異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
シャラドさんに続いては、二つめの香水をつけていた八人を順番に事情聴取である。
「同じ香水付けてるのはどうしてですって? まあみんな付けてたし・・・」
「マガラマチシさまぁ・・・(べしょべしょ)」
「私には関係ないでしょ! 早く家に帰してよ!」
こちらはマガと付き合っていた三人を含め大した情報は聞けずに終わった。
そしてある意味本命の、髪飾りの人である。
驚いた事にパーティの主催者であるガエドヴァール氏の息子の嫁、つまりヴィナさんの義理の従姉であるマナカナゥさんだ。
「マナカナゥ、確認しますがこれはあなたのものですね?」
「ええ」
言葉少なに頷くマナカナゥさん。
良かった、身分バチクソに高い女性って事で不安だったが、少なくとも権力を笠に着てわめき散らすようなひとではなくて一安心だ。
まあ義父であるガエドヴァールさんがガチおこなので抑えているだけかもしれんが。
「それで単刀直入に聞きますが、昨夜マガラマチシの部屋に行きましたか?」
「いいえ。ここは昨日の昼に来たけれども、それ以降はずっと夫と一緒で、晩餐も部屋でだったから、マガラマチシは顔も見ていないわ」
「ふむ。では・・・」
それからしばらくヴィナさんはいくつかの質問をした。
マナカナゥさんは冷静に、端的に答えたが、やはりこれまでに分かっているような事ばかりで、新しい手掛かりはない。
彼女と、夫のゴーダさんがずっと一緒にいた「らしい」のは従業員の証言でも確認が取れており、互いに互いのアリバイを証明出来る。
ただここは魔導の国ゲマイで、簡単な幻術くらいなら誰が使えても不思議ではないし、彼女と旦那さんが口裏を合わせて嘘をついたとしても、それを証明する手立てはない。
ヴィナさんも同様の考えに至ったのか、渋い顔で立ち上がり一礼した。
「・・・ありがとうございました。
しばらくはご不便をかけることになるかと思いますが・・・」
「しょうがないわね。
まあ、次の商会議長選に弾みをつけようとしたところでこれだものね。
面子を潰されたのと思惑に水を差されたので、二重に腹立たしいんでしょう」
ぴくり、とヴィナさんの表情が動いた。
「待って下さい、議長選ですか?」
「ああそうね、あなたはついたばかりだから知らなかったかしら?
二月後に商工会議の議長選挙があって、そこに自分の息のかかった候補をねじ込もうとしてるのよ。このパーティはそのための根回しのイベント。
対立候補はナーガリー家・・・知ってるわね、ウチと同格の家――親が兄弟なのに犬猿の仲だったから、子供同士もそうなるわよね――だし、尚更むきになってるみたい」
「そうですか・・・ありがとうございます」
「どういたしまして。ところで髪飾りは?」
「申し訳ありません、しばらくお預かりさせていただきます」
「そ、しょうがないわね」
頷くと、今度こそマナカナゥさんは退出していった。
あの人は隔離しないんですか。
「したいが無理だな。さすがにガエドヴァール叔父の義娘だし、夫のゴーダもたいそうな愛妻家だ。血色を変えて怒鳴り込んでくるだろうよ。
本人も冷静で物わかりのいいほうだが、これまた夫にべったりでな。ゴーダと引き離されるとなったら何をやらかすかわからない」
泣く子と権力者には勝てませんねえ。
「まったくだ」
今日何度目だろうか、ヴィナさんが溜息をついた。
んで、取りあえず参考人は全部呼びましたけど、このほかに呼ぶ人は・・・?
「何人かピックアップしていた人間はいるが、今の話で何人か追加する事になるな。
ガエドヴァール叔父にゴーダ、魔導君主家のご令嬢もだ」
多分名前がリストアップしてあるだろう紙に、サラサラとペンを走らせる。
しばらくその紙を上から下まで眺めていたが、やがてうん、と頷く。
「まずは難物から行こうか。マタクト、叔父を呼んできてくれ」
「かしこまりました」
そこから先はかなり事務的に進行した。
ガエドヴァールさんは怒り冷めやらぬと言った調子ではあったが、あれこれの質問に素直に答えてくれたし、息子のゴーダさんはいかにも人の良さそうな、丸っこい壮年の男性でむしろこちらの方を気遣ってくれた。
なんなら俺たち一座を呼んだのも、この人が強く推したらしい。
もっとも、
「あまり第一印象で判断しない方がいいぞ。あれでマナカナゥ絡みだと別人のようにというか、気の違ったように激しくなる御仁だからな」
だそうだ。
他に話を聞いたのはマガと同じ劇団の団員で文芸(脚本補助)のチャマク・エク。
マガとは仕事仲間で仲は悪くなかったそうだが、女がらみで争いになったことがあったらしい。
口と性格が悪く女癖も悪いろくでなしだが、文才は一級品という、マガとは似たもの同士。
・・・性格悪い同士で気があったのかねえ。
特に気になる事は聞けなかったので次。
魔導君主イフェルド家のご令嬢、シーザ。いかにも素直そうなかわいいお嬢さんである。
ここ数ヶ月、マガから熱烈にアタックを受けていた。
何度か口ごもる場面があり、「何か隠していることがあるな」というのがヴィナさんとシルヴィアさんの共通意見。
とは言え問い詰める材料が足りないので取りあえず泳がせておくことにする。
ヴィナさんのまたいとこであり、ゴーダさんの元妻、シャーンドゥープ。
ゴーダさんと離婚した後は気楽に独身を貫いて、若い貴族女性のファッションリーダーのような立場にいるらしい。
離婚した理由はどうも火遊びが過ぎたことらしく、離婚後は更に奔放になり、呆れたことにマガとチャマク・エク、その他数人の男性と同時に関係を持っていたらしい。
色々言いたいことはあるが、何か言うと間違いなく十倍二十倍になって飛んでくるので口を閉ざす。ふふ、普段はサトラレの俺だが、今はメカ狼。いかに練達の捜査官や海千山千のシルヴィアさんでも内心は読めまい。
「内心を口に出さないのはあんたにしちゃ上出来だ。
ま、多少は学習するらしいね?」
バレテーラ。
さておき後は支配人と、第一発見者の従業員、遺体を運び出したもう一人の従業員。
他に何人かを尋問して今日の仕事は終わった。
・・・これ、数日で終わりますかねえ。
「私もこのような仕事はさほど経験がないからなあ。
外から人を呼んで来れないのが辛い。
叔父次第だが、最悪一ヶ月は見て貰わないといけないかもしれないな」
ぐえー。
俺は犬の姿のまま地面に突っ伏した。
「きゃああああああああああああああああああ!?」
翌朝。俺は女性の悲鳴で叩き起こされた。
ミストヴォルグセンサーに捉えられたのは、二階上の客室からのそれ。
やだなあ。最悪のパターンに陥りつつあるぞ・・・そんなことを考えつつメカ狼に変身して階上に急ぐ。
「あ、あああ・・・・・・・・」
早朝の宿屋の廊下。宮殿かと見まがうそこで、ホテルの従業員の女性がへたり込んでいる。
視線の先には開いた扉。
「ちっ!」
「・・・」
一緒に飛びだしてきていたアーベルさんが舌打ちし、ガイガーさんの顔が険しくなる。
部屋の中では魔導君主家のご令嬢、シーザさんがおなかに大穴を開けて死んでいた。