異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第四話 MS-08TX

 今、俺達は夜の弾丸登山をしている。

 明かりをつけると目立つので、乏しい月明かりだけが頼りだ。

 とは言っても夜目の利くドワーフのラファエルさんの後について一列に歩いているだけだし、ペトロワ師匠が《進軍(マーチ)》とかいう術で移動を補助してくれている。

 脚が勝手に動くし全然疲れない感じ。魔法ってすごい!

 まあ当の本人はアルテにおぶわれているが、お年だしこれはしゃーない。一方リタはオブライアンさんがおぶっている。ガイガーさんをいざというときにフリーにするためだ。足元には夜目にもカラフルなハムリス達がちょろちょろと。

 

 この町、ギャップの背面には大きな山があった。下手をすれば2000mくらいはあるか?

 通称魔王山。特に魔王がいたわけではないが、昔火を吹いて町を焼いたという伝説があるらしい。とは言え少なくとも二千年は前の話だ。

 今気にするべきは怪物が住んでいるという噂の方で、薪拾いや狩人もふもとの森より上には行かないし、何年かに一度馬鹿な若者が肝試しで山に登って行方不明になるというのはよくある話らしい。

 

「つまり、そこに吸血鬼の根城がある・・・?」

「少なくとも、目印をつけたあの自称術師が山へ向かって逃げているのは間違いないの」

 

 まあ、クッソ怪しいのは確かだな。

 そんなことを話していると、ペトロワ師匠が「ん?」と首をかしげた。

 

「どうした、ばーさん」

「いや、反応がな。山の表面ではなく中に潜ったんじゃ。洞窟でも入ったかの?」

 

 程なくその言葉が正しかったことが証明された。

 森を抜けて岩肌を上っていくと、山の中腹ほどで師匠が声をかけ、全員を立ち止まらせる。

 

「~~~~」

 

 しばらく周囲に目を凝らした後師匠が呪文を唱えると、今までただの岩肌だったところにぽっかりと洞窟の入り口が出来ていた。

 

「・・・」

「・・・」

 

 俺達は顔を見合わせると、再び隊列を組んで闇の中に足を踏み入れた。

 

 

 

 かつーんこつーん。

 洞窟の中に俺達の足音が反響する。

 流石に真っ暗闇の中では前の人間についていくのも難しいので、俺とアルテとカオルくん、座長にはペトロワ師匠が暗視の術をかけてくれた。

 アーベルさんたち小人族(バグシー)はドワーフほどでなくても暗闇で目が見えるし、師匠とガイガーさんは修行の結果闇の中でも不自由ないそうだ。

 すげえな、心眼ってやつか・・・?

 魔法使いの師匠はともかく、ガイガーさんは元々コマ回しの芸人なのに。

 心眼センサーオープンするようなコマ回しの修行ってなんだろう・・・

 閑話休題(それはさておき)

 

 十分も歩かないうちに行く先が明るくなってきた。

 なんだろう・・・?

 その疑問はすぐに晴れた。

 五分も歩かないうちに開けた場所に出る。その周囲が溶岩の光に照らし出されていた。

 

『ようこそ、冒険者!』

 

 ははははは、と洞窟の壁に笑い声が反響する。

 溶岩の池の中央に一本の渡り道。

 周囲の溶岩の池には、裂けた口、尖った髪の毛と角を持つ人間のようにも見える炎の塊が十体ほども浮かんでいた。

 

「な・・・な?!」

「なんと。炎の魔神(イフリート)か」

 

 ペトロワ師匠の声に驚きがある。他の人達は驚きの余り声も出ない。

 つまりそれだけ珍しい存在って事か。

 

「イフリートか・・・中東圏の魔神だね。いわゆる願いを叶えてくれるランプの魔神だ」

「あれってジンって奴じゃなかったっけ?」

「それの悪目の奴、かな」

「なるほど」

 

 例によって博識なカオルくんの解説に頷く。

 こちらとあちらで名称が似通っているのもオリジナル冒険者族のせいなのかねえ。

 そんな俺に構わず、一際大きい炎の魔神(イフリート)が含み笑いと共に口を開く。

 

「アードップの言っていた冒険者とは貴様らか。

 丁度奴隷が死んで不自由しておったところだ。

 我らの新たな奴隷にしてやろう」

「待ちな!」

 

 イフリートの親玉が右手を上げる。

 それを振り下ろし、合わせて十一体のイフリートが動こうとしたところで、シルヴィア座長の声がその動きを止めた。座長、声がいいのもあるが、ここぞと言うときに度胸が据わっていて駆け引きもうまい。多分、今のタイミングじゃなかったら普通に襲われてた。

 親玉がじろり、と座長をねめつけた。

 

「なんだ? 命乞いか? それとも交渉でもする気か? 何か差し出せるものがあるとでも思っているのか」

「もちろんあるさ。例えば情報とかね」

「ほう」

 

 あ、食いついた。

 

「あんた今奴隷っつったろ。その奴隷がどこから来たかは知ってるのかい?」

 

 ゴオ、と魔神の体を構成する炎が軽く揺れる。

 人間で言うところの「鼻で笑った」ような反応かもしれない。

 

「奴隷は奴隷よ。雑用以外に価値もあるまい」

「はっ」

 

 座長が、今度は本当に鼻で笑った。

 

「余りにもお馬鹿すぎて泣けてくるねえ。確かにあんたらに捕まるような馬鹿どもだが、本人はともかくその家族には力を持ってる奴だっているんだよ?

 山に入って行方不明になったまではわかってるんだ。大々的に捜索すりゃあ、あんたらの仕業だっていずれはばれる」

「人間が何匹来ようとも・・・」

「それが『勇者』でも?」

 

 ぴくり、と炎が震えた。

 

「ああ、確かに人間は弱いさ。けど数が多い。そして数が多いから中にはとんでもなく強い連中もいる。それこそドラゴンでも悪魔でも倒せるような連中がね。

 もちろん、あんたらがドラゴンより強いってんなら別だけどさ」

「・・・」

 

 沈黙。

 イフリート達の炎が僅かに揺れる。対照的に親玉の炎は光を強めたように思えた。

 

「・・・だから、どうしたというのだ。だとしても貴様らが我々に差し出せるものはあるまい」

「ああ、ないね」

「なっ・・・?」

 

 にやり、と笑う座長にイフリートが戸惑う。

 悪いな、もう終わりなんだ。

 

「ビームフリーザー!」

 

 俺の両耳から白い光線が十一本、ほとばしる。

 光線はイフリートたちに全て命中し、雑魚たちは一瞬にして凍結し、崩れ去った。

 氷の破片が溶岩の熱で一瞬にして溶け、薄い水蒸気になる。

 

「か・・・が・・・」

「おや、まだ生きてんのかい。しぶといねえ」

 

 親玉はまだ生きていた。

 もっとも首から下は同じように粉々に凍結崩壊しており、頭の炎も揺らいで消えつつある。

 溶岩の中に落ちたら熱で再生しないかとも思ったが、そう言う事もなさそうだ。

 

「そうそう、最後に一つ。今まで言ったことは全部口から出任せだから気にしなくてイイよ」

「・・・!? ・・・・・・・・! ・・・・・!」

 

 最後に悔しさと怒りに顔を歪め、何かを叫ぼうとして声にならず、どれだけの間かここに巣くってきた炎の魔神の親玉はそのまま消滅した。

 

「オッケー! ハヤト良くやった!」

「まあ時間を貰いましたのでなんとか」

 

 座長が口先三寸で時間を稼いでいる間、俺はデモゴディの武器の一つである冷凍光線、ビームフリーザーの用意をしていたのだ。耳から出るのも元ネタ通りであるが、人間の姿でやるとちょっとまぬけだな・・・。

 ともかく座長の出任せも、十一体に確実に命中させるために周囲のイフリートたち一匹一匹に狙いをつける時間が必要だったからだ。ペトロワ師匠があらかじめかけておいた念話の術で素早く意志疎通した俺達のコンビプレイである。

 

「はっはっは! 謙遜しないでもいいさね! 何なら個人的にご褒美あげてもいいよぉ?」

 

 頭を脇に抱えられる。おっぱいが! おっぱいが顔に!

 アルテのよりでかい!

 

「ハヤト!」

「ハヤトくん!」

 

 アルテとカオルくんの怒りの声が溶岩の洞窟に響いた。




MS-08TXはガンダムに出てくるMS、イフリートの型式番号。
EXAM積んでなかったので負けました(ぉ
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