異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三章「ファーレンの閃光」
第十九話 明日のことなんて分からないから


「苦境は人を叩き上げるか押し潰すかだ。これをチャンスに変えてみたらどうだ」

 

     ――黒澤明「野良犬」――

 

 

 

 二週間程旅をしてファーレンの町。

 途中の町や村でも半日だけ公演したりして旅費を稼ぎながらの旅である。

 ・・・正直途中で何か襲ってこないかと全員思ってたのだが、何もなかった。

 多分首都クリエ・オウンドで待ってるんだろうな、黒幕とやらは。

 

「なんだ・・・何だこれは!?」

 

 取りあえず、俺達の芸を見たヴィナさんが目を丸くしていたので、その点では勝利である。

 

 

 

「ではな」

「あたしらは火除け地で興行やってると思いますんで、暇なら来てください」

「そうするとしよう」

 

 ファーレンの城門をくぐり(ヴィナさんがいたので俺達も顔パスで入れた。お嬢様パねえ)、市内に入ったところで別れる。

 リタとアーナが手を振るのに応えて手を振り返してくれた。ええ人や。

 

 そこから先は顔役に挨拶→ジェッター設営→放課後ティータイム→買い出しのいつものパターン。

 アルテもそろそろ慣れてきて、肉や野菜はアルテとカオルくん、香辛料はリタと俺というパターンに回帰している。まあ念のためにペトロワ師匠が付いてきているのと、アーナが一緒なのがちょっと違うところだ。

 リタと手を繋ぎたがるアーナは仲の良い姉妹のようで微笑ましい。

 まあ精神年齢はリタの方がお姉さんだが。

 

「このハーブなどは牛肉を漬けると絶品でな。お前の好きな鶏の香草包みもこれだぞ。

 帰ったらやり方を教えてやる。男を捕まえるなら料理ができんとな!」

「は、はあ・・・」

 

 ん? この声は・・・

 

「あ」

「あ」

 

 人の良さそうなお兄さんと連れだって市場を歩いている男装の麗人。

 半日前に別れたばかりのヴィナ・カドフィスさんであった。

 

 

 

 

 取りあえず買い物袋を抱えて手近の喫茶店に。

 砂糖や香料を入れた独特のフレーバーの香草茶。マサラチャーイやな。

 ガラスの器に入って出てきたのは砂糖と牛乳で甘く煮込んだ米にナッツを加えたスイーツ。

 見た目も綺麗でリタやアーナが大喜びである。

 

「随分と早い再会になったものだ」

 

 旅から旅の旅烏ですからね。新しい街に入ったらまず新鮮な食料の買い出しですよ。

 お隣の男性は恋人か何かで?

 そう言うとヴィナさんが吹き出した。

 

「断じて違う!」

「ああ、なんて悲しいことを言うんだい。ヴィナ、ぼくの太陽にして地に咲く鮮やかなる花よ。ぼくは君を心から愛しているのに」

「そう言うのをやめろと言っているのです兄上!」

 

 どうどう。

 今にもつかみかからんばかりの形相のヴィナさん。そうか、お兄さんでしたか。

 

「初めまして。ぼくはヴィナの兄クジュラ。オウサムでは妹がお世話になったみたいで」

 

 まあこっちも巻き込まれた側ですので。

 

「そういえばヴィナさんって、貴族でそれもかなりいい方のお嬢様なんでしょ?

 そう言う人でも市場を歩くの?」

 

 幸せそうな顔でライスプディングを食べていたリタがそう言うと、カドフィス兄妹の表情が劇的に変化した。

 ヴィナさんは「げっ」という顔に、お兄さんはカナリヤの籠の前で舌なめずりする猫のような表情に。力関係が分かるなあ。

 

「いやあ、ヴィナは頭もいいし腕も立つし術師としても優秀なんだが、どうにも家のことが苦手でねえ。兄としては見過ごせないわけさ。今のままじゃ嫁入りにも苦労しそうだしねえ」

「大きなお世話です! 兄上は料理が趣味だからそんなことをおっしゃいますが!」

 

 よよよ、と泣き真似をするクジュラさんと、食ってかかるヴィナさん。

 リタじゃないけど、お二方ほどいい家でも女性が料理なんかするんです?

 

「少なくともそれがたしなみとされてはいるね。出来ない女性はやはり人気がない・・・なんなら君、ヴィナを貰ってくれない?」

 

 ブーッ!

 俺とヴィナさんが口の中のお茶を同時に吹き出した。しぶきがかかって悲鳴が上がる。

 

「す、すまない。兄上! いきなり何を!」

「だってヴィナ、こう言う男性がタイプじゃない? 初恋の人もさ・・・」

「”#$#%&Y!?」

 

 最早人の声ではない雄叫びを上げて兄に襲いかかるヴィナさん。悲鳴を上げながらもどこか楽しそうなクジュラさん。仲のいい兄妹やなー(棒)。

 え、リタも師匠も、何でこっち睨んでるの!?

 

「ムルカッタ、じかくがない」

 

 うるせーよ!

 

 

 

「・・・大体、結婚というなら兄上の方がよほど喫緊の課題ではありませんか。

 婚約者を放っておいて、こんなところで私と歩いていていいのですか」

「残り少ない独身時代だからねー。今のうちにヴィナとも絆を深めておこうと思ったわけさ」

「むう」

 

 何か言いたいけど言えない感じのヴィナさん。仲はいいんだろうな。

 それはそれとしてご結婚おめでとうございます。

 

「ありがとう。まあお互いバタバタしててね。正直彼女と過ごす時間も中々取れない。

 本末転倒じゃないかなあ、こういうの」

 

 お偉いさんはそう言う所も大変ですねえ。

 

「まったくだよ。まあそう言う家であるから文句は言えないけどね。

 顔を合わせたこともない女性といきなり婚約者になることもあるから、それを考えればぼくは幸せな方さ。子供の頃から仲のいい女性と相思相愛になれたんだから」

 

 はいはい、ごちそうさま。

 

 

 

「クジュラ・カドフィスか」

 

 野営地に帰ると、アーベルさんたちも帰ってきていた。

 既に料理が始まっているらしく、いい匂いが漂ってきている。

 何か心当たりが?

 

「俺の聞いた話が確かなら、そいつの婚約者って魔導君主家の一人娘だぜ」

 

 マジですか!

 

「分家の中でも飛び抜けて優秀で、子供の頃から仲もいいってことで、婿入りの話がトントン拍子にまとまったそうだ」

 

 へー。ひょうきんなお兄さんって感じだったけど、あれで切れ者なんやなあ。

 

「ちょっとハヤト! リタ! 帰ってきたなら手伝ってよ!」

 

 炊事場の方からアルテの声。

 おっと、お怒りが爆発する前に急ぎ向かわなければ。

 

「いこ、お兄ちゃん、アーナ」

「うん!」

 

 大型犬のように頷くアーナを微笑ましく思いながら、俺達は炊事場に向かった。

 

 

 

 翌日。

 野営地の外で、何やらざわついている。

 俺達同様この辺にテントを張っている芸人の人達が人だかりを作っていた。

 どうしたんですか?

 

「おう、あの立て札だよ。見てみ?」

 

 どれどれ・・・?

 人混みをかき分けて覗き込んだ立て札にはこう書いてあった。

 

『カドフィス家、家宝を盗まれる。ファーレン本家との婚約も破棄か!?』

 

 !?

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