異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
トンネルを抜けると、そこは南国だった。
「!?」
「何これ?」
「昔行ったゲマイみたいですぞ・・・」
イフリート達を倒したあの後、俺達は師匠の指示に従い洞窟の奥へ奥へと進んでいった。
そして暑ッ苦しい溶岩の洞窟を抜けたと思ったら、むわっと吹き付けてきたのは湿度バリ高のサウナみたいな空気。これ四十度くらいあるんじゃないか? 今夜だよ?
ちなみにラファエルさんの言ってるゲマイというのは南の方にある五大国の一つ、ゲマイ魔導共和国のことで大体インドみたいな感じ。南の方は熱帯雨林があってスコールが降るらしい。
「ほんとジャングルみたいだね・・・」
「だなあ」
カオルくんの言葉に頷く。
暗視の術をかけて貰ったから見えるのだが、周囲にはシダ植物とか南国の樹みたいなのが密集していた。ジャングルの木々の向こうから上にそびえ立つ岩の壁と、上空に丸く切り取られた夜空が見える。
「火口の中ってことか?」
「推測じゃが、溶岩の熱が火口の中を暖めて、ここだけ温室のようになっておるんじゃろうな。南の方の植物が生えておることからして、実際に誰かがそうした温室として使っておったのかもしれん」
うーむ。
まあ興味深いが今は吸血鬼のほうだ。
「行くよ、野郎ども」
シルヴィアさんの号令一下、俺達は行軍を再開した。
そこから先はもう本当に苦難の連続だった。次々と現れるモンスターに、全員で立ち向かっていく。
7mくらいの巨大グールだ!
「ええいかまわん、どのみちわしらの侵入は既にばれておる! カオル、サンダースウォードで吹っ飛ばせ!」
「はいっ! サンダースウォード!」
狼獣人の群れだ!
「こいつは魔剣か銀の武器でなくばすぐに再生してしまうぞ!」
「ビームフリーザー!」
「固まったところをサンダースウォードでとどめ!」
「うわすごい、カッチンカッチン」
「バナナで釘が打てます」
「バナナって何・・・?」
双頭のオーガーだ!
「・・・」
『グワーッ!』
「 」
「まあ普通の剣が通じる相手ならガイガーの旦那一人で十分だよね・・・」
10mはある一つ目の巨人! サイクロプスって奴か!?
「こやつらは鍛冶の巨人の末裔じゃ! 火は通じにくいし、冷気にも耐性があるぞ!」
「ミサイルドリル!」
「肘から何か出たー!?」
『ギャアアアアアッ!』
「目を潰してからのウイングカッター! 首筋を切り裂いて終わりだ!」
トロールの群れだ!
「首をはねても炎で焼かなければすぐに再生するぞ! 日光でもあればいいんじゃが・・・」
「日光・・・太陽・・・これだ! 変身!」
「なっ・・・何だそりゃ!? 顔と角の付いた変な柱のてっぺんに金の皿が!?」
今俺が変身したのは大阪にある、かつて万博が開催された地に残る奇妙なモニュメント。
日本一有名な芸術作品の一つ。
布をかぶった人影のような、子供が書いた落書きを立体にしたかのようなそれは「芸術は爆発だ!」「でたらめをやれ」と公言した異色の芸術家、岡○太郎の伝説の傑作。
頭のおかしいオモチャ会社がシリーズ四十周年を記念して満を持して発売した超合金。
もちろんロボでも何でもない芸術作品を変形させてロボに仕立て上げてしまった世紀の怪作。
「柱が変形した!」
「人型に!?」
「手足が出てきただけで変形にしたって手抜きだろう!」
クククひどい言われようだなその通りだけど!
だがロボだからこそ、俺もこれの力を借りられる!
過去・現在・未来・そして太古の四つの太陽の力を集めた光を、今黄金の未来の顔から解き放つ――!
「太○の塔ビィィィィィィム!」
群れを薙ぎ払った黄金の光は最大温度六千度!
そして熱量以上に正真正銘本物の太陽の光であるそれは、闇の魔物であるトロール達を一瞬のうちに石化させた。
「いやあ、意外な副収入になったねえ」
座長が上機嫌でジャラジャラ言わせてるのはモンスターたちが落とした魔力結晶の袋。
この世界のモンスターは基本魔力で生成される存在で、倒すと核であるこれを落とす。
どこの町の冒険者の店でもそれなりの値段で買い取ってくれ、これがダンジョンに潜ったりモンスター討伐をしたりする冒険者たちの飯の種なのである。
ダンジョンなんかにもこれがあって、ダンジョンの魔力結晶であるダンジョンコアを手に入れるとそのダンジョンの主になれるとか。
まあその前にダンジョンコアに主として認めて貰わなきゃならないらしいが。
「油断するな。もうすぐじゃぞ」
「わーってるさ」
たしなめるペトロワ師匠に素直に頷いて、座長が袋を懐にしまう。
正面を向いたその視線の先に、古色蒼然たる石の城があった。
ジャングルを中程まで進んだところで既に見えていた城。
近世の華麗な宮殿のような城ではなく、本当に無骨な中世の城だ。
遠目から見てもツタとコケに覆われ、か細い月の光に照らされて不気味な存在感を放っている。
「・・・」
「・・・」
いつの間にか、みんな無言になっていた。
トロールが出て来た後はモンスターたちも途絶え、真っ暗闇の森の中を黙々と歩き続ける。
城に到着してもそれは同じだった。
降りた跳ね橋、開いた城門。
互いに顔を見交わして頷き、前に進む。
城の大広間にたどり着くまで、俺達は誰とも、あるいは何にも遭遇しなかった。
「ようこそ、諸君。我が無能なるしもべの案内は十分だったかね。
私としては招待状を送ったつもりはなかったのだが、そう言う事になってしまった」
大広間。
奥まった玉座に座るのはがっしりした貴族風の中年男・・・あれは、アルテに顔を潰されて霧になったやつか?
その前に、貧相なローブ姿の男が剣を持って立っている。師匠たちに話を持ちかけてきた術師、アードップとか言う奴だろう。
「・・・玉座の奴、幻影じゃな」
え、マジ!?
距離が遠いとは言え、本物にしか見えないんですけど・・・
「まあ私も忙しい。申し訳ないがもてなしは君らを招待したアードップに任せるので、楽しんでくれたまえ。きっと驚いてくれるものと思うよ。
そちらのお嬢さんたちは少々惜しいが・・・まあ生きていたならまた会おう」
「おい、待て!」
思わず叫ぶが、俺が言い終わる前に男の姿は消えていた。
それと共に、アードップが剣を持ち上げる。
「!」
「・・・え?」
俺達も一斉に武器を構えるが、おかしな事に気付く。
アードップの顔が引きつっている。涙すら流していた。
「た・・・助けて・・・」
そのままアードップは震える手で剣を自分の首筋に当てる。
恐怖の表情を浮かべているが、その動きによどみはない。
「魅了されたか・・・!」
「見るな!」
ガイガーさんがリタの目を塞いだ瞬間、アードップは自分の首を剣でかき切った。
吹き出す血。
それが玉座の後ろの女神らしき像にべっとりと付く。
血まみれになった女神像はかすかに震え、次の瞬間床下に沈んで消えた。後には大きな穴。
「え? どういうこと?」
アルテが戸惑ったように言った瞬間、衝撃が来た。
床が縦に揺れ、たたらを踏む。
「おい、外を見ろ!」
「!」
ジャングルの中ほど。夜でもわかるほどの勢いで白い水蒸気が吹き出している。
ペトロワ師匠が顔色を変えた。
「地脈が・・・あやつ、死火山を噴火させおった!」