異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
わたしはアーナ。
「吸う息」と言う意味だ。
親はいない。
子供の頃から『村』で友達と一緒に育ってきた。
私が「息」であるように、友達も「爪」「髪の毛」「小指」「かかと」とか、そう言う名前だった気がする。
山の中での追いかけっこ、木登り、虫取り。
うまくやれた子は祭司さまたちから甘いお菓子を貰えた。
私はいつもお菓子を貰う側だった。
祭司様たちは他にも色々と面白い話をしてくれた。
相手の意表を突く方法。とっくみあいで勝つ方法。毒草と薬草の見分け方。
どれもが私にはとても面白い「遊び」だった。
十歳(たぶん)になったころ、私はみんなとは違う特別な「遊び」を教えて貰えるようになった。
当時同年代の友達はもちろんのこと、年上の「信徒」たちや祭司様たちでも私に勝てる人はほとんどおらず、退屈していたので内心大喜びしたものだ。
「とっくみあい」でもっと簡単に勝てる技や、ナイフやつぶてを一度に十本以上投げる技、色々な道具の使い方や、他人をだます方法。
初めて試したとき、人間の首はこんなに簡単に外れるものなのかと驚いた。
それから何度も「おつとめ」を果たしてきた。常に成功し、私は褒められた。
毎回与えられる甘いお菓子と頭を撫でてくれる手が大好きだった。
生き神である神師さまにもお褒めの言葉をもらって、みんなが私にやさしくしてくれた。
祭司様の話によると、人間は生きている限り「かるま」を重ねる。
死んで魂が冥界に行き、「かるま」を洗い流してから生まれ変わるのだ。
しかし「かるま」が溜まりすぎると魂が歪み、永遠に地上をさまよう「かいぶつ」になる。
こうなってしまうと、神様が直接その魂を消す以外に方法はないのだそうだ。
「おつとめ」というのは「かるま」を溜め込みすぎた人間が「かいぶつ」になる前に、魂を肉体から解放してやることだ。
「かいぶつ」になる前に冥界に送って上げるのだ。
これは善行であり、人々を救っているのだと祭司様たちは教えてくれた。
「ばいばい」
だから私はいつでも笑顔で解放した人を見送ってきた。
よかったね、「かいぶつ」にならなくて。
生まれ変わってまた来てね。
今度はお友達になれるといいな。
祭司様からまた「おつとめ」を命じられた。
旅芸人一座の、ちょっとまぬけな顔をしたおにいちゃん。
「この者は異世界の
今にも異形に変じてしまうかもしれない。
急ぎで準備の時間も辛いが、頼むぞ」
祭司様が今まで見た事ないくらいの切羽詰まった顔で私に命令を下す。
とても大事なおつとめ。
でも私なら大丈夫。今まで何度も難しいおつとめはこなしてきた。
今度もきっと。
「うん、任せて!」
私は満面の笑顔で祭司様に頷いた。
こわい。
こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい。
いつも通り祭司様の情報は完璧。
馬車を見つけて気付かれず忍びよる。
魔道具なのか、バカみたいな音楽とお芝居の声。
ああ言うのがあるといつでもお芝居や音楽を楽しめるから便利。
わたしも一つ欲しい。
でも「おつとめ」に入ればそんな雑念は消える。
自分自身の存在を消して馬車に忍びよる。
まぬけな顔のお兄ちゃんの場所を確認。
馬車の
御者をしているおひげのおじさんはちょっと・・・いやかなりまずいけど、それでも直前まで気付かせない自信はある。
お兄ちゃんの魂を解放して上げて、そこから後方に離脱すれば、あのおじさんも追って来れない。最初に十分間合いを離せば逃げ切れる。
実際途中まではうまく行っていた。
あのおじさんに感知されないよう、自分自身を極限まで消して崖の上から跳ぶ。
落ちながら
真下にあるのはお兄ちゃんの頭。
「ハヤトッ!」
おじさんの声がして驚いた。
お兄ちゃんの頭に手をかけるまでは気付かれない自信があったのに。
でももう遅い。
お兄ちゃんの頭に手をかけて、体をひねる。
その反動で首は真後ろに回ってお兄ちゃんは死ぬ。
何十回もやってきたこと。今回もそうなる。
おじさんと違って、お兄ちゃんは頭を掴まれるまで気付いていない。
力の入ってない首が真横に回る。
僅かな手応えを感じるが、回転を止める程のものではない。
「!?」
手応えが消失した。
どんな人間でも首は真後ろに回らない。
だから、真横から真後ろに回すまでにはそれなりに手応えがある。
それがなくなって、お兄ちゃんの首が真後ろに回る。
「~~~~~~~~~~~~~~っっっ!?」
無言の悲鳴を上げた。
にたり、と笑うおにいちゃん・・・いや「かいぶつ」の顔。
反射的にお兄ちゃんを突き飛ばして離脱する。
「おうふっ」
お兄ちゃんがまぬけな声を上げたのと、おじさんが抜き打ちの一刀を送り込んでくるのが同時。
危なかった。反射的にお兄ちゃんを突き飛ばしていなければ、深手を負っていたろう。
だがその時はそんなことを考える余裕もなかった。
お兄ちゃんを突き飛ばした反動で幌馬車の外に出ると、再び全力で自分の存在を消去する。
そこから先、『屋敷』に戻るまでの記憶は無い。
『屋敷』に戻ったわたしはひたすらに布団をかぶって震えていた。
祭司様だちは再度「おつとめ」を果たせと言ってくるけど無理だ。あれはかいぶつだ。ムルカッタだ。
もう「かるま」を溜めすぎて人間じゃなくなっているのだ。
それを何度も繰り返し話して、わかってもらおうとした。
わたしは人間は殺せる。でもかいぶつは殺せない。
そうしたら、祭司様たちがやさしくなくなった。
みんな目が冷たい。
話しかけても答えてくれない。
袖を引いたら振り払われる。
「おつとめ」を果たせと、それだけしか言われない。
祭司様たちだけじゃない。
友達も、年上の「信徒」も、年下の子も、みんなみんな冷たい目を向けてくる。
あれはムルカッタなのだと説明しても分かって貰えない。
「おまえはもういらない」
そう言われた瞬間、耐えきれずに逃げ出した。
そうしたら、年上の信徒達が追いかけてきた。
街中でたくさん人がいるのに、毒のナイフを投げてくる。
殺してあげなくちゃいけないのは「かるま」が溜まったかわいそうな人だけなのに。
「プロテクションシェェェェェェドッ!」
路地から飛び出した瞬間、ムルカッタと目が合った。
思わず悲鳴を上げそうになるけど、反射的に見えない壁を蹴って飛び離れる。
恐怖の余り膝が崩れそうになって、一瞬ふらついた。
その隙に追いつかれて、ナイフが飛んできた。
かわすことは簡単だったけど、わたしの後ろに露店の子供がいる。
何とか全部叩き落としたが、左腕にナイフがかする。
毒の回る体で必死に逃げたが、路地に追い詰められた。
そこで一度記憶が途切れている。
目を覚ましたのはハスキー一座のテントだった。
みんな親切でいい人だった。ムルカッタがいなければもっと良かったが。
凄く楽しかった。
でも「おつとめ」の事を話したら、とても悲しそうな顔をされた。
いっしょうけんめい説明したけどわかってもらえなかった。
自分が間違ってるとは思わなかったけど、もうこの話をしないことにした。
リタ達に悲しい顔をしてほしくないから。
このままずっとみんなと一緒にいられればいい、そう思ったけど、また信徒たちがやってきた。
信じられないことに、やつらはリタを殺そうとした。
咄嗟にかばったけど、もう許せない。
おばあちゃんに治してもらって、調子も元に戻った。
『いままでありがとう ごはんすこしもらいます みんなだいすき』
書き置きを残して一座を去る。とても悲しかった。
でも、巻き込むわけにはいかない。
あの書き置きを見たら、多分どこかに逃げたと思ってくれるだろう。
道を走り、川から下水道に入って目的地へ向かう。
何度も使った道、構造は頭に叩き込んである。
公園近くで地上に出る。
公園は本来ある金持ちの屋敷の庭園であり、それを一般市民にも解放する形になっている。
『屋敷』は公園の管理者であり、持ち主である金持ちの屋敷。
ダールミークの隠れみのだ。
自分の存在を極限まで消去して、屋敷に入る。
下働きは無視。目につく「信徒」と「祭司」を片端から殺す。
狙うのは祭司長。ここの主。
しくじった。
祭司長の部屋の周囲には腕利きの「信徒」が十人もいた。
信徒たちから逃げて、修練場に追い込まれる。
そこにも既に、二十人近い信徒がいた。
「愚か者め」
祭司長の冷たい目。
わたしが死ぬまでにこいつを殺す事はできるか。
その思惑を見てとったのか、祭司長が口を歪ませる。
「ころ・・・」
殺せ、と言おうとした瞬間、天井が崩落する。
さすがの信徒たちが動揺する。
「アーナ! 無事かあっ!」
響く声。
ムルカッタがやって来た。
キャラとしてのアーナの発想元は「ヤッサバ・ジンに会えなかったエイファ・ユース(キングゲイナー)」です。
ヤッサバと一緒にエクソダスしてスクーターに乗ってた女の子ね。
>息
インドでは息は体の一部という考え方があります。
仲間は全員体の一部を名前としてるわけですね。