異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
苦笑を貼り付けつつ、アルコンさんがこちらに顔を向けた。
「参考までに聞きたいのだが、どうしてわかったのかね?」
まー、あの肉饅頭から色々聞いてましたので。
まずダー氏は俺たちの事をずっとスパイしてたので、俺達が何者かは完璧に知り尽くしてる。
わざわざ部下を派遣して俺達を探るようなことはしない。
んで、あいつは半分思惑通りで半分流れと言っていた。
リザイアさんがガラスのような目をしてたのは多分あいつの仕込み。
もう半分は何だろう? あそこまで大ごとにするつもりはなかったとかか?
まあそれはおいといて、目的は反ダー・シ勢力を弾圧する口実作りってところか?
で、あなたはそれを確かめに、変装したり色々して俺達に接触しに来たと。
そう言うと周囲に溜息が満ちた。
「なんでこの頭の切れを普段は発揮出来ないかねえ」
じゃっかぁしいっ! 素直に褒めろよ?!
「日頃の行いじゃないかなあ」
アルテさん! 何でそんなしみじみ言うんですかアルテさん!
「あー、続きいいかね?」
アッハイ、すいません。
話の内容はまあ大体想像通りだった。
クレモント家は成立以来ダー・シが独裁的に運営していてその支配力は絶対的だが、それでも数百年続けばよどみは出てくる。それをどうにかしようとしていたのがアルコンさんやリザイアさんのグループとのこと。
「私達改革派は別にダー・シ様に反旗を翻しているわけじゃないんだ。
偉大な術師として、魔導君主として尊敬している。これは嘘じゃない。
ただ、家中の膿を出したいだけなんだ」
勢力としてはどれくらい広がってるんですか?
「若手中心ではあるが、家中のおおよそ1/3くらいか。ちなみに守旧派がほぼ同数、中立派もそのくらい」
ただ、腐敗してるって事は権力の中枢にいて実権を握っているのは守旧派ですよね。
「その通りだ」
再び溜息をつくアルコンさん。
「今言った通り若い人間の割合も多くてな。
同じ家でも親が守旧派、子が改革派ということも普通にある。
若いと言う事は重要なお役目についていないと言うことだから、どうしても勢力は弱い」
なのに潰しに来た? 妙ですね。
「うむ。改革派の系譜はこの百年近く、我らの祖父の代からと聞く。
ダー・シ様は何もおっしゃらぬが、我らのことを目障りと思っているなら、もっと早くに動くだろうと思うのだ。あの方はそう言う方だ」
「つまりここ最近で何か御当主様の機嫌を損ねることがあったってぇわけか」
「可能性としてはな。ただそれが具体的には思いつかん」
会話が途切れる。
アーベルさんもシルヴィアさんも師匠もアルコンさんも、うまい意見が浮かばない。
しばらくあれこれ話した後でアルコンさんが首を振る。
「今の時点ではこれ以上は進展はなさそうだな。
良かったら今後とも連絡を取りたいがどうだろう」
「いいだろう。こちらからもお願いしたいところだね」
互いに連絡先を交換して、それではとお開きになりかけたところでアルコンさんがこめかみに指を当てた。念話かな?
見る見るうちにその顔色が悪くなっていく。
「改革派の仲間の一人が家に踏み込まれて捕縛された。
私の家にもダー・シ様直属の魔導兵達がやってきて、私を捜していったらしい」
うわーい。
確かに手が早いなあの百貫デブ。
「・・・あたしらのところに隠れるってのはどうだい? 満足なもてなしはできないと思うけどさ」
「いや、隠れる屋根があるだけありがたい。この礼はきっとする」
苦笑いしてアルコンさんが頭を下げた。
再び《幻影変装》をまとって、庶民姿になったアルコンさんを連れて野営地まで。
幸い逮捕しに来る私兵や監視のようなものは無かった。
師匠の対抗術やカオルくんの知覚魔剣、ミストヴォルグセンサーやリタの友達も総動員してのことだから大丈夫と思うが、それでも今まではキッチリ監視されてたみたいだし気は抜けない。
用心を切らさず、俺達は野営地に無事帰り着いた。
翌日の昼飯時。午前休んで情報を探りに行っていたアーベルさんの話をみんなで聞く。
「今のところ大っぴらに兵が踏み込んだのはアンタの家と、もう一つだけらしいな。
アンタの家もご両親や妻子は無事だし、もう一つも本人以外に手は出していないらしい。
ただ、ダー・シの兵はまだ中にいる」
「感謝する」
アルコンさんが頭を下げる。今は粗末な服に身を包み、むさ苦しいおっさんの姿。それでもガイガーさん曰く、見る人が見れば腕の立つ戦士だとすぐ分かるそうだが。
リザイアさんと同じ武門の人なんです? もっともそうでなきゃ押さえ込む側に回らないか。
「まあそんなところだ。魔導の国とは言っても、やはり身体を張る人間は必要だからね。
しかし・・・」
と、アルコンさんがそこまで言ったところで外から足音。
思わず身構えるのを師匠が手で制した。
「案ずるでない、味方じゃ」
「失礼する」
その言葉と共にテントに入って来たのはロウブさんとヴィナさん、トラコさん。
「・・・む? そちらの剣士殿はどこかで見た覚えが・・・」
「ああ、リザイアの友人なのだろう? そうだ、思い出した。いとこのアルコンどのだな?
十数年前に何度か会ったぞ。顔は違うが気配でわかる」
分かるのかよ。犬かあんたは。
「十数年前・・・あっ! ロウブとか言う、リザイアとつるんでた悪い仲間かっ!?」
テントの中が爆笑で満ちた。
大笑いしてるウチの面子をよそに、ヴィナさんは苦笑、トラコさんは物凄く情けなさそうな顔をしている。当のロウブさんは爆笑する側だ。
笑ってるんじゃねーよ、言われてるぞおっさん。
「と言われても、実際あの頃のそれがしどもは馬鹿な餓鬼の集まりだったからな。
愚連隊としか言いようのない連中だった。いやあ、若かったなあ」
楽しそうに述懐するロウブさんだけど後ろ! 後ろでトラコさんがプルプル震えてるから!
「兄が申し訳ない・・・何となれば今すぐにでも首を取ってお詫びと致しますので・・・!」
「い、いやそこまでは・・・」
何だかんだトラコさんも脳みそのネジが飛んでるというか、アルコンさん引いてますから。
ともかく、この三人は別口であれこれ探っていたので昨晩はいなかったのだ。
ロウブさんも何か後詰めが必要って事で首根っこひっつかんで連れて行かれてたし。
ともあれ
「ふむ・・・ざっとした話は聞いたが、やはりこのタイミングで仕掛ける理由が判らんな」
「ダー・シ閣下の狙いはハヤトとカオルなのだろう? 彼らがこの地に来たからという可能性は?」
「それはそれでどう絡んでくるのか読めんな・・・」
ですよねー。
改革派の主立った人間はリザイアさんたち五人と、アルコンさんともう一人でほぼ壊滅した?
「まあそうだな。少なくとも大幅に勢力は減じるだろう」
皆さん武門の家なので? リザイアさんたちはみんな武芸の心得がありそうでしたけど。
「私たちはそうだな。だが、ヴィットゥ・・・もう一人の逮捕された男は内政畑の人間でな。経理を司る家の出だ」
経理の家・・・ん? んんん~~~~?
何か引っかかるなあ?