異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

350 / 415
第三十六話 最後の奇術

 空中にいるにもかかわらず、踏みしめた両足から大地の反動が伝わってくる。

 足の裏から膝、腰、背骨、肩、腕から掌底へと伝播する大地の力。

 それらを回転の力に変え、浸透する波紋として敵に撃ち込む螺旋拳。

 仁王護法拳の奥義であるそれはまたの名を・・・

 

『ブッダハンドスマッシュ!』

 

 ワウム=アントンに打ち込んだ右掌底から、かぁん、という幻聴。

 波紋が完全に入った。

 

『ぶ、が、ぶががががががががぁぁぁぁぁぁ!?』

 

 ワウム=アントンの表面装甲が波打つ。

 内部を走る致死の波紋。

 装甲がねじれて裂ける。

 中から大量の血液と肉片が噴き出した。

 

『透視光線! エスパーアイ!』

 

 琥珀色の宝珠に魔力炉が垣間見える。

 筋肉である「アントン」が死滅した今ならば、魔力炉を動かして回避する事は出来ない。

 

 柔の技である波紋拳は肉を断つもの。機械である魔力炉には効果が薄い。

 だが仁王護法拳は剛柔一体、内部から敵を破砕する波紋拳に対し、外部から粉砕する剛の拳がある。

 先ほどのブッダハンドスマッシュは正確にはブッダハンドスマッシュ・スパイラル。

 波紋拳と双璧を為す剛拳・破邪を乗せたそれは・・・

 

『ブッダハンドスマッシュ・ストレイトロケット!』

 

 破邪の剛拳と化した左のロケットパンチが、魔力炉の芯を正確に撃ち抜いた。

 

 

 

 血まみれ、肉片まみれになりながらも再生しようとしていたワウム=アントン。

 その動きが止まり、力尽きたように崩れ落ちる。

 全身の黒い装甲がボロボロと崩壊し、チリになっていく。

 「アントン」だった血だまりや肉片もだ。

 

 後に残るのは「ワウム」だったばらばらの機械構造。

 その中に俺は血まみれになって倒れたアントンさんを見つけた。

 降下してその前に膝を突くと、アントンさんが目を開いた。

 

「いや、お見事・・・私のステージもここまでのようだ。

 まあ・・・悪くない見せ物だっただろう・・・?」

 

 ええ。

 

「最後に一つ、教えてはくれないかな・・・あの、私の分身を一度に破壊したあれは一体・・・?」

 

 ニホンの武術の技ですよ。

 そう言うとアントンさんは納得したように笑った。

 

「なるほど・・・やはり君はオリジナル冒険者族か・・・」

 

 無言で頷く。

 俺自身が身につけた技でもなければ実在のそれでもないが、嘘ではない。

 

 ブッダハンドスマッシュ。

 もちろん《加護》で再現したものだが、厳密に言えばロボットアニメの技ではない。

 OVAにもなった世紀末勧善懲悪超人格闘漫画、「ゼロの覚悟」に登場する武術、仁王護法拳の技だ。

 釈迦如来を護る正義の拳法である仁王護法拳を継承する伝承者兄弟。

 人の悪性に絶望して人類完殺を目指す兄と、あくまで人を信じて弱き者の牙たらんと志す弟の、骨肉の死闘が描かれる作品。

 兄の必殺技が波紋拳、弟の必殺技が剛拳・破邪である。

 

 このマンガ、強化服とか怪人とか出てくるけど基本的には等身大の格闘漫画である。

 ただ終盤でモビルトレースシステムを備えた仏像型巨大ロボットが出て来て、兄がそのロボで真なる巨悪を『ブッダハンドスマッシュ!』するのだ。

 そこまではアニメ化されてないけど、原作にちゃんとあるので俺も使えたと言うわけである。

 

 そしてこの波紋拳、波紋・震動で敵の肉体を内部から破砕する技。

 それが完全に入ったという事は、内部の「アントン」が死滅したと言う事だ。

 いくら巨大化・強化されたとしても基本は生身の肉体。体内の水分が波紋によって震動し、破裂して死にいたる。

 機械構造の巨人ならばこうはいかない。

 そして200mの巨体を埋め尽くすだけの「アントン」を再複製するには、ワウムの動力炉があってもいくらかのタイムラグを要する。

 そのタイムラグの間に魔力炉の位置を確認し、ロケットパンチを併用した剛拳・破邪によって破壊したわけだ。

 

「ああ、教えてくれた礼と、奇術師のよしみだ・・・一つ最後に教えておこう・・・

 わたしたちは君たちの半月から一月先を常に移動していた。

 こっそり騒動の種をまきながらな・・・ごほっ」

 

 !? それはどういう・・・

 

「成功したものも、不発に終わったものもある・・・私たちには関係なく起きた事件も・・・

 だがそれによって・・・君たちは成長し・・・ここまでの力を手に入れた・・・」

「「!?」」

 

 カオルくんと顔を見合わせる。

 どういう事だ? それって俺達が・・・

 

「よくはわからないが、実験だったそうだ・・・ごほごほっ。

 私はここまでだが、まだ何かありそうではある・・・気を付けたまえ・・・」

 

 それは一体、と聞こうとしたところで後ろから光が射した。

 ・・・しまった!

 

「おお・・・これはすごい・・・私の最後のステージにはふさわしい・・・大マジックだ・・・」

 

 そう言ってアントンさんは事切れる。

 くそ、ひっかかった!

 あんた最後まで人をだます奇術師だったな!

 振り向くと、荒野の一点から光のうねりが立ちのぼるのが見える。

 それはまばゆく輝く蛇、いや龍の姿をしていた。

 

 

 

 荒野より立ち上る光の龍。

 うねって天に昇っていくそれは圧倒的な迫力で言葉を奪う。

 

「間に合わなんだか・・・!」

 

 血を吐くようなペトロワの叫び。

 なまじ知っているからこそ、この後の惨事を予見も出来る。

 そうでなくても、破滅的な事が起こるらしいというのは他の者も直感的に理解した。

 

「マスター・ペトロワ! 何かないのか! 他にあれをどうにかする手段はないのか!?」

 

 国王が必死で食い下がるが、ペトロワは沈痛な顔で首を振るのみ。

 

「残念じゃが、カオルの魔剣と小僧の巨人をもってしても、今のわしの力と知識では何ともしがたい。

 あるいは小僧がまだ何か隠し玉を持っていれば・・・」

「あるわ」

 

 視線が一点に集中する。

 

「アルテ」

「ハヤトと、王様の協力が必要だけど可能性はゼロじゃない」

「何をすればいい! 俺に出来る事なら何でもやるぞ!」

 

 国王の言質を取ったアルテが頷く。騎士たちがざわめくが、宮廷魔術師が黙らせた。

 

「おばあちゃん、ハヤトにこっちに来るように言って。

 急いで術式を構築しないと」

「わかった」

 

 疑問も異論も飲み込んで、ペトロワが頷いた。

 




>ゼロの覚悟
>仁王護法拳
>波紋拳
>剛拳・破邪
>ブッダハンドスマッシュ
覚悟のススメの零式防衛術と必殺技である螺旋、因果、G(ジャイアント)・螺旋。
主人公の必殺技である拳の「因果」と、宿敵である兄の必殺技「螺旋」を左右同時にやると仁王像の構えになるな、と思いついた。
ただしブッダハンドスマッシュのネーミングはマシンロボから。
仁王護法拳の設定は小説版Gガンダムも入ってるかも知れない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。