異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第一章「魔王の峰」
第二話 雲をつかむような話


「おれはばけものだぞ! 悪魔だぞ!」

 

     ――魔王ダンテ――

 

 

 

「カオルは湯を沸かせ。リタはわしの薬草袋を取ってきておくれ。オブライアンは陣を描く手伝い、シルヴィア達は交代で見張りを。万が一もう一度来ないとは限らぬからの」

「はい」

「うん!」

「わかりました。道具を持ってきますね」

「わかった。取りあえずはあたしとアーベル。夜半になったら起こすから、次はガイガーとラファエル頼むよ」

 

 ペトロワ師匠の号令一下、みんなが動き出す。あの、俺は・・・?

 

「おまえさんはアルテの手を握ってやっていてくれ。この手の事は体の方の処置はもちろんじゃが、心持ちの方も大事じゃでの」

「へっ?」

 

 変な声が出た。

 思わず傍らのアルテを振り向くと、ちょっと顔を赤くして目をそらす。

 座り込んでるので、ちょっと見返り美人っぽい色っぽさがある。

 う、普段は健康的でさっぱりしてるからあんまり意識しないけど、こうして改めて見ると美人だし体のラインとか女の子らしいんだよなあ・・・!

 

「あー、その・・・それじゃ、握るね・・・?」

「う、うん・・・」

 

 そっと手を伸ばすのだが、どうも最後の数センチが伸ばしきれない。

 伸ばしては引っ込め、伸ばしては引っ込める。

 

「・・・」

 

 アルテも顔を背けつつチラチラ見てくるんだけど、どうも最後の踏ん切りが・・・

 

「なんだいだらしないねえ。ほれ、ぐっといきなよぐっと!」

「そうそう。お前が意識しすぎるとアルテも変に意識しちまうだろ。そこで相手に意識させずにすっと手を取るのが女との距離を詰めるコツだぜ」

「何ならムーディな音楽をご用意するのですぞ」

 

 口々に勝手なことを言う駄目な大人たち。

 ラファエルさんなんてほんとにムードのある音楽をバイオリンで鳴らし始めたし。

 

「「「にーぎーれ! にーぎーれ!」」」

「あんたらなあ・・・!」

 

 小学生か!

 

「いい加減にせんか! 小僧もさっさと手を握ってやれ!」

「は、はいっ!」

 

 結局俺達はペトロワ師匠に揃って怒鳴りつけられた。

 カオルくんとリタの冷たい目がつらい・・・

 

 

 

「・・・で、これ何してるんです師匠?」

「そうだよね、何してるのおばあちゃん?」

 

 座り込んでいる俺とアルテ。

 手を繋ぎつつ、二人とも視線を合わせない。たまにちらっと相手を見るがすぐに視線を外す。

 周囲から生暖かい、あるいは冷たい視線が集中しているのがわかる。ううっ、いたたまれない・・・!

 ともかくそんな俺達(バカップル)の周囲に、ペトロワ師匠とオブライアンさんが何かを描いていく。魔法陣って奴かな? 更にオブライアンさんが香炉に薬草を入れ、火をつけて四隅に置く。

 

「よし、小僧は手を離して陣から出ろ。他の者も少し下がっておれ」

 

 周囲の白い目に耐えながら握っていた手を離してアルテから離れる。

 こ、これは師匠に言われて外したんだからね! 自分から外そうとしたんじゃないんだからね!

 そんな馬鹿な事を考えている間に師匠の詠唱が始まった。

 

「■■■■■■■■■■■■■・・・」

 

 何を言っているのか聞き取れない不思議な言葉で、毛房の付いた棒を振り、水晶の振り子のようなものを左手でゆらす。

 最後に水晶の振り子でアルテのオデコを複雑な形になぞり、取り出した赤い塗り薬をアルテの首の傷口に塗って儀式は終了した。

 

「ふうっ・・・」

 

 師匠が大きく息をつく。

 気が付けば、俺の手も汗でべっとりと濡れていた。

 師匠が大丈夫、とジェスチャーすると魔法陣の周囲にわっと人が群がる。

 

「大丈夫かい、アルテ?」

「おばーちゃん、これでアルテちゃん大丈夫なんだよね? 吸血鬼になったりしないよね?」

 

 泣きそうなリタの頭を撫でつつ、ペトロワ師匠が首を横に振る。

 

「応急処置じゃ。取りあえず吸血鬼になることはないが、術が破れれば進行は再開する。

 少なくとも三十日は何があろうと術は破れん。そこから先は相手の力次第じゃな。

 術が破れれば三日とかからずアルテは吸血鬼になってしまうじゃろう」

「っ・・・!」

 

 ぎり、と歯が鳴る。

 今ならデモゴディになれそうなくらい。

 他のみんなも俺ほど顔には出していないけど、内心は似たようなものだ。

 

「場所はわかるのかい、ばあさん」

「"失せもの探し(センス・ロケーション)"の魔法をかけてみたが恐らくは次の町のほど近くじゃな。もっと近づかねば正確にはわからんが、そう大きくは外れておらぬはずじゃ」

 

 ぐびっ。ぐびっ。ぐびっ。

 座長が蒸留酒の瓶を一息に飲み干して、放り捨てる。

 

「ナメた真似してくれんじゃないか。ウチのモンに手を出した奴は放っておかないよ。

 たとえ地の果てまでだって追いかけてぶっ潰してやる! いいね、あんたら!?」

 

 おうっ!と勇ましい返事が口々に上がった。

 

 

 

「・・・で、町に着いたらやっぱり興行なんですか?」

「当たり前だろ。先立つものが無いとまず食ってけないんだよ。あんたのおかげで多少は余裕もあるけど、それでもね」

 

 複雑な気持ちを抱えつつ、俺は超マジックショーの準備をしていた。

 俺のマジックショーは確かに大受けしてるのだが、それでも小さな町では限界がある。

 商業が現代日本ほど盛んではないこの世界、民衆の購買力というか手持ちの現金には大きく制限があるのだ。

 

 とは言えシルヴィアさんも何もしていないわけではなく、アーベルさんとオブライアンさん、カオルくん、ペトロワ師匠は演目から外して町と周辺の情報を収集させている。

 前者二人は酒場その他での情報収集、師匠は魔術的な痕跡の探索。カオルくんがその護衛だ。カオルくんは再びサンダースウォードを召喚して腰に下げている。ガイガーさんでもよかったのだが、念には念を入れてアルテとリタの護衛の方に回したとのこと。

 

 まあしょうがない。

 実際先立つものが無いと生きていけないし、アルテがまた襲われる可能性もある。

 ぱん、と両手で頬を叩き、気合いを入れる。

 ステージ衣装姿のアルテが心配そうに覗き込んできた。

 

「その・・・あんまり気負わないでね?」

「大丈夫だって。ステージ前だから気合い入れただけだよ。それよりアルテこそ大丈夫なの?」

 

 聞くとアルテがぐっと力こぶを作った。

 

「あはは、大丈夫だよ。おばあちゃんの魔法もあるし、力持ちのアルテさんを信じなさいって」

「ん、そうする」

 

 笑顔で頷くと、舞台の方から拍手が聞こえて来た。

 リタの動物ショーが終わった合図だ。

 10匹のカラフルなハムリスと一緒に戻ってきたリタと軽くハイタッチ。

 入れ替わりに俺とアルテは舞台に飛び出した。ラファエルさんの軽妙なバイオリンが鳴り響く。

 

「さあさあ皆さんお待ちかね! ニホンよりやって参りましたオリジナル冒険者族ホッチョ・ペッパーの大魔術ショー! どなたもこなたもたまげること間違いなし!

 驚きすぎて魂が抜け出てしまわぬよう、ご注意申し上げまする!」

 

 

 

 夜。

 ペトロワ師匠とカオルくんを待ちながら俺達はやきもきしていた。

 別行動していたアーベルさんとオブライアンさんは決めたとおり夕刻前に帰ってきたのだが、同じく戻ってくるはずの二人が、日没後一時間を超えても姿を見せない。

 ついにシルヴィアさんがしびれを切らせた。

 

「ハヤト。あんたの《加護》でなんか・・・何でもいいけど、二人を捜せるようなのはないかい?」

 

 俺も深刻な表情で頷く。

 

「ぱっとは思いつきませんが・・・」

 

 やってみます、と言おうとしたとき。

 視界の彼方、町の向こうで突然稲光が走り、雷鳴が轟いた。

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