異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十話 百兄弟(カウラヴァ)

 数十人のアントン。空気中からいきなり出現したように見える。

 どれもこれも正直全く区別が付かない。

 

「自分を複製する古代のアーティファクト・・・これによって私は誰も真似出来ない手品のタネを手に入れた」

 

 と、左端の「アントン」。

 

「私に足りなかったものだ」

 

 と、中央やや右よりの「アントン」。

 

「観客を魅せる技術には自信があった」

「だが私には斬新なマジックの発想が欠けていた」

「いくらうまく魅せてもそれだけではダメなのだ」

 

 次々に口を開く「アントン」たち。

 それはもう輪唱のようだ。

 

「斬新な、誰も見た事のない」

「誰も真似出来ないマジックを」

「最高のトリックを!」

「最高の演出で!」

「「「「「観客を沸かせるのだ!!!」」」」」

 

 「アントン」たちが天を仰ぎ、一斉に叫ぶ。

 

「それがあのバラバラ死体かい。ただの殺人ショーじゃないか」

 

 シルヴィアさんが吐き捨てる。

 だが「アントン」の笑みは変わらない。

 

「いいや、違うとも。観客がそれを信じる限り、それはマジックだ。

 観客は何も見てない。何も知りたくない。騙されていたいのだよ」

 

 ・・・まあ、わからんではない。

 そう言うと、「アントン」たちの笑みが一斉に深くなる。

 

「ああ、君はそう言ってくれると思ったよ、ハヤトくん」

「ハヤト?!」

 

 シルヴィアさんがショックを受けた顔で振り返るが、なんかわかっちまうんだよなあ、こいつの言いたい事。

 

「どういう事じゃ?」

 

 この人さ、テロリストではあるけどそれとは別に骨の髄まで手品師なんだよ。

 何回も話したけど、手品への真摯な熱意は痛いほどに伝わって来た。

 王様さらった時も「一世一代の大奇術」って言ってたし。

 間違いなく興行上のライバルで、今は完全に敵だけど、そこは信頼してるし技術含めて尊敬してた。

 

 多分この人、観客の受けが取れるなら死んでもいいってタイプだ。

 死んでいく分身の方も「何度でも死ねるなら観客の喝采を浴びる為にそうしてやろう」で喜んで死んでいくんじゃないかなあ。まあ想像にしか過ぎないけど。

 

「・・・」

「同じ手品師であるハヤトがそう言うのなら、そうなんでしょうぞ。

 確かに、そう言われてみると同じ芸人として吾輩も感じるところがありますぞ」

 

 もの悲しいバイオリンの音。

 ラファエルさんも芸についてはかなり悩んだ口だからなあ・・・。

 

「確かにね。そいつ(アントン)はそう言う奴さ。喝采に貪欲なんだ」

「・・・いかにも!」

「いかにも」

「いかにも」

「「「「「いかにも!」」」」」

 

 「アントン」達が一斉に喝采する。

 無数に広がる満面の笑顔。狂気を感じさせる笑み。

 

「万雷の喝采を浴びれるなら、死んでも構わない」

「しかし、そんな真似が出来るのは一回限りだ」

「本来ならね」

「だがこのアーティファクト、『百兄弟(カウラヴァ)』があれば別だ!」

「何度でも」

「何百回でも」

「何万回でも!」

「命と引き替えに観客を喜ばせることが出来る!」

「そのためなら」

「何度死んだところで構うものか!」

 

 本物も、分身も、全く変わらない笑み。

 この人本気だ。本気でそう思ってる。

 師匠が溜息をついた。

 

「よくやるわい。『百兄弟(カウラヴァ)』と言ったか、そのアーティファクト、使えば使うほど浸食が進むじゃろう。お主本体の脳も、大半浸食されて置き換わっているのではないか?」

「まあそうでしょうね」

「ですが何か問題が?」

 

 「アントン」の笑みは変わらず、師匠は顔をしかめる。

 

「公演が出来れば」

「観客を喜ばすことが出来れば」

「万雷の喝采を浴びることが出来れば!」

「「「「「何ら問題はない!」」」」」

 

 師匠がもう一度溜息。

 多分答えは分かってたんだろうな。

 シルヴィアさんも顔を歪めてはいるが、それ以上言いつのろうとはしなさそうだった。

 

「でも、アーティファクトの力を借りてやってるのを、それを手品って言えるの?」

 

 やめろアルテ、その術は俺に効く(震え声)。

 

「あ・・・」

 

 口ごもるアルテだが、そうなんだ。

 そもそも俺の手品なんて全部《加護》だよりだからね!

 そこ突かれると俺にもダイレクトにダメージがくるのだよ!

 

「まあこの件についてはペンディングと言う事で」

 

 にっこり笑う「アントン」たち。

 そういうことになった。

 閑話休題(それはさておき)

 

 話を戻しますが、それでは質問二つめ。

 この要塞の動力源ってアストラル・パロットですよね。

 どうやって俺達がそれを入手していたのを知ったんですか?

 

「それについては申し訳ないがタウに協力して貰った」

「え、私?」

 

 びっくり顔のタウさん。どういうことだ?

 

「タウのペンダントには術がかけられていてね。

 言ってみれば千里眼の水晶玉だ。君たちの行動を覗き見出来るんだよ」

「あ・・・そう言えばペトロワさんに調べて貰った時は外してた・・・」

 

 師匠が調べたけど何も発見出来なかったのはそういうことか。

 まさかとは思ってたけど、あの暴漢もあなたの仕業?

 

「その通り。顔を変えた私の分身さ。タウには済まない事をした。恩人からの命令でね。逆らえなかったんだ。許して欲しい。それを捨ててしまえばもう覗き見は出来ないから安心してくれ」

「・・・」

 

 タウさんは何も言わない。複雑な心境なんだろう。多分済まないってのもこの人の本心だろうし。

 しかし何のために?

 

「君たちを観察する事が第一目的だったようだ。それ以上は私も分からない」

 

 ふむ。それでは三つめ。テロリストに協力したら、もうあなたは芸人として活動を続けられないわけですがそれは?

 

「まあそれは確かに困るんだが」

「言った通りに、私の手品のタネは「王に叛くもの(アンティゴネー)」のトップから貰ったものだ」

「その借りを返せと言われたら、まあ返さなくてはいけないだろう」

 

 結構義理堅い人だな・・・そこも何となくわかってはいたが。

 

「もし生き延びられたら、顔を変えてまた出直すさ」

「それに多分だが、元々そう長くは生きられない体だ。違うかな、ペトロワ師?」

「・・・」

 

 師匠は無言で頷く。

 

「であれば」

「最後に一つ、大きな手品で芸人人生を締めくくるのもいいだろう」

「そう思ったのさ」

 

 ・・・で、四つめの質問。

 王様をさらって何をするつもりなんです?

 別に王様とか貴族にあれこれはないんでしょう?

 

「まあね。善政を敷いてくれるなら何でもいいよ。

 むしろ農民やパン屋に政治が出来ると考えてる奴らの方がおめでたい」

 

 ほんそれな(溜息)。

 政治は専門職なんやで。

 それはともかく、質問の答えは?

 

「答える前に質問だが、カンサ族というのを聞いたことは?」

 

 この近辺にいた古い民族だかなんだかですよね。

 詳しい事は知りませんが。

 

「その通り。真なる魔法文明時代にこの一帯を支配していた部族でね。

 そして国王はその族長の直系なんだ」

 

 うわあ、それだけですげえいやな予感がするぞ。

 

「勘が鋭いな」

「いや、今までのあれこれで鍛えられたかね」

 

 はははは、と輪唱で笑う「アントン」たち。

 まあ面倒な人生生きてますんで・・・ちょっと待て。何故それを知ってる?

 

「さて、なんでだろうね?」

「まあともかく」

「この荒野にはかつてある種の研究所があった」

「爆発を起こして消滅し、緑豊かな草原はこの有様になったがね」

 

 ・・・それで何をしようってんです。

 

「研究所は吹っ飛んだが」

「その土台になった巨大な魔法陣はまだ生きている」

「この部屋は失われた制御装置を再現したもの」

「国王陛下はその鍵だ」

 

 具体的には?

 

「世界に穴が空く。地上界から天界を貫く柱がもうすぐ現れることだろう」




タイトルはマハーバーラタの悪役、ドゥルヨーダナのエピソードより。
生まれた時に肉片で生まれて、それを切り刻んだら百一人の兄弟になったというキモイエピソードの持ち主ですw
FGOの彼は陽気で愛嬌のある小悪党という感じで、解釈1000%一致。

>その術は俺に効く
NARUTOより。
本来メチャクチャシリアスなシーンなのだが、ネットミームとして完全に定着してしまっているw
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