異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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エピローグ 三つの心

「マシン・オフ!」

 

 俺が叫ぶと共に、デモゴディの頭部から操縦ユニット・パイルビードが分離する。

 地面がハッチのように開き、デモゴディがゆっくりと地下に格納されて姿を消す。

 

 こんなところまで再現できるのか。

 原作通りの格納シークエンスにちょっと驚く。

 俺自身もいつの間にかデモゴディそのものから、パイルビードのパイロットになっていた。

 このへんはどういう理屈なんだろう? わからん。

 頭をひねりつつもパイルビードが地上に降りると、卵形の赤い機体が一瞬光ってから消え、パイロットスーツも脱いだ素の俺が姿を現した。

 

「おーい!」

 

 手を振りながらみんなが駈け寄ってくるのが見えた。

 アルテたちも自分の足で走ってるのを見てほっとする。

 カオルくんとユリシーズさんは死んでておかしくなかったからな・・・アルテもあんなのに取り込まれて大丈夫かと思ったけど、体が変色してたり傷が出来てたりとかないみたいで胸をなで下ろす。

 手を振り返しながらゆっくりと歩いていく。先頭を切って走ってくるのはアルテだ。

 

「ハヤト・・・」

「ハヤトくん!」

 

 手を広げて抱きつこうとしてきたアルテの脇から、喜色満面のカオルくんが飛び出した。

 

「えっ?」

 

 ぎゅっと抱きつくカオルくん。ふにゃっと形を変える柔らかい肉の感触。

 

「え? え? え?」

 

 一瞬戸惑った後、混乱した脳みそが真実に到達する。

 

「お前女だったの!?」

 

 そう叫ぶとカオルくんの顔が赤くなって、少し怒った表情になった。

 

「ひょっとしてとは思ってたけど・・・やっぱり僕が女の子だって気付いてなかったんだね君・・・!」

「いやその・・・すいません」

 

 いや無理だって! 中性的な美形だなこの野郎とは思ってたけど、それ言い変えれば女の子っぽさも薄いってことだし! 

 

「あなたは『アルテと違ってスマートだから、体の凹凸もわかりづらいし』と言いますぞ」

「アルテと違ってスマートだから、体の凹凸もわかりづらいし・・・ハッ!」

 

 俺は愕然としてラファエルさんの方を見る。

 もの凄くいい笑顔で親指を立てるクソ野郎、前歯が光るイケメンドワーフ。

 裏切ったな!? 俺の気持ちを裏切ったんだな!?

 

「ハヤトぉ・・・それは私が太ってるって事・・・?」

「ハヤトくん・・・それは僕が女らしくないって事かな・・・?」

 

 そして目の前に降臨する二人の女夜叉。

 人間って怒りが限界を振り切れると笑うって言うのは本当だったんだな・・・

 

「笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点だそうじゃな」

 

 ペトロワ師匠、今その知識要ります!?

 笑顔の女夜叉二匹が笑顔を変えないまま拳を握る。

 

「ハヤト」

「ハヤトくん」

「「覚悟はいい・・・?」」

 

 【HELP】〔he()lp〕[動](他)

 (1)助ける

 (2)手伝う

 (3)役だつ

 (4)分けてとってやる

 

 ・・・現実逃避してる場合じゃない!

 助けを求めて周囲を見渡すが、いい笑顔か呆れ顔かの二択。

 最後に見たガイガーさんが瞑目して両手を合わせる。

 

「痛くなければ覚えませぬ」

 

 その言葉と同時に、アルテとカオルくんのグーパンチが俺の意識を刈り取った。

 

 

 

 明くる日。俺は王宮のふかふかのベッドでぐったりと横になっていた。

 体の節々が痛む・・・が、一番痛いのは二人に全力で殴られた顔である。

 鏡を見せて貰ったが両目周辺が見事なパンダアザになっており、心配して駆け込んできたリタが、俺の顔を見るなり爆笑した。

 うんまあそりゃ笑うよね、でもお兄ちゃん心が痛いよ・・・

 

 ペトロワ師匠の診察によれば初めてデモゴディになったときほど体にダメージは残っていないらしく、これも基礎修行を地味に続けた成果らしい。

 まあ変身した後倒れたわけじゃないしね!

 アルテとカオルくんのツープラトンでノックアウトされただけだしね!

 

 どうでもいいが今クロスボンバーってプロレスでは禁止技らしい。

 超人と違って人間は喉を鍛えられないからガチで危ないんだとか。

 閑話休題(それはさておき)

 

「この一件の後始末はユリシーズ卿がてきぱき動いてくれて丸く収まりそうだよ。

 国王派の貴族達も、国王が怪物になったってことで何か言える雰囲気じゃないとか。

 表向きには国王が怪物に殺されて王子様が即位する形になるんだって」

 

 ユリシーズさんが一晩でやってくれました、か。

 あの人やっぱ有能だったんだなあ。 

 報告に来てくれたカオルくんからあれこれ聞いてうんうんと頷く。

 

「じゃあオアンネスとの戦争も終わるんだな」

「うん。オブが喜んでたよ」

 

 一緒に来ていたアルテも頷く。

 よかった。タウさんも戦争に巻き込まれたりすることはなくなっただろうし、ガイさんみたいに戦争で人生狂わされる人もいなくなる。本当によかった。

 

「それで・・・僕達は帰れないんだよね」

 

 カオルくんの言葉に、俺もアルテもはっとする。

 

「少なくともあのク・・・ろくでなしの国王はそう言ってた。あの肉の塊みたいな術師も見つからないし。ペトロワ師匠にも聞いてみたけど、有史以来元の世界に帰ったオリジナル冒険者族は存在しないって」

「そっか」

 

 溜息をついて天を仰ぐカオルくん。部屋の中にしばらく沈黙が降りた。

 

「それで・・・これからどうするつもり?」

「そうだね。実はユリシーズ卿に誘われてるんだ。このまま王国に仕えませんかって」

「へー」

 

 まあ滅茶苦茶強くて頭もいい、おまけに若くて美人。そんな人材できるものなら手放したくないだろうな。

 

「ハヤトくんはどうするんだい? ユリシーズ卿は元の世界に戻す研究も続けてくれるとは言ったけど」

「んー・・・あまり期待は出来ないなあ。四千年近くの間、誰も成功してないんだろ?

 それに家族には悪いけど、こっちの世界に結構しがらみも出来たし、このままハスキー一座にいるのもいいかなって」

 

 視界の隅でアルテの顔がパッと明るくなるのが見えた。

 うーん俺ってば罪な男。

 カオルくんがそれをちらりと見た後、意味深に微笑む。

 おや? おやおやおやおやー?

 

「そうかあ・・・僕もね、今回の事で傷物になっちゃったし・・・ハヤト君に責任、取ってもらおうかなって?」

「ブフォッッ!?」

 

 盛大に吹いた。

 してやったり顔のカオルくん。

 愕然と椅子から立ち上がるアルテ。

 

「せせせせせ責任ってどういう意味で」

「もちろんそういう意味だけど?」

「傷物って!」

「背中から剣を刺されたからね。ちょっと傷跡が残っちゃってるんだ」

 

 ベッドの上に乗りだしてくるカオルくん。息が! 息がかかる!

 

「ダメ!」

 

 そんなカオルくんを押しのけて、アルテがこちらの首筋にかじりついてくる。息が!胸の感触が!

 

「ハヤトはずっとハスキー一座にいるんだから!」

「じゃあ僕も一座にお世話になろうかな。大丈夫、見せ物に向いた幻夢の魔剣とかあるらしいから」

「ダメ! 絶対にダメ!」

「おや? 君って彼の恋人なの?」

「そ、そうじゃないけど・・・ダメ!」

「・・・」

「・・・」

 

 俺を挟んでにらみ合う二人。

 挟まれて石のように固まる俺。

 アルテは見るからに余裕のない顔で、最初はからかい混じりだったように見えるカオルくんの表情が今はガチだ。

 誰かボスけて。

 

 

 

「ストロングなんだ♪ ビッグなんだ♪ ぼくらの デモゴディなんだ~♪」

 

 街道に流れるデモゴディのエンディングテーマ。

 一人増えた俺達ハスキー一座は、再び西への旅を再開していた。

 移動中退屈だろうと言う事で、修行を兼ねてデモゴディのアニメを流しているのだ。

 

 修行の結果、何気に同時複数展開が出来るようになったらしく、それぞれの馬車にモニターが開いている。まあ進歩と言えば進歩だが、果てしなく地味だ・・・!

 

「うーん・・・確かに古いけど意外に面白いものなんだなあ」

「カオルたちからするとそうなのねー・・・ちょっと、ハヤトに近づきすぎ!」

「そう? 気のせいじゃないかなー」

「もう、お姉ちゃんたち騒がないでよ! 見えないでしょ!」

「あ、ごめん」

 

 俺をはさんでわちゃわちゃやってる二人を見かねて、リタが叱る。

 さすがに小学生に正論で怒られると反論できないのか、二人とも素直に謝った。

 

「見えないから・・・リタはここに座るね!」

「「!?」」

 

 そう言ってリタが滑り込んだのは、胡座をかいた俺の足の間。

 

「・・・だめ?」

「いや、だめではないけど・・・」

「良かった!」

 

 俺を見上げてにっこり笑うリタ。

 思わぬ伏兵に顔をこわばらせるアルテとカオルくん。

 そして御者席から鳴り響くガイガーさんの鍔鳴りの音。

 ですから! わたくしは! 娘さんにやましい気持ちは一切持っておりません――!

 

「三つの心が~響くのだ~♪ 正義と~平和と~愛情と~♪」

 

 平和が! 切実に平和が欲しい!

 デモゴディのEDが流れる中、俺達は街道を辿っていった。

 

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