異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十六話 それを言っちゃあおしまいよ

 取りあえず俺は三百貫デブから解放され、宴の会場に戻る。

 ダー氏は何やらやることがあるらしく、ご一緒にとは行かなかった。

 いや別に一緒にいたいわけじゃないけど。

 

「暗殺の黒幕は・・・」

「お家の反主流派が・・・」

「ダー・シ閣下の治世が長く続きすぎた反動・・・」

 

 主のいない宴席は未だにざわついていたが、それでも落ち着きを取り戻して様々な政治的密談が飛び交っているのが聞こえる。口を動かしているのに何も聞こえない人達がいて何かと思ったら、どうやら沈黙の結界とやらを張っているらしい。

 そう言う事を専門にする術師がいるのだと後で教えて貰った。

 

 なおアーナはジュースの水差しを抱えてウキウキしながら姿を消した。

 「リタと一緒に飲む♪」のだそうな。

 まあいて貰っても、多分もう仕事はないだろうからいいけどさ・・・。

 

「どうだった?」

 

 シルヴィアさんの問いかけに溜息をつく。

 いやもう、色々あって何から話せばいいのやら。

 

「まあとりあえず分かるところだけ話してみい」

 

 治療から戻ってきていた師匠が促す。

 とん、と杖を突くと周囲に何やら魔力が。あー、これが沈黙の結界か。

 ともかく経緯説明(かくかくしかじか)。なお受験地獄のところを除く。

 

「うーむ・・・」

「なんとまあ」

 

 海千山千の二人が揃って溜息をついた。

 

「やはりきゃつがお前達を召喚した術師か・・・どうやったかは分からぬが恐るべき業前じゃの」

「アタシはそれよりアントンの野郎のホラがマジだったことに驚いてるよ。

 最初のクソ国王はともかく、吸血鬼に、魔法の魚に、封印された混沌に妖魔に大怪獣。

 『王に叛くもの(アンティゴネー)』の連中もそうだけど、どれだけ手が広ければここまでやらかせるんだい」

 

 多分まだ「王に叛くもの(アンティゴネー)」の組織は残ってるんだろうし、他に色々裏の組織や表の組織があるんでしょうねえ。

 

「じゃのう。まがりなりにも魔導君主じゃ。奴個人が持つ魔力や評判、財力、コネ。

 表の権力もあれば裏の組織もある。下手な真龍よりもおっかない相手じゃ。

 せめて一目この目で見ておきたかったが」

 

 ざわめくホールの中で、舞台の上の王座は空。

 宴の主役は未だに戻らないままだった。

 師匠がもう一度溜息をついて沈黙の結界を解除する。

 もう帰ります?

 

「待ちな。せっかくこんなところまで来れたんだ。

 出来る限りの情報は引き出していこうじゃないか」

 

 まあ・・・そうですね。コネで入れてくれたリザイアさんがあんな事になったのにまだ追い出されてないし。でも普通俺達も取り調べされません?

 

「普通はね。でもダー・シ様がおっしゃったのさ。

 彼女らは私を助けてくれたのだから暗殺者というわけではない、むしろ私の恩人だとね。

 だから追い出されはしないが、かと言って話しかけるのもはばかられる。

 そんなところだろうさ」

 

 声はすれども姿は見えず。

 前にアーベルさんに言われた通り、首を動かさずに視線だけで周囲を探る俺達。

 師匠が小声で囁く。

 

「向こうに視線を向けるな。垂れ幕の傍にいる男の遠話の術じゃ」

「恐れ入ります。取りあえず会場を出ては頂けませんか。

 適当なところで落ち合いましょう」

「ではここから西に二ブロックの『ボンベイ』という店で」

「了解しました。少し時間がかかるので待っていて下さい」

 

 

 

 それから二時間ほど。

 店を貸しきりにして待っていた俺達の前に、声の主がようやく姿を現した。

 緊張した顔で話しかけてきたのは・・・知らない顔だな?

 シルヴィアさんが口に扇を当てて首をかしげる。

 ほんとこう言うところは絵になるんだよなこの人。

 

「それで? わざわざ話しかけて来たって事は理由があるんだろう?」

「もちろんだ。ただその前に・・・おお」

 

 アルコンさんが感嘆の声を上げたのは、店を包むように再発動した師匠の沈黙の結界。遠視や魔法的な探知を防ぐ効果もあるらしい。

 

「なんと・・・美しい」

 

 ちゃんとした術師は魔力だけではなく、張り巡らされた術式を見る事ができる。

 さっきもこちらを見て驚いていた人達がいたので、多分師匠の術式は芸術レベルで見事なんだろう。

 

「おっと、私の話だったな。その前に・・・」

 

 印を切って呪文を唱えると、男の姿が変わる。

 貴族の晴れ着を着たその人はリザイアさんが紹介してくれた同僚の一人、そして彼らを捕縛するときに複雑な顔をしていたアルコンさんという貴族だった。

 着席して飲み物を注文する仕草がいちいち洗練されている。

 

「失礼した。色々あってね。

 それで話の前に確かめたいのだが・・・あなた方はリザイアとどういう知り合いなのだ?

 外国人・・・市井の術師か? どうやってあれと知り合った」

「あたしらは芸人でしてね。お気に入り頂いて、このような場所にお連れ頂いた次第で。

 いやあ、今の状況は本当に何が何だか」

「芸人? それだけの魔力と技量があってですか!?」

 

 ペトロワ師匠の方を見て本気で驚くアルコンさん。

 まーどこぞの宮廷魔術師とか言われても不思議じゃない人ではあるわな。

 

「色々ございましたが宮仕えは気苦労も多うございましてな。芸人一座で未来を見る魔女を演じるのもこれは中々に楽しい暮らしでございますよ」

「うらやましいことですな。私などはしがらみが・・・いや、これは愚痴ですか」

 

 本気でそう思っているのだろう、まとっている緊張が一瞬だけ緩んだ。

 

「ではもう一つ。その様に自由に生きる方々が何故このような場所に?

 パトロンを得たいというわけでもなかろう」

「縛られることは望みませんけどね、お偉方にコネを作っておけば色々と便利なこともございまして」

「それは・・・」

 

 笑みを浮かべるシルヴィアさんとアルコンさん。

 丁々発止、互いに警戒心バリバリで裏を読んでの腹芸のやりとりである。

 しかし何か違和感があるな?

 こいつ俺たちの事を探ってくるって事は・・・

 脳裏によぎったのはダー・シの言葉と襲いかかる瞬間の、リザイアさんのガラスのような目玉。

 

「ああそうか。この人クレモント家の反ダー・シ勢力で、リザイアさんの同志なのか」

 

 洗練された仕草で果実酒を口に運んでいたアルコンさんが、口の中のものを盛大に吹き出した。

 せき込むアルコンさんをよそ目に、シルヴィアさんが俺の頭を割と本気で殴る。

 痛い!

 

「何言ってんだい、この馬鹿! ホントでも口に出したら台無しだろ!」

 

 サーセン。

 でもちょっと時間かかりすぎだし・・・

 そう言ったら今度は師匠に杖で殴られた。

 だから痛いって!

 

「だからと言って交渉してるのを邪魔するでない。

 まあ、結果オーライじゃがの」

 

 口元をハンカチで覆ったアルコンさんが苦笑していた。




アルコンさんは師匠にだけは敬語使ってます。

>ボンベイ
新宿にあった、知る人ぞ知るインドカレーの店。
名店だったのだがオーナーの無理解で潰れてしまった。
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