異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
メカ狼と化した俺が走る。
追走するガイガーさん、アルテ、カオルくん。
本気を出せば新幹線くらいの速度は出るのだが、匂いを追跡しながら走っているせいで、今は三人も楽についてこれる程度だ。
匂いは途切れず、町の西北の端に続いている。
にしてもこの町、香水とか香料の匂いが強いなあ。鼻がバカになりそう。
「待て! 待ちなさい!」
えっ?
ヤバい、警邏だ!
軽めの甲冑着た女の人がこっちに走ってくる。
こんな夜中にパトロールしてるのか、マジメだなあ。
いやそれはおいといて。
ガイガーさん、どうします?
「やむを得ん。適当にあしらおう」
カオルくんに向ける視線。
自分で対応する気はないんですねわかります。まあガイガーさんに比べれば腹芸はできないがコミュ力高いカオルくんの方が遥かにマシではある。
俺? 野暮なことは言いッこなしだぜベイビー。
「失礼、こんな夜分に何をしているのかな」
こちらが立ち止まったのを見て、あちらも歩調を落とし、こっちに歩いてくる。
インドとかネパール風のエキゾチックな軽甲冑を着こなした、褐色黒髪ロングストレートの女武将という感じだ・・・かなり強いな。後ろには部下らしい男性がもう一人。
カオルくんが一歩歩み出る。
「ボク達は火除け地でテントを張っているハスキー一座のもので、迷子の女の子を捜しているところです。警邏の方ですか?」
こちらを見回してから頷く女武将さん。
カオルくんやアルテは寝間着に一枚羽織っただけの格好なのでおかしくはないだろう。
「失礼した、ハスキー一座の名前は聞いている。
私はファーレンからこのハイブラウに出向している
この周辺の巡回をしていた。それで・・・これは?」
と、俺を見下ろすヴィナさん。
「犬・・・いや狼か? ゴーレム、いや、まさかアーティファクト?
随分と高度な代物に見えるな・・・」
しげしげと見る目が珍しい骨董品とか名剣に対するそれで、怖がったり危険物扱いする様子はまったくない。ほんとに魔法が一般的な国なんやな。下手なところだと、魔法使うだけで過剰に怖がられるんだが。
ちょっと悪ノリして足に鼻面をこすりつけると、笑顔になって頭を撫でてくれた。
「なるほど、本当に高性能だな。どこで手に入れた?」
「昔うちが拾ったものなので、由来とかは分かりません。これに匂いを嗅がせて後を追ってたんです」
「ほら、離れなさいハヤト。全くこの駄犬は女の人には馴れ馴れしいんだから」
「見境ないよね」
わおーん!(悲しみの遠吠え)
いやちょっと犬っぽくロールプレイしただけですやん!
ガイガーさんもうんうん頷いてないで!
「まあそれはともかく、どんな娘だ? 見かけたら保護しておこう」
ええ人や。
これこれしかじかと特徴を伝えると、ヴィナさんは頷いた。
「誘拐の可能性もある。協力もやぶさかではないが、同行する必要は・・・なさそうだな」
ちらりと流れる視線。
こう言う時ガイガーさんの問答無用の存在感は頼もしい。
カオルくんももちろん、アルテにしたって身体能力は緑等級の域を超えてるしな。
ガイガーさんたちが一斉に頷いた。
「ご厚意だけ頂いておきます」
「うむ。では失礼する。こちらも巡回の続きがあるのでな。その子が無事であることを願う。
何かあればチャヴィ街の屯所まで来るといい」
一礼して闇の中に消えていくヴィナさんと部下。
ええ人やったなあ。多分貴族だろうに、えらぶらないのがいい。
「だねー。貴族があんな人ばかりならいいんだけど」
しかし、何かおかしくない?
「だよね」
カオルくんと、ガイガーさんが無言で頷く。
「???」
ハテナマークを頭に浮かべるアルテとリタ。
ほら、あれだ。そんな貴族の人が夜中にパトロールなんかするもんかね?
「あ・・・」
どこか別の町からここに出向してるって言ってたし、何かの犯罪を追跡してここまで来たんじゃない?
ついでに言うなら、巡回と言ってるのに松明やランプの一つも持ってないのは変だ。
「隠密捜査中だったんじゃないのかな。ボク達が怪しいと思ったのか、それとも正義感が働いて声をかけざるを得なかったか」
どっちもって可能性もあるな。
念のため飛行ドローン、ミストソーカルに追跡させておこう。
気がつかれないよう、破壊されないよう、なるべく遠距離から。
ただ、今の優先順位はアーナだ。まずは彼女を捜して保護しないと。
そう言うと全員が一斉に頷く。俺達は再び走り始めた。
くそっ、しくじった!
川を前にして、俺は内心で悪態をついた。
こう言う世界で生きていたら汚い悪態の一つや二つは普通に覚えるが、リタの前で口にするわけにはいかない。
「ど、どういう事?」
「川を渡られたら匂いが追えないってことだよ。まっすぐ渡ったならともかく、川の中を歩いて上流か下流に出られると、簡単には後を追えない」
野生の動物なんかがよくやるそうだ。
このへんアーベルさんが詳しいんだが、残念ながら今ここにはいない。
「二手に分かれるしかないだろう」
ガイガーさんの言葉に頷く。
戦闘力からすると俺とカオルくん、リタ。ガイガーさんとアルテでどうでしょう?
そう言ったら柄にかかったガイガーさんの手がぴくりと動いた。
多分鍔を鳴らそうとしてやめたんだ。違うんです!
お父さんの目の届かないところでリタに不埒な事をしようとかそういうことは!
「ハヤト、そう言うのを語るに落ちるって言うのよ」
だから違うんや!
・・・もう一つのドローン、猟犬型のミストライカをガイガーさんたちの組につけよう。匂いをかげなくとも、川から上がったところに足跡や水の痕が残るはずだ。
川を渡って俺達が上流、ガイガーさんたちが下流でどうでしょう。
「・・・いいだろう。ハヤト、カオル。リタを頼むぞ」
だから俺を睨みながら言わないで!
言われなくてもリタは守りますから!(悲鳴)
三十分ほども走るが、アーナの痕跡は未だに見つからない。
師匠からの念話も来ないし、ガイガーさんたちも見つけてない。
(おにいちゃん! フクロウさんが、北東の木が生えてるところでアーナちゃん見たって!)
え!? まだ足跡も見つけてないのに・・・そう思ったところで石造りの川岸から流れ出る水が目に入る。
あ、そうか、下水道か!? くそ、見落としてた!
北東の木が生えているところ・・・多分公園か!
師匠!
(分かっておる! 今全員に伝えた!)
恐らく今一番近いのは俺達だ。
カオルくん、飛んでいくよ!
「わかった!」
カオルくんを腹の中に収めると、俺は全力で飛行を開始した。