異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
発見者に口止めをして、シーザさんは体調不良で寝ていると言う事にする。
ヴィナさんにそのことを伝えたら初動を褒められた。
「よくやってくれた。客が動揺したら手がつけられない。
ただまあ、ガエドヴァール叔父には伝えざるをえんだろうな・・・」
とのこと。
このクラスの宿屋だと朝食は基本的にそれぞれの部屋に運ぶので、朝の散歩をするような酔狂な人がいなければばれる事もないだろう。
その辺を少し話しあった上で始まる現場検証。
さっき見た通り、おなかに大きな穴を開けて事切れているシーザさん。
目を見開いた死に顔には驚愕と恐怖。
これ、犯人の顔を見たんでしょうか?
だったら降霊術とかで死者の霊を呼び出したりできないかしらん? どうです師匠?
「前にも言ったが冥界の柵を越えて霊を呼び出すのは非常に難しい。
専用の道具が必要になるしの」
「霊や魂に関しては死んだマガラマチシが長けていたそうだがな・・・」
腕を組んで溜息をつくヴィナさん。
ん? じゃあひょっとして、マガの殺害ってそれ自体が目的なんじゃなくて、その後に行う殺人でマガの力を使わせないためって可能性もある?
「! 無くはないな。考慮には入れておくべきか」
思いつきなので余り本気にしないでくださいね。後でネタにしていじられるのも御免ですし。
そこの小人族、あんたの事だよ。
「心外だな。俺がそんなことをするとでも?」
顔だけはマジメに抗議するアーベルさんはさておき、今まで目をそらしていた部分にスポットライトを当てねばなるまい。
床に横たわるシーザさん、何度も言っているように腹に大穴が空いているのだが、その傍らにはえぐり出されたとおぼしき臓器、多分胃が投げ出されていた。
そして腹の大穴の横にはまた謎のマーク。
これって・・・
「土星を現す神聖文字じゃな。象徴するのは空気と鉄。
内臓であれば胃を筆頭とする消化器官じゃ」
やっぱりかぁ・・・・
これっていよいよ儀式殺人ってことでしょうか?
そう言うと師匠が首を振る。
「わからんよ。現状ではどういう術式を発動させたいのかがさっぱり見えぬでな」
うーん。それじゃまあ、あれやるしかないなあ。
「そうじゃな。ヴィナ殿、もうしばらく誰も来ないようにしておいて下され」
「心得た」
そう言って、魔法のかばんから色々な道具を取り出す師匠。
そう、実は昨日俺がドリルで地下に穴を掘り、野営地から降霊術その他の道具を持ってきていたのだ。
しかしマガの遺体に対して行った降霊の儀式は失敗し、マガの霊は現れなかった。
原因は不明だが「この宿屋に仕掛けられた結界が招霊などを阻害している可能性もあるのでは」というのがオブライアンさんの意見。
師匠も否定はできないらしい。
今回のシーザさんの降霊儀式に失敗したら確定って事になるのかなあ。
カーテンを閉め切り、ドアに厳重に鍵をかける。
表にはガイガーさんとヴィナさんの従者が見張り。
「~~~~~」
「~~~~~」
シーザさんの遺体の周囲に魔法陣を描き、様々な小道具を置いて呪文を唱える師匠。
オブライアンさんが師匠と輪唱するように呪文を唱え、タウさんが一定のリズムでちりーん、ちりーん、と鈴を鳴らす。
「来たれ。来たれ。来たれ・・・」
「!」
シーザさんの遺体の上、中空に青い光が揺らめく。
ちょろっと教えて貰ったが、降霊が成功すると魔法陣の中に満ちる魔力と霊体が反応して
つまりこれは・・・
『A・・・Ah・・・』
魔法陣に仕込まれた《
宙に浮かぶ「それ」の意志に反応するそれは、最初はノイズ混じりに、段々と鮮明になっていく。
「おお・・・」
ざわめく室内を手で制し、ペトロワ師匠が青いゆらめきに語りかける。
「魂よ。名を聞かせてくれ」
『私は・・・私は、シーザニア・・・シーザニア・ファビオン・ラ・イフェルド・・・
シーザニア・ファビオン・ラ・イフェルドです』
最初はどこかぼんやりと。二回目はハッキリと魂が言葉を紡ぐ。
それと同時に青いゆらめきが、床に倒れている遺体と同じ姿を取った。
「え、どういう事?」
「自分の名前を口にして、存在を自覚したことによって自己イメージが確定したんじゃ。
魔導君主家の人間だけあって、随分とたしなみの深いお嬢さんじゃの。
それでシーザ様。ご自分の状態についてはおわかりでしょうかな」
青い幻影が悲しげに微笑む。
『私は死んだのですね。そして降霊に応えてここに来た。
修行で霊魂を呼び出したことはありますが、まさか自分がそう言う立場になるとは思ってもおりませんでした』
「お察しいたします」
『かなりの術師とお見受けしますが、それでも長く持つものではないでしょう。
お尋ねになりたいのは犯人のことですね?』
師匠が頷く。
『残念ながら私も顔は見ていないのです。ただ、犯人は女性の姿をしており、シャーンドゥープ様のお姿をしておりました』
え、どゆこと? ・・・あ、《
『はい。術師でない方にはわかりづらかったですね、すいません。他には何か?』
「マガラマチシ様にアプローチをかけられたとお聞きしております。
何か気になったことはございませんでしょうか」
『ええと・・・そうですね、わたくし、殿方とお付き合いするのは初めてでしたので、何がおかしいのかはよくわかりません』
うわあ・・・。一瞬まぶしすぎて絶句した。
マガ野郎め。こんな純真無垢なお嬢様を毒牙にかけるなどと、万死に値する!
あいてっ! 何で肘でつつかれなきゃならないんだよ! それも同時に二本!
「小僧、邪魔になるからちょっと後ろを向いておれ。もしくはシーツを頭からかぶれ。お主には耳と口だけあればよい」
「なるほど、これは肘鉄を食らわしたくもなる」
だから口には出してへん!
まあお嬢様がクスクス笑ってくれたのでその意味では良かったが。
『ああ、そう言えば一度家の書庫にご案内したことがございました。
どうしても読みたい本が当家の書庫にあるからと』
・・・魔導君主家の書庫に? どうしても読みたい本がある?
ごっついやな予感がするのぉ~~~!
「確かにイフェルド本家の書庫と言えば、オウサムでは並ぶものがない。
そしてイフェルド家が得意とする魔術は・・・」
「霊と精神、じゃの。それはいつのことです?」
『四日前の事です』
どんな本を読んでたんです?
『申し訳ありません、興味がありませんので見ておりませんでした。
ただ、マガラマチシ様は霊と精神の術に関しては、本家のものでもそう太刀打ち出来ないほどの達者だったと聞いております』
うーむ。この宿屋で事件が起きる事に感づいていて、何か対応策をとろうとした?
だめだ、情報が少なすぎてわからん。
それからいくつか質問を重ね、師匠が霊を解放する。
『それでは失礼します。お役に立てたならよろしいのですが』
「御身の魂に安らぎのあらんことを」
一礼する師匠に微笑みを浮かべながら、シーザさんの霊魂は姿を消した。