異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「チャマク・エク、並びにシャーンドゥープを捕縛いたしました。
法の裁きについてはこれからと言う事になりますが、取りあえずはこれで一件落着であります。
みなさま、お疲れさまでした」
「私の主催した催しで、皆様には大変ご迷惑をおかけした。
いずれこの埋め合わせは致しましょう。事件は解決しましたゆえ、どうぞお帰りください」
客を演芸場に集め、舞台上で事件の終息を発表するヴィナさんとガエドヴァールさん。
脇には捕縛されたチャマク・エクとシャーンドゥープ。
そう、事件は見事解決した。
俺を初めとする各員の大活躍はあったがそれを書き記すにはページが足りない。
長いようで短い三日間だったが、これで・・・
「それはないでしょう、ガエドヴァール殿!」
お?
「我々を三日間もこんなところに押し込めておいて、事情の説明もなしか!」
「
「説明をしなさいよ!」
「そうだ! 説明だ!」
騒然とする演芸場内。
苦虫を噛みつぶしたようなガエドヴァールさんの顔。
例の商工会議の議長選で彼らの支持を必要としているだけに、ないがしろにするわけにも行かないのだろう。
ちらりとヴィナさんの方を見るガエドヴァールさん。
彼女も渋い顔で頷いた。
「わかりました。私の方からご説明申し上げます。
そもそも一連の事件はマガラマチシ殿が殺害されたところに端を発しております。
しかし、そこが盲点でした。
殺されたのはマガラマチシではなかったのです」
ざわつく演芸場。
まあ意味わからんわな。
「それは、替え玉だったと言う事か?」
「いえ、殺されたのはマガラマチシであり、死体は間違いなく当人のものです」
「???」
ここで普通なら名探偵の説明となるところだが、この場にいる大半は優れた術師だ。
当然、正解にたどり着くのも早い。
この地を支配する魔導君主家の得意とする術が霊と精神とあってはなおさらだ。
「まさか・・・精神交換か?!」
「じゃあ、チャマク・エクの中にいるのは・・・」
ヴィナさんが大きく頷く。
「ええ。肉体はチャマク・エク。しかし精神は・・・マガラマチシです」
先ほど以上の大きなどよめきが起こった。
整理すると、まずマガラマチシとチャマク・エクは同じ劇場つきの脚本家であり、仲が良かったのも本当だ。
ただマガラマチシは新進気鋭の流行作家という名声を得ていたがその実、話を考えていたのはチャマク・エクだった。
つまりチャマク・エクはマガラマチシのゴーストライターだったのだ。
マガラマチシは原稿料の半分を渡していたが、チャマク・エクは更に多額を要求するようになり、更には自分がゴーストライターであるとばらすと脅迫した。これが一年前。
マガラマチシはいったん屈して要求を呑むが、その時には既にチャマク・エク殺害を考えていたらしい。
自分の女であるシャーンドゥープをチャマク・エクに接近させ、籠絡。
魔導君主家のお嬢様であるシーザさんを口説いて、秘蔵の精神交換の魔術書を盗み見た。
何故分かったかというと、師匠がシーザさんの霊に例の頭クチュクチュをやったからだ。
もっとも肉体を持たない純粋な霊体であるシーザさんの場合、少し記憶を刺激してやるだけで済んだらしいが。
それでいい。おっさんや悪党が頭クチュクチュで苦しむのはいいが、薄幸の美少女がそんな目に会う必要は無いのだ・・・
どこから手に入れたのか、マガラマチシは精神交換を永続的にする魔道具を持っていた。
あれこれやるついでに、マガラマチシとしてあちこちに大量の借金をし、家のものを売り払い、新たな人生を送ろうと考えていたらしい。
そして殺害当日、シャラドさんを呼び出してアリバイを作り、彼女が帰った直後に隠れていたシャーンドゥープの助けを借りて、チャマク・エクと精神を交換し、殺害。
マガラマチシの降霊が失敗したのも、本人の魂は死んでいなかったからだ。
例の神聖文字は捜査のかく乱のためだったとのこと。
ついで魔術書の情報を抜かれないためにシーザさんを殺害。
実行犯は幻影の術に長けたシャーンドゥープ。
マガラマチシはこの宿屋の結界があれば降霊術は成功しないと高をくくっていたようだが、それでも念のために幻影変身を施した上で襲わせた。
実はシーザさんの得意分野も幻影の術であり、一目見れば幻影と分かるだろうと見越しての上の情報かく乱だったらしい。
もちろん二番目の香水もこいつらのかく乱だ。
広めた上で事件現場に撒いておくことによって容疑者を増やす。
あれもファッションリーダーであるシャーンドゥープが広めたものであり、シーザさんがそれを覚えていたのだ。
決め手は「マガラマチシの死体」に対して行った二回目の降霊術だ。
当然失敗したのだが、一回目には同席していなかったアルテがそれを見て言ったのだ。
「この体の魂はまだ生きている」と。
そこから先はトントン拍子に話が転がり、師匠がマガラマチシの精神がチャマク・エクに入っていることを確認。
特殊な《加護》を持つアーナがつきっきりで監視して、二人がシャラドさんを殺害しようとしたところを御用、というわけである。
「・・・」
「・・・」
演芸場は声もない。
特にマガラマチシが死んでいなかったこと、自分が殺されるところだったことを知ったシャラドさんは顔を真っ青にしている。
「ああ・・・その」
ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。
カエドヴァールさんが何かを言おうとしたとき、拍手が響いた。
「マ、マナカナゥ?」
立ち上がって歩み出たのはゴーダさんの奥方、マナカナゥさん。
「お見事ですわ。これだけでも戯曲になりそうなくらい、恐ろしい事件、素晴らしい解決。
でも、もう少し波乱があると楽しいと、そうは思われません?」
歯を見せてにっこりと笑う。
?!
「危ないっ!」
ヴィナさんが咄嗟にカエドヴァールさんに飛びかかって押し倒す。
白い歯の隙間から発射されたのは無数の針。
「かっ!」
「がっ!?」
それらがチャマク・エクとシャーンドゥープに突き刺さり、二人はものも言わずに痙攣して倒れた。
毒針か!?
「ま、マナカナゥ・・・ひいっ!?」
「マナカナゥ」の首が180度回転してニコリと笑った。
ゴーダさんが腰を抜かす。
顔の皮がぺろりと剥がれ、金属質の地肌が露わになる。
『アナタとの生活、楽しかったワ』
「あ、あ、あ・・・」
ゴーダさんの顔を流れる涙と鼻水。
機械音声。
今や正体を現した魔導人形は再び俺たち――いや、俺に顔を向ける。
『我ガ主から伝言デス。この状況を生き延びテ、私ノ前ニ現れる事を望ム、ト』
「待――」
次の瞬間、閃光が演芸場を照らし出した。