異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「な・・・なんだいありゃ!?」
それは俺が聞きたい。
黒い・・・
「だんごむし?」
リタが首をかしげた。
それだ!
良く見ると黒いドームと見えたものは、積層状の装甲板というか甲殻に覆われた巨大な虫だった。ダンゴムシというか、あのサイズだと
『風の峰のハナシカ』みたいな!
毎度バカバカしいお笑いを一席! 違うって!
冗談はともかく、表面は本当にダンゴムシみたいで、王虫みたいに丸い目玉はついてない。
上から下まで甲殻でびっしりだ。
それが城壁を破り、ゆっくりと・・・とは言っても多分人間の全力疾走位の速度でこちらに迫っている。
観客たちがざわめきだした。
ぎぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・・
山が軋むような音。
それが『ワウム』の鳴き声であると気付くのに一瞬の時間を要した。
リタ、なんて言ってるんだ!?
「わ・・・わかんない! あれ多分あの子の声じゃないよ! おっきな楽器か何かで出してる音だと思う!」
どう聞いても鳴き声だが《会話の加護》を持つリタが理解出来ないって事は・・・あれでっかいロボか何かか!?
そう叫ぶと、何やら集中していた師匠が顔を上げた。
「・・・恐らくはその通りじゃな。
古代文明時代の移動城塞・・・そちらの言葉で言えば『とーちか』じゃ。
〈昼も夜もない谷〉から原初の魔獣たちがあふれ出した時に作られた兵器の一つじゃよ」
確か真龍かそれ以上の化け物で、『最初のサムライ』が退治したんですよね?
「その通り。じゃが奴の力をもってしても、単身では勝てなかったじゃろうな。
サムライや仲間たちの支援をすべく作られた多くの兵器の一つがあれじゃ。
魔獣戦争が終わると共に動力炉を取り外され、封印されたはずなんじゃがの」
動力炉を取り外したなら、何であんなに元気に動いてるんです?
「わからん。ただ、覚えのある魔力を装甲の隙間から漏らしておる」
何か猛烈に嫌な予感がしてきたのぉ~~~~っ!
答えを聞くのが怖いんだけど、覚えのある魔力って何です!?
「アストラル・パロットじゃ」
やっぱりぃぃぃぃ!
頭を抱えようとして気付いた。
迫り来る「ワウム」に気付いて恐怖の色を浮かべる観衆たち。
しかもワウムはほぼ一直線にこちらに向かってきている。
やばい! パニックが起きる!
今広場には、下手すると一万人近い観衆がいる。
それがパニック起こして一斉に逃げ出したら・・・
「ハヤトくん! パニックが!」
カオルくんも気付いたか。
向こうではたまにニュースにもなってたからな。
千人規模のそれでも数十人の死者が出るんだ、下手すると千人近く死者が出る!
何かないか何か・・・あれだ!
「えっ? ・・・あっ!」
カオルくんが一瞬いぶかしげに、次いで顔に理解の色がさす。
せやで!
「タウさん!」
「は、はいっ!?」
舞台袖で呆然と「ワウム」を見上げていたタウさんがびくん、とはねる。
あるある。意表を突かれるとあるよね・・・なんて言ってる場合じゃなくて!
「タウさん! このままだとパニックが起きて、ドミノ倒しに倒れて人が潰されて死ぬ!
落ち着かせてくれ!」
「え、はい、わかりました!? でもどう言えば!?」
まだちょっと混乱しているタウさん。だが協力してくれるのはありがたい。
いいですか、まずこう言って・・・
「みなさん! 落ち着いてください!」
その瞬間、魔法のように広場のざわめきが止まった。
群衆がピタリと動きを止め、一斉に舞台の方を向き、魔法で拡張されたタウさんの声が続けて広場に響く。
「まずは足を止めて! 深呼吸三回!」
すーはーすーはーすーはー。
すげえな、深呼吸の音も一万人分揃うと大風が吹いたような音になるのか。
「南に歩いてください! 決して走らず! ダンゴムシは西から来ます!
歩いて避難しても十分間に合います! 転ばないように気を付けて、歩いて南へ!」
ボス決して走らず急いで歩いてきて そして早く僕らを助けて!
「ハヤトくん、ふざけてる場合じゃないよ」
カオルくんの冷たい目。
しゃあないんや! 僕は自動的なんだ!
そんなコントをやってる間にも、タウさんは俺の指示通りに言葉を続けている。
「はい、南を向いて!」
群衆が一斉に南を向いた。
「はい! 歩き始める!」
一糸乱れず群衆が動き始めた。
その流れは意外に早く、これならワウムが来る前に避難が間に合うだろう。
――おっと!
「あ・・・」
「大丈夫です?」
ぐらりと倒れかけたタウさんをとっさに抱きかかえて支える。
一万人相手に《加護》の力を使ったんだ、そりゃあ疲れて当然か。
「すいません、こんな多人数に力を使ったことはなくて・・・」
当たり前ですよ。
でもあなたが少なくとも数百人の命を救ったんだ。
あのワウムが到着するまでに避難が間に合わなかったら、数千人死んでたかもしれない。
グッジョブですよ。
「ハヤトくんのおかげですよ。でもそう言って頂けるならご褒美とか期待しちゃっていいですか」
そう言って艶めかしく笑うタウさん。
ごっ、ご褒美って?!
「それはもちろん・・・」
「はいそれまで」
「あぁん」
タウさんを俺からやんわり引きはがすカオルくん。タウさんのおでこに当てた手の平から僅かに魔力が放出されている。
「はい、これで疲労も回復したでしょ。自分で立ってください」
「むー」
むくれるタウさん。ひょっとして今の疲労回復の呪文? いつの間に?
「ボクが最低限の回復呪文を使えるのは知ってるでしょ。
傷を癒すためには生命の流れを操らなきゃいけないから、回復呪文を習得するなら自然と疲労回復の呪文を習得することになるんだよ」
ああなるほど・・・って、カオルくん! 何故冷たい目で俺を見るんですか!
「さあね。自分の胸に手を当てて・・・」
「ぎゃあっ!」
悲鳴。
後ろ・・・後ろ上方から響いたそれに、その場の全員が振り返る。
「嘘だろおい」
アントン一座の誰かが呆然と呟く。
バルコニーの上、血のしたたる剣を持ち、気を失った王様を脇に抱えているのは「偉大なるアントン」一座の座長、アンジャール・アントンだった。
>風の峰のハナシカ
>王虫(ワウム)
風の谷のナウシカ、王蟲(オーム)。
宮崎監督ごめんなさい(ぉ
>ボス決して走らず急いで歩いてきてそして早く僕らを助けて
ボスケテ。元ネタはマサルさん。
>僕は自動的なんだ
「ブギーポップは眠らない」から。このセリフだけ強烈に覚えているw