルヴィアさんだがこれはどうしようもない。
「今回更にあれこれ工夫を重ねましたけど、向こうも同じ位工夫したってことでしょうねえ」
肩をすくめるカオルくん。まあそういう事やろな。
「質では間違いなくうちの方が圧倒してるってのに・・・!」
まあそうなんだけど、護衛で向こうへ行く都合上あれこれ会話することも多いのだが、あっちの人達みんな有能で勤勉だからなあ。
「個人芸じゃなくてチームとして優秀だよね」
アントンさんは個人の芸も凄いが、そうした人達をまとめて指示を出すリーダーとしても優秀だ。そういう意味では集団として優秀なアントン一座と、個人の芸の質で戦うハスキー一座って対比が成立する。
その総合力で互角って事なんだろう。
「まあテントの大きさが同じで両方常に満員じゃから、結果的に動員数は同じってこともあるかのう」
それはありそうですねー。
王様が話題作ってくれたから、本当に毎日満員御礼である。
これはこれでありがたいことこの上ない。
「ええい、勝負は明日だよ! あの王の若造をぎゃふんと言わせてやる!」
ぎゃふんて表現が古くさいなあ・・・げふっ?!
「誰が年増だってぇ!?」
そんなこと言ってねえよ!?
「この状態の
「空気読めないよねハヤトって」
「君子危うきに近寄らずだよハヤトくん」
「今のはお兄ちゃんが自分から危ないところに飛び込んだんだと思う・・・」
「沈黙は金ですよハヤトくん」
うぐぐ、今回はちょっと反論できん・・・。
そんなこんなで最終日。
今回はお城の前の大広場が舞台で、観客もただで見放題。
俺達の報酬は王様が出してくれる形。実質民衆へのサービスやな。
演芸戦争のあれもそうだが、中々に粋な王様である。
「それではみんな、存分に楽しんでくれ!」
城のバルコニーから観覧する王様、歓声を上げて手を振る観衆。
広場から周囲の建物に至るまで、人がびっしりである。
沢山人の登った木が今にも折れそう。
今回舞台を共有しているので、互いに一つずつ出し物を見せていく進行である。
公演時間も一座ふたつぶんでほぼ丸一日。みんな弁当や酒を用意しての観覧だ。
コイントスでこっちは後攻。さて、これが吉と出るか凶と出るか・・・
「みんなー! こんにちわー!」
「「「こんにちわー!」」」
師匠が音声拡張したリタの挨拶に、観客から挨拶が返る。
プログラムは順調に進行していた。
その後向こうの軽業ショーと空中ブランコ、こっちはガイガーさんのコマ芸とラファエルさんの笑芸でお昼休み。
互いに自信の演目で午前の部を締めたと思うが、二人の芸はとにかくインパクトが強い。
あっちの空中ブランコもかなりのものだが、判定は今のところ多少有利なはず。
ありがたいことに昼食は王様のおごり。
王宮の食材とシェフを使った料理は、さすがに素晴らしかった・・・が。
格式高い料理としてカツカレーが出てきたのはさすがに吹いたぞ。
「カツは向こうでは『勝利』に通じる言葉だそうですな。
なので戦勝祈願を願う料理として、貴族の間ではもてはやされていますですぞ」
「うわあ・・・日本でも勝栗とか四方膳ってのは確かにあるけどさあ・・・」
わかってるよ! どうせオリジナルの仕業なんだろう!
「ディテクで真なる龍を倒したオリジナル冒険者族、つまり今のディテク王家の祖が広めたそうじゃの。一部の冒険者族はカレーという料理を再現することに長い時間をかけていたが、それを完成させたのも彼じゃと伝わっておる」
「なまじっかそいつが名を残した大英雄だったもんで、あやかりたいと思う貴族や王族が多かったのも一因だな」
もうこんな世界終わってしまえ!
王様も俺達も観客も、みんな御飯を食べた後公演再開。
トップはタウさんの歌からである。
相変わらず引き込まれるような妖しい魅力の歌だぜ・・・
しかしシルヴィアさんとて負けてはいない。
同じ位の大喝采を頂いて舞台裏に引っ込む。
そして次は俺とアントンさん、手品師同士の一騎打ちである。
相変わらず見事なハトマジックにリングマジック。
瞬間転移マジックも。
本番はスプラッタな不死身の男マジックだ。
観客席で悲鳴が上がった。
斧で首をはねる。
ノコギリで手足を切り裂いてバラバラにする。
手を広げて立つアントンさんを周囲から剣で滅多刺しにする、樽なしの赤ひげ危機一髪。
当然、アントンさんは死ぬ。
だが次の瞬間、舞台袖から元気な姿の当人が現れて観客に手を振るのだ。
これは確かに盛上がる。
ましてやスプラッタだからなあ。ショッキングだが、こっちの世界の人は日本よりそう言うのに耐性強いし・・・
そうして悲鳴と共に大喝采を浴びて、アントンさんは退場する。
やばいなこれ、ただノコギリで切るだけだとインパクトで負けてる。
まあ今回は最終日スペシャルと言う事で、ノコギリでぶった切るのはアルテ、カオルくん、シルヴィアさん、タウさん、そしてついにリタまで参戦している。
この面子の豪華さとペトロワ師匠の念動!空飛ぶバラバラ死体!でインパクトを取れればいいな・・・と、思った瞬間轟音が響く。
「!?」
思わず西の方を向くと、高さ100mほどの巨大な黒いドーム・・・?が、城壁を破壊して王都に侵入してくるところだった。
>勝栗、四方膳
武家の出陣式などで食べる食べ物。今でも選挙の前に候補がやることがある。
勝栗、打ちアワビ、昆布(よろこぶに通じる)と酒を載せたお膳(四方膳)を食べる。
シグルイなどにも出てくる。