異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
第十一話 魔導の国の演芸事情
「月曜日は市場に行って糸と麻を買って来た」
――ロシア民謡「一週間」――
『燃え上がれ~ 燃え上がれ~ ガンボイ~♪』
渋く伸びのある声が街道に響く。
今日から元祖リアルロボットアニメ「機甲戦士ガンボイ」の上映開始である。
リアルロボと言いつつ元祖なので半分くらいスーパーロボットなのはよく言われるところだが、このOPもリアル系のテイストを出しつつ基本はスーパー系主題歌というか、当時起こっていた「宇宙戦艦ムサシ」に始まる大人向けのアニメブームが・・・
とかくリアルロボの元祖というところが注目されがちだが、これスーパーロボットものとしても結構面白い。
このOPも歌ってる歌手さんの声が凄く伸びが良くて大好きなのだ。
いつも使ってるブロイザーなんかもこの歌手さんで、同じく伸びのいい歌声が素晴らしい。四十代で早世されたので、歌の数自体が少ないのが悲しい。
「ねえ、これ何で敵は仮面付けてるの? お話の悪役っぽいのじゃなくて、本物の軍隊なんでしょ?」
スタッフの人(監督曰く「あのバカ」)が勝手につけちゃったんだそうだよ。
「ガンボイが敵の『じゅう』の攻撃を受けても平気なのはなんでだい?」
ガンボニウムって言う頑丈な金属で出来てるからですよ。固い鎧なんです。
「これコロニーに穴空きっぱなしなんだけど大丈夫なんですか?」
カサブタみたいに自動的に穴が塞がるシステムがあるらしいから・・・。
「『わかさゆえのあやまち』ってなに?」
自分が手柄目当てに命令違反したのを部下が真似るとは思わなかったってことだよ。
「ああ。自分がやっても許されるけど、他のヤツがやるのは許されないって、そう言う考え方するヤツ良くいるからねえ」
そうそう。
後天才がやって成功したことを真似ようとして失敗する凡才って意味もあります。
「背水の陣とか、韓信真似ようとしてボロ負けした人ってそこそこいたらしいね」
真似出来ないから天才なんだけどねー。
「互いに飛び道具撃ってても、最終的にはやっぱり剣とか蹴りとかがものを言うのね」
当たらなければどうと言うことはないので。
「素人なの?」
間合いが遠いからね!
あれから俺達はハイブラウの町で十日ほど公演してから次の町に向かった。最終目的地はゲマイの首都クリエ・オウンド。南西の隊商道の終点だ。
そこに至るまでに大きな町がいくつか。
次の目的地はオウサム。人口四万人、東部の交易の要。
創世八家の中堅どころイフェルド家の本拠地で、娯楽産業が盛んな大都市だそうだ。
町の数区画が丸ごと劇場と芸人用のスペースになっており、腕に覚えのある芸人たちが日々しのぎを削っているとか。
昨日の貧乏芸人が、腕と運次第でスターダムにのし上がれるオウサム・ドリーム!
富! 人気! (女にもてる)力! 欲しけりゃくれてやる! 探せ! この世の全てをそこに置いてきた!
最後のは少し違うか。
例によってジェッター設営している間にシルヴィアさんが挨拶に行く・・・ではなく、驚いた事に地元の元締めじゃなくて、お役所に申請してテントを張る場所を指定される。
イレマーレでもそうだったように、警邏の人が区画整理して、どこそこを使いなさいと指定してくるのだ。
俺達一座の名前は知ってたらしく、結構いいところを割り当てて貰った。
何で知ってるんです?
「ゲマイでは各都市の間で定期的に魔導通信がかわされておる。
特にここは娯楽が都市の重要な収入源になっておるからの。
そうした情報も積極的に集めておるんじゃよ」
ゲマイSUGEEE!
それはさておき、後は例によってジェッター設営からの放課後ティータイム。
設営が終わると町の散策やら買い出しやら芸の練習やら自由時間。
まあ俺ら若い者はアルテについて買い出しである。
今回も香辛料吟味でペトロワ師匠が同行。
後アーナも。
いちおうまだ暗殺教団に狙われてる身分なのだが・・・
「~♪」
「ほら、走ったら迷子になっちゃうよ!」
「はーい!」
ま、いっか、ま、いーやね。
それから数日。
小規模&明らかにゲマイ人ではないよそ者と言うことで、最初は「何であんないい場所をよそ者に」「賄賂でも使いやがったか!」などと、周囲からも侮られていた我がハスキー一座ではあるが、今や近辺では随一の稼ぎ頭である。
ふふふ、ハスキー十傑衆が揃えば、観客動員数の一つや二つ!
いや誰も呼んでないけどね、そんな名前。
とは言え、繁盛してるよそのテントや劇場もちらほら偵察に行って来たのだが、あちらもさすがにハイレベルだ。
特にウチが得意としてる魔法演出も、結構近いレベルの一座が複数いる。
さすが魔導の国やなあ。
「劇で、俺の怪物の変身をもっと大きくしてみます?」
「演出の方から見直してみる必要があると思うのですぞ。
観客によってその辺は大きく変わりますが、この国の人はテンポの速い展開を好む傾向がありますぞ」
「後、いきなり歌い出したり踊り出したりって多いよね」
「昔から歌や踊りが好きな民族じゃからのう、ゲマイ人は」
「肩車は必須だよね」
「あのサスペンダーをはじくのって何?」
あーでもないこーでもないとブレインストーミング。
みんな真剣だが、こう言うのも結構楽しいなあ。
そんなこんなで更に日は過ぎ、数日後。
「ほーれほれほれ、甘いぞドーナツだぞー」
「わーい!」
「ほら、リタの分もあるぞ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
今や完璧に餌付けに成功したアーナにエサを与えていた時である。
「演芸場から直接指名が来たよ!」
おお!
何でもオウサム指折りの演芸場で、おえらいさんを集めてパーティをやるのだが、その余興として呼ばれたとのこと。
悪くないですねえ。
「ああ。俺達の実力を見せるにはぴったりの場だ。度肝を抜いてやろうじゃないか」
アーベルさん始め、一座のみんなもやる気である。
というかアーベルさんって芸人の仕事大好きですよね、なんだかんだ。
「まあな。こうやって」
と、ナイフでジャグリング。
「人を楽しませることが出来るって事がとてつもなく楽しいのさ」
わかります。俺もですよ。
「たのしいの?」
そうだぞ、アーナ。人を楽しませるのが好きだから、俺達は芸人やってるんだ。
「わからないけど、舞台に立ってるときはみんなたのしそう」
そう言う事。
頭を撫でてやろうとしたら、びくっとしてアルテの後ろに隠れてしまった。しょぼん。
「まあ次第に懐いてきてはいるから・・・」
苦笑するアルテさん。
うむむ、道は長いのう。
だが取りあえずは目の前の公演だ。
お貴族様を驚かせてやろうぜ。
「おーっ!」
「「おー」」
そうやって気勢を上げた二日後。
高級宿屋とレストランと演芸場が一体になった老舗「ホテル・バムイムン」で俺達は固まっていた。
「たった今殺人事件が起こった! 誰もホテルの外に出ないように!」
どうしてこうなった!
>歌手
池田鴻さん。
ほんとに伸びが素晴らしい。
ロボットアニメでは初代ガンダムとグロイザーXのOPEDを担当されている。
https://www.youtube.com/watch?v=H1DelNpdvTU (翔べ!ガンダム)
https://www.youtube.com/watch?v=3dREm9-wcm8 (飛べ!グロイザーX)
>「宇宙戦艦ムサシ」
実在する。
>あのバカ
安彦良和氏。
富野監督がマジでそう言ってたw
シャアとセイラさんが兄妹って設定も最初はなくて、アドリブでこねていったんだとかw
>ガンボニウム
ガンボイはガンダムの没タイトルからですが、何かこう書くとガガンボみたいだなあw
落ちろ! ガガンボ!
>芸人区画
イメージは昔の浅草六区。
>十傑衆が揃えば大怪球の一つや二つ
ジャイアントロボTheAnimationで白昼の残月が言っていた名セリフ。
国際警察の中条長官ひとりで半壊まで追い込んだことを考えると、恐らく単なる事実。
>いきなり歌い出したり踊り出したり
インド映画というのはそう言うものです。
好みはあるだろうけど、長ったらしいスタッフロールの間、ずっとミュージカルシーンを入れて退屈しないようにしてくれるのはハリウッドや邦画も見習って頂きたい。
ジャッキー・チェンのNGシーン集もあれもっと広まっていいと思うんだけどなあ。
>肩車
>サスペンダー
インド映画「RRR」より。
サスペンダーはサスペンダーじゃ。
その意味を聞くような者はサスペンダーなどできもはん!